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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第9話 独占供給の「儲け話」


第9話


ドナドさんと共に、俺は王都の北端にある巨大な精肉市場へ向かった。


案内されたのは、魔石で冷やされた石造りの貯蔵庫だった。


その中に鎮座していたのは、ドナドさんが俺の試合で稼いだ配当金で手に入れた『キングオーグの肉』。


「リュウジィ、お前が勝ってくれたおかげだ。まずは自分でも食ってみろ。味を知らないと始まらないからな」


ドナドさんは手際よく肉を切り分け、俺に差し出した。


「……これ、そんなに美味いんですか? もっと仕入れられないんですか?」


案内役の肉屋が、呆れたように首を振る。


「リュウジィさん、冗談はよしてください。キングオーグは体長五メートル。仕留めるには腕利きの狩人が二十人は必要です。死人が出るのも珍しくない。数パーセントの幸運で、ようやく手に入る肉なんですよ」


(五メートル? 『北斗の拳』の世界かよ。二十人がかりで死人が出るってのは、さすがにヤバいね……)


ドナドさんの店に戻ると、さっそく肉を焼くことになった。


この世界の五大珍味。


どれほどのものなのか、まずは自分で味わってみる。


この世界では、寄生虫を恐れてか、肉は芯までしっかり火を通すのが普通らしい。


だが、俺が一番うまいと思う焼き方は――ミディアムだ。


現世でキャバクラを経営していた頃、キャビアの横流しが原因で帝国ホテルをクビになった、訳ありのチーフを雇っていたことがある。


そのチーフから、家で美味しいステーキを焼く方法を教えてもらった。


今日は、それを試してみる。


表面をカリッと焼き上げる。


脂が爆ぜ、最高に美味そうな匂いが厨房いっぱいに広がった。


焼き上がった肉を無造作に切り、口へ運ぶ。


(……うまい)


溢れ出した肉汁を口いっぱいに含み、目を閉じてじっくりと味わう。


一口噛めば、脂が口いっぱいに広がった。


野性的で、それでいて甘い脂。


……これは。


(……叙々苑かよッ!)


昔、店が儲かっていた頃、毎晩のようにアフターで通っていた高級焼肉店。


遊安通りから南へ行ったビルの九階。


景気よく注文して、好きなだけ食いまくっていた、あの高級焼肉の味。


それを、さらに数倍うまくして、脳みそが痺れるほど強烈にしたような味だった。


(……ああ、醤油をかけて、わさびをたっぷり乗せて食えたら最高なんだけどな。異世界じゃ無理な話か)


だが、肉を味わっているうちに、別の考えが浮かんできた。


(……これだけ美味い肉。もし俺が安定して獲ってこれたら?)


とんでもない儲けになる。


食べて感動したからこそ、新しい「稼ぎ方」が見えてきた。


もし俺が、この肉を自力で調達できたらどうなる?


ドナドさんの店で出せばいい。


いや、俺が自分で店を出したら――。


他の店とは比較にならないほど客が集まるはずだ。


そうすれば、この街一番の行列店だって夢じゃない。


闘技場で命を削るより、よっぽど賢くて儲かる仕事になりそうだ。


それから数日後。


「……悪いな、リュウジィ。お前、連勝しすぎて賭けが成立しないんだ。もうカードが組めない。実質……出禁だ」


闘技場の支配人は、申し訳なさそうに頭を掻いた。


(……あーあ。仕方ないか)


だが、今の俺には目標ができていた。


あの世界五大珍味――キングオーグの肉。


あの肉を、俺自身の手で安定して供給できたら。


それから二週間後。


「ドナドさん、悪いですが、しばらく店を空けますよ。……ちょっと、肉を探しに行ってきます」


厨房の掃除を終え、俺は手早く身支度を整えた。


驚くドナドさんを背に、立ち上がる。


死人が出るような場所に、恩人を連れて行くわけにはいかない。


(……うまくいけば――いや、必ずだ)


(ドナドさんの店に、キングオーグの肉を安く卸してやる)


その約束だけが、今の俺を突き動かしていた。



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