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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第91話 アトラスの豪腕


 翌朝、指定された待ち合わせ場所に向かうと、荷物を積んだ大型の荷馬車が四台停車していた。

 荷馬車の後ろでは、ジャスパー、オリオン、アミリの三人が待機している。


すでに到着していたタツヨは、馬車の横で軽くシャドーボクシングをしていた。


「おはよう! 今日は宜しくお願いします」


リュウジィが声をかけると、ジャスパーが向き直って頭を下げた。


「こちらこそ宜しくお願いします。昨日、本当にアイテムボックスありがとうございました。大事に使います」


「あれ、あんなサイズなのに、物を出し入れする時に、ガバッと開くんだね。驚いたよ俺」


リュウジィがそう言うと、シャドーボクシングを終えたタツヨが歩み寄ってきた。


「おはよう! 調子はどうよ」


「ワクワクだよ」


リュウジィが答えると、タツヨが言った。


「(拳を握り直して)本当だよな、山賊とかゴブリンとかトロールとか100匹ぐらい襲ってこないかなぁ」


その会話を聞いて、ジャスパー、オリオン、アミリの三人が吹き出した。

 

オリオンが苦笑しながら言う。


「そんな来たら、皆死んじゃいますよ」


「大丈夫、大丈夫。俺が一人で撃退するから」


タツヨは平然と言い切った。

 

ジャスパーが各自に指示を出した。


「先頭はオリオンと俺で、二台目がタツヨさん、三台目がアミリ、四台目にリュウジィさんでお願いします。アミリ、サーチ魔法宜しくな」


「はいよ!」


アミリが返事をすると、リュウジィが尋ねた。


「サーチ魔法って何?」


「半径100メートル以内、荷馬車に近づいてくる物体がわかる魔法です」


「うそっ! やっぱり魔法って凄いね」


リュウジィが感嘆の声を上げると、アミリはうつむきながら答えた。


「私は支援魔法と回復魔法がメインで、攻撃魔法は風魔法をちょっと使える程度なんで、けして凄くは……」


「そんな事ないよ、なあタツヨ凄いよな」


リュウジィが同意を求めると、タツヨも頷いた。


「おお! 凄いよアミリちゃん、ゴブリン100匹サーチね」

 

ジャスパーが困った顔で応じた。


「勘弁して下さい」


全員がそれぞれの順番に分かれて荷馬車に乗り込み、車列が出発した。

石畳が続く王都の街並みが後方へ遠ざかり、建物の密度が減っていく。街道は土の道へと変わり、周囲の風景は草原と点在する木々のみになった。


リュウジィが荷馬車に寝転んで、雲ひとつない青空を見ていると、気が付くと寝ていた。

どれぐらい進んだのだろうか、アミリの声で目が覚めた。


「(荷馬車の上から身を乗り出して)右斜め前方から大型の何かが来ます。皆さん気をつけて下さい!」


リュウジィは急いで起きて、立ち上がり右斜め前方を見た。

それは直ぐに目視できた。

体長は五から六メートル。全身がやや毛に覆われており、下の奥歯から上に向かって牙が生えている。


「あれ? 何か顔がキングオーグに似てるな。でもあんな毛に覆われてないしな」


四台の荷馬車が止まり、ジャスパーが大声を上げた。


「(御者台から立ち上がり)ワイルドオーグだ! 皆気をつけて」


まだワイルドオーグまで距離はあるが、オリオンは既に弓を構えていた。


ジャスパーが顔をしかめて呟く。


「全く何でこんなところにいるんだ。ついてないな」


「そんなに遭遇しないモンスターなのか?」


タツヨが尋ねると、ジャスパーは視線を前方へ向けたまま答えた。


「魔族の国の国境近くとかなら目撃例はありますが、こんな場所には、俺も遭遇するのは二回目です」


「強いのか?」


「武装した冒険者20人がかりでもけっこうヤバいです」


それを聞いたタツヨがニヤリと笑った。


「(笑みを浮かべたまま)なら俺がちょっと倒して来るよ」


ジャスパーが慌てて声を張り上げた。

「(両手を振り回して)ちょっ! ちょっとヤバいです。リュウジィさん、タツヨさんを止めて下さいよ」


「(荷馬車に寄りかかり)大丈夫、大丈夫、見てたらわかるよ」


リュウジィは平然と答えながら、心の中で思った。


(アズマリアのオーガに比べたら大した事ないな)


一人で歩き出すタツヨへ向けて、アミリが叫んだ。


「タツヨさん、強化魔法かけますから!」


「(歩みを止めずに)いらないよ。皆横になって見てなよ」


タツヨは歩みながら、両の前腕を体の前でクロスさせた。


「頼むぜ! アトラス!」


その瞬間、タツヨの両手首に着けられていた青いブレスレットが変形し、メタリックブルーのガントレットへと変わった。ガントレットはタツヨの前腕と拳を完全に覆った。

ワイルドオーグが唸り声を上げながら、タツヨに向かって突進して来る。


「(ガントレットを正面に構えて)バリバリ撃ちまくって、ボコボコに凹ましてやるよ、この豚イエティ!」


巨体が前腕を伸ばし、タツヨを捕らえにかかる。

タツヨはその動きを難無く躱すと、踏み込んで左のパンチを放ち、相手の膝を正面から撃ち抜いた。

グシャ!!!


「グキャアアアア!」


怪物は悲鳴を上げ、その場に激しく体勢を崩した。

タツヨはすかさず跳躍し、体勢を崩したオーグの下顎へ向けてジャンピングアッパーを叩き込んだ。


バキィッッッン!!!


衝撃で巨体が上空へと弾かれる。

タツヨはそのまま空中で身体をひねり、全体の体重とパワーのすべてを左の拳に集中させた。そのまま相手の顔面を正面から撃ち抜いた。


ゴォォォッン!!!


打撃を受けた顔面から肉片が飛び散る。

巨体は数メートル後方へと弾き飛ばされ、地面に激しく崩れ落ちた。

完全に動かなくなった巨体を見て、ジャスパー、オリオン、アミリの三人は目を見開いたままその場に硬直した。


ジャスパーは口を開けたまま声が出ず、オリオンは構えていた弓をゆっくりと下げた。アミリは両手で口を覆って絶句している。


タツヨはガントレットをはめた拳を見つめ、不満そうに息を吐いた。


「(拳を顔の前に掲げて)なんだよ! もっと殴りたかったのに。死んじゃったよ」

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