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第2話 ハンバーガー屋最終日! エリアボス降臨

ハンバーガー屋で働き始めて3日目。

今日がこの店での最終日だと、朝に店長から告げられた。

「電斗、今日あいつが来るかもしれない……この店のエリアボスだ」

午後2時半。

店内の空気が急に冷たく、重くなった。

黒いコートを翻した長身の魔族、ヴェルザードが入ってきた。

魔王軍准将クラスの実力者で、この界隈最凶の常連客。

彼はレジの前に立つと、低い声で言った。

「ハンバーガー20個。トリプルチーズ・ベーコン増し・辛さMAX。

ポテト大盛り×20、魔力回復ドリンクは20種類すべて違う味で。時間は5分だ。」

この店は特殊だった。

レジで注文を確定させた瞬間に、厨房奥の大型魔法陣が反応して商品を自動生成する仕組みになっている。

新人だった頃はシンプルな注文ばかりであまり実感していなかったが、複雑な注文になるほど魔法陣の負荷が高くなり、生成が不安定になる。

つまり、レジ打ちの正確さと速度、そして無茶な注文変更への対応力が全てを決める。

俺は深く息を吸い、【鉄壁営業スマイル】を全開にした。

「かしこまりました!! 【神速話術カウンター】発動!」

そこから白熱の話術バトルが始まった。

ヴェルザードは容赦なく魔力をレジに流し込み、生成途中で注文を何度も変更してきた。

辛さの変更、具材の入れ替え、全部元に戻せ、ソース追加……と連発する。

3分40秒経過。

俺の指が一瞬乱れ、レジの確定操作が遅れた。厨房の魔法陣が赤く明滅し、低い警報音が鳴り始めた。

(やばい……! このままじゃ生成失敗する……!)

汗が額を伝い、心臓が激しく鳴る。高校の大事な発表でミスしそうになった時より緊張していた。

ヴェルザードが冷ややかに笑った。

「どうした? 魔法陣が悲鳴を上げているぞ?」

その言葉が俺の負けず嫌いを爆発させた。

「……っ! 【負けず嫌い接客モード・全解放】!!

【微笑み論破スマイル】発動!!

私は接客神の加護を受けた負けず嫌いです!

この程度の変更で挫けるわけにはいきません!!!」

残り40秒。

「【営業スマイル・フルバースト】!!!」

紫色の魔力が爆発し、指が限界を超えた速度で最後の確定操作を叩き込んだ。

ピコン!!

澄んだ音と共に、魔法陣が眩く輝き、20個の極上バーガーが完璧に生成された。

ヴェルザードは一つを手に取り、一口食べてからゆっくりと俺を見下ろした。

「……及第点だ。新人。

この店では久しぶりに楽しめたよ。

だが魔界は広い。これから出会う客は、私など比べ物にならない連中ばかりだ。

期待しているぞ。」

彼は薄く笑みを浮かべ、代金を置くと静かに店を出て行った。

店内が静かになった。

俺はレジに手をついたまま、しばらく息を整えていた。

「……期待してる、か」

店長が近づいてきて、からかうように言った。

「どうした? 顔が引きつってるぞ」

「引きつってねえですよ。ただ……ちょっと笑えてきただけです」

俺は紫色の角を軽く掻きながら、苦笑した。

「俺、普通の高校生だったのにね。

突然ここに飛ばされて、与えられたスキルが接客だけって……最初は本気でふざけんなって思ったよ」

少し間を置いて、俺はニヤッと笑った。

「でもまあ、いいか。

文句言ってる暇があるなら、強くなった方が早いよな。

接客スキルだけだって?

だったら俺はその接客スキルだけで、やってやろうと思う。

負けるのだけは嫌いなんで」

その瞬間、体が淡く金色に光った。

【接客神の加護が微かに強化されました】

【新タイトル「魔界接客の挑戦者」を獲得しました】

店長が豪快に笑った。

「ははっ、いい顔だ。

明日から次の店に異動だ。覚悟しとけよ」

俺は軽く拳を握って答えた。

「……ああ。来いよ。

まだ本気出してないからな」

第2話 完

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