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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第93話 お前やっぱりあぶない奴だな


 リュウジィ、タツヨ、ジャスパー、オリオン、アミリの五人を乗せた四台の荷馬車は、目的地の商業都市アメヨコに到着した。

 

馬車が城門をくぐると、周囲の空気が一変した。

 中世ヨーロッパ風の石造りの街並みでありながら、通りには無数の露店が隙間なく並び、衣服や日用品、出所不明の魔導具や食材が山積みにされている。

 

行き交う人々の熱気で街道は埋め尽くされていた。

 

店先からは「安いよ!」「今だけだよ!」と威勢のいい売り子の声が何重にも重なって響き、客たちは足を止めて値切り交渉を行っている。

 四台の荷馬車はその喧騒をかき分けるようにして、活気にあふれた大通りをゆっくりと進んでいった。

 一行を乗せた馬車は、大通り沿いにある目的の商会の建物へと到着した。


荷馬車が止まると、商会の中から出てきた商会の従業員たちが、荷台から荷物を手際よく地上へと降ろし始めた。


 作業を見届けたオリオンとアミリの二人は、街道で入手したワイルドオーグの魔石を買い取ってくれる魔石屋に行くと告げ、その場から離れていった。

 

すべての荷物を降ろし終えると、従業員たちは続いて別の荷物を馬車へと積み込み始めた。


新しく積まれた荷物の総量は、ここへ来る前に積んでいた量と比べると半分ほどであった。

 それでも重量のバランスを考慮し、従業員たちは荷物を偏らせることなく、やはり四台の荷馬車にそれぞれ分けて積み込んでいった。

 荷積みの様子を見ていたジャスパーが、次の出発までまだ時間があると告げた。

 

それを聞いたリュウジィは、タツヨと一緒に商会の周りの街並みをぶらつくことにした。


二人は行き交う人々を避けながら、露店が連なる通りを進んだ。

 軒先には、現世の魚屋のように並べられた正体不明の海洋魔獣の干物や、怪しげに発光する型落ちの魔導具が、売り子の怒鳴り声とともに並べられている。

 

二人の前を、背丈の倍はある巨大な木箱を担いだ労働者たちが、荒い息を吐きながら足早に横切っていった。

 

リュウジィはその労働者たちの姿に視線を止めた。


「なあタツヨ、あの背が低くてやたらガタイがいい奴ら、何だ?」


タツヨが横切っていく労働者の背中を見ながら答える。


「あれはドワーフだよ」


「ドワーフか。初めて見たな」

「力仕事じゃかなり重宝されてるらしいぜ。手先も器用だから、この世界の業物や防具は、大抵あいつらが作ってるんだよ」


「へえ、そうなのか。キングス・フォーンとアズマリアの武器屋は普通の人間だったけどな」


「(歩みを止めずに首を横に振る)あそこらは人間の街だからな。でも人間の職人で腕のいい奴は、大抵ドワーフに習った経験があるらしいぜ。本当にいいやつは、やっぱりドワーフの技術が元になってるんだよ」

 

リュウジィとタツヨは、それらの光景に視線を向けながら歩いた。

 飛び交う大声の中を歩きながら、リュウジィが声を出す。

「活気あるな、現世の上野のアメ横に似てるよな」


隣を歩くタツヨが露店に視線を向けながら返す。


「上野のアメ横って言えばさ、インチキバッグ屋知ってるか?」


「インチキバッグ屋?」


「本日最終日です。これがチャンスです。本日最後の大売り出しですって言いながら、また次の日になると、本日最終日ですってバッグ売ってるんだよ」


「(歩きながらタツヨの方を見る)それわかるよ!空港でもさ、東京ばな奈がたまに限定のお菓子売るんだよ。それが人気があると同じように、本日最後ですって三日ぐらい売ってるんだよ」


二人は顔を見合わせて笑った。


しばらく活気のある街をぶらついた後、二人が商会の前に戻ってくると、用事を終えたオリオンとアミリがすでにそこで待っていた。

二人の姿を認めたオリオンが、タツヨに向けて声を弾ませる。


「タツヨさん、ワイルドオーグの魔石四十万ゴルド(日本円で四百万円)で売れましたよ」


オリオンはそう言いながら、手元にある金貨の束から、ちょうど半分にあたる二十万ゴルドをタツヨへと手渡した。


「ありがとう。それじゃこれ」


タツヨは受け取ったばかりの二十万ゴルドの中から、すぐに十万ゴルドを取り分けると、それをオリオンへと差し出して返した。

手元に再び戻ってきた金貨を見て、オリオンが目を丸くする。


「えっ? これは一体?」


「(金貨を差し出したまま相手の目を見る)これで三人で一人十万ゴルドになるだろ? 取っときなよ」


「しかしそれは……」


恐縮して受け取りを躊躇するオリオンに対し、横からリュウジィが言葉をかける。


「いいから、いいから貰っちゃいなよ」


リュウジィの言葉に背中を押され、ジャスパー、オリオン、アミリの三人は、その場できちんと姿勢を正して頭を下げた。


「ありがとうございます」


さらにタツヨは、自分たちの移動を支えてくれた四人の御者たちの方へと歩み寄った。


「この十万ゴルド、四人で分けなよ」


タツヨはそう言って、御者の一人に十万ゴルドをしっかりと手渡した。

思いがけない臨時収入を受け取った御者の四人も、感激した様子で深々と頭を下げた。

用事をすべて済ませた一行は、再び四台の荷馬車を走らせて商業都市アメヨコを後にした。


馬車は城門を出て、アメヨコへとやって来た道をそのまま戻り始める。

復路の馬車は乗る配置が変わっていた。


先頭の馬車にはジャスパー、二台目の馬車にはオリオン、三台目の馬車にはアミリがそれぞれ乗り込んだ。

最後尾となる四台目の馬車に、タツヨとリュウジィが二人で並んで乗り込んだ。


揺れる馬車の上で、リュウジィが周囲ののどかな景色を眺めながら口を開く。


「結局大した事もなく、のどかな馬車旅行って感じだな」


タツヨも隣で揺られながら、同意するように深く頷いた。


「本当だよな。ちょっとだけデカい強くもないモンスターが出て来ただけだしな。やっぱりダンジョンとか行かないと面白くないかもな」


「ダンジョンか、ダンジョンだと最低でも一週間ぐらいだろ?」


リュウジィは少し考え、現状の店の状況を思い出して言葉を続ける。


「店が新店舗になって安定しないと無理だな」


そこまで言うと、リュウジィは隣に座るタツヨの顔を見て話しかけた。


「タツヨって無茶苦茶好戦的だよな。ふろむ・えーでいきなり暴れるしさ」


タツヨは当然だといった様子で即座に返した。


「(両方の拳を軽く握って前方を見る)当たり前だろ?現世じゃプロボクサーだから、当然試合以外で人の事殴れないしさ、日本チャンピオン程度の稼ぎじゃ生活出来ないから、バイトしてると、ボクサーって強いの?なんて茶化されてよ。この世界は喧嘩して、相手を殺しても罰はないから、使わなきゃ損だぜ!」


「お前はやっぱり危ない奴だな」


リュウジィはそう言って、苦笑した。


タツヨは正面を見据えたまま言葉を続ける。


「(視線を右側の景色へ移す)お前だってこの世界に来て、形意拳使いまくりで、嬉しいだろ?俺達は現世じゃ大して役にたたない、鞘から抜かない刀一所懸命研いでたようなもんだからな」


それを聞いたリュウジィが応じる。


「(前方を見たまま頷く)それは当たり、やたら滅多ら弱い物イジメ的な事をするつもりはないけど、大好きな武術を遠慮なく使えるのは快感だよな」


タツヨは今度はリュウジィの方に顔を向けた。


「リュウジィ……お前やっぱりあぶな奴だな、気をつけよう」


二人は顔を見合わせて爆笑した。

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