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第3話 魔物マート夜勤と、忘れられないダンス

ハンバーガー屋最終日の夜、俺は次のバイト先である魔物マートに向かいながら、ダンス部のことを思い出していた。

特にあの奴のことが頭から離れなかった。

マナーが悪くて、いつも俺が注意していた。

「適当でいいじゃん」って軽く言う態度が、どうしても許せなくて何度も叱っていた。

店に入ると、翼を生やしたガーゴイルの店長代理が待っていた。

「よう、新人。まずはこの店の仕組みを説明するぞ。

ここは魔力連動自動生成システムを採用している。レジで注文を確定させた瞬間、バックヤードの大型魔法陣が反応して商品を瞬時に生成する。入力が正確で速いほど安定するが、注文変更が多すぎると魔法陣が不安定になるから気をつけろ。特に夜は面倒な客が多いぞ」

「了解です」

(適当、か……。俺が一番嫌いな言葉だ)

夜勤開始から2時間後。

レジに大柄な魔物がドンッと乱暴に肘をついた。

「おい、酒とつまみ適当に10個出せよ。早くしろ」

その一言で俺のスイッチが入った。

「かしこまりました!」

そこから熱い攻防が始まった。

魔物「待て、酒は全部違う銘柄にしろ。つまみは辛いの多めに! いや、もっと辛いの! あ、でも一つは甘いやつな!」

俺「了解いたしました! 【神速話術カウンター】発動!

当店では『適当』という言葉は禁句です。完全オーダーメイドでお届けします!」

魔物「ははっ、完全オーダーメイド? 口だけは達者だな、紫色ピエロ。

お前と似たような真面目ぶったウザい面を、俺はよく知ってるぜ。

だから余計にムカつくんだよ」

俺「イラつかせて申し訳ありません! しかし私は手を抜いた接客が一番嫌いなんです!

全力で応えるのが私のこだわりですから!」

魔物「こだわり? はははっ、笑わせんなよ。レジ打ちの分際で『こだわり』とか吐かせんな。

お前みたいな『俺は真面目です』って顔してるやつが、一番タチが悪いんだよ。

察しろよ、察し! それとも頭が固すぎて機能してねえのか?」

俺「察しろ? 面白いことを言いますね。

お客様が明確に指示できないから私が困っているんですよ?

それとも、頭が固いのは注文をコロコロ変えるお客様の方ではありませんか?」

魔物「ははっ、大口叩くなよ真面目野郎!

結局レジ打ってるだけだろ?」

俺「レジ打ってるだけ? 失礼な。

私は接客神の加護を受けた、この店で一番速く正確な店員です。

お客様がどれだけ邪魔をしようと、私は絶対に妥協しません!」

魔物「妥協しねえ? はははっ、最高にウザくて最高にムカつく笑顔だな!

お前みたいなやつをイジメてると、本当に腹が減るほど楽しいぜ。

もっとイラつかせてやろうか?」

俺「どうぞ存分に!

ですが私がイラつく前に、お客様が満足して帰れるようにしてあげますよ?

それが本物の接客というものですから!」

ジジジッ! ガガガッ!

魔法陣が激しく赤く明滅する中、二人は笑いと鋭い毒をぶつけ合いながら、息もつかせぬ激しい攻防を続けていた。

魔物は最後にニヤリと笑って商品を受け取り、店を出て行った。

店長代理が近づいてきて、呆れたように言った。

「おい新人……今のは最近噂のタチの悪い客だ。

注文をめちゃくちゃ変えて店員をからかい、魔法陣を不安定にさせて楽しむ性格の悪い魔物らしい。

お前、よく耐えたな。また来るぞ、気をつけろよ」

俺はレジの前で小さく拳を握った。

(……また来る、か)

胸の奥に残る、あの妙な違和感。

(本当に……ただ似てるだけ、だよな?)

第3話 完

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