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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第80話:アウトローズ・クラウンからライズアップ②




バッドとシドは、ヴァルカリア兄弟を探してスラムの路地を歩き続ける。


かつての仲間である双子のゼノンとギノン。二人は腕も立ち、バッドが信頼を寄せていた男たちだ。

リュウジィの店へ誘うため、二人は記憶を頼りに複数の廃屋を回るが、兄弟の姿は見つからない。

泥の跳ねた石畳を歩き回り、一通りの心当たりを潰したところで、シドが足を止めた。


「バッド、あそこはどうかな」


「あそこって……じいさんとばあさ

んの食堂か?」


「そう。亡くなった二人の育ての親が昔経営してた、あの食堂の廃屋。あそこなら、今のあいつらも身を寄せてるかもしれない」


バッドはシドのひらめきに頷き、進む方向を変えた。

建物の隙間を縫うようにして食堂の廃屋へ辿り着く。

看板は外れ、窓には板が打ち付けられている。


バッドは立て付けの悪い木の扉に手をかけ、一気に引き開けた。

埃が舞う薄暗い店内に、外の光が差し込む。

奥のテーブル席に、並んで座っている二人の男の姿があった。


ゼノン・ヴァルカリアと、ギノン・ヴァルカリア。


二人は地肌が透けるほど短く髪を刈り込んでおり、その頭の形が露わになっている。

かつての仲間である双子の兄弟が、案の定そこにいた。

バッドが中へ踏み込み、片手を軽く上げた。


「二人とも、久しぶりだな」


椅子に深く座っていたゼノンが、顔を上げずに低い声を出した。


「久しぶりだぁ? 今さら何の用でここに来たんだよ」


ギノンは傍らに立てかけたサーベルの調子を確かめていた。


「なんだよお前、その髪型(ギノンは鼻で笑い、バッドの全身をなめるように見た)。えらく綺麗に整えちゃってさ。すっかり飼い犬にでもなったのか?」


シドが一歩前に出て、宥めるように手を広げた。


「二人とも、まずは話だけでも。聞いてくれよ」


ギノンの視線がシドへ固定される。


「お前もだよ、シド。バッドの様子を見てくるなんて言って出て行ったきり、そのまま戻ってこなかったじゃねえか」


バッドは二人を真っ直ぐに見据え、本題を切り出した。


「二人とも、ここを出て(バッドは二人を真っ直ぐに見据えた)俺と一緒に働かないか? 俺にはお前たちの力が必要なんだ」


ゼノンがようやく顔を上げ、冷めた目でバッドを射抜いた。


「お前さ、自分は誰の下にも付かないなんて偉そうなこと言ってたくせに、今は王都の商人の下で働いてるらしいじゃねえか。すっかり牙を抜かれたか?」


バッドは口角を上げ、自嘲気味に笑った。


「バキバキに抜かれた。手も足も出なかった。負けたんだから、勝った奴の下に付く。それが(自嘲の笑みが深まる)俺たちの基本だろ? 何か問題あるのかよ」


ゼノンが呆れたように身を乗り出した。


「はあ? 商人に負けたのかよ。嘘だろ、冗談言えよ」


ギノンが隣のシドを指差した。


「シド、お前はどうなんだ。真面目に働くなんてくだらねえって、いつも言ってただろうが」


シドは隣のバッドをちらりと見てから、頭をかいた。


「……最初は俺も、こいつに誘われて働き始めた時は気に入らなかったさ。嫌になったらさっさと辞めてやるつもりだった。実際、立ちっぱなしだし動きっぱなしで足は痛えしな。だけどさ、飯が美味いんだよ。働いてクタクタになって、腹を空かせて食う飯がな(シドは少し視線を外して頭をかいた)」


「それに、人に『ありがとう』って言われるのは(シドは再び二人を真っ直ぐに見据えた)、最高に気持ちいいもんだぜ」


バッドはニヤケ顔を崩さないまま、二人を挑発するように言葉を継いだ。


「ここに来る途中でさ、ここを国にするとか言ってる馬鹿の話を聞いたけど。どうせお前ら二人とも、そいつらに逆らってここに隠れてんだろ? ちょうどいいじゃねえか。面倒くせえし、俺たちと一緒に来いよ」


ゼノンとギノンがバッドとシドを注視した。

沈黙の中、ゼノンが視線を落とし、机を指先で弾く。


「……お前らの上の奴ってのは、本当に信頼できるのかよ。このスラムで騙し合いなんて嫌というほど見てきた。都合よく使われて、最後はゴミみたいに切り捨てられる。そんなのはもう御免だぜ」


ゼノンが机を強く叩いた。


「俺たちはな(ゼノンは机を強く叩いた)」


バッドとシドが同時に腰の得物に手をかけた。

鋭い金属音と共に、二人の手元で鈍い光が跳ねる。

バッドが抜いたばかりの剣の切っ先を上げ、ゼノンへ向けた。


「都合よく切り捨てるような人間が、雇ったばかりの俺たちにこんな特注の剣をくれると思うか?」


剣先がゼノンの顔前で止まる。


「これ、オリファルコンだぜ(バッドは剣をゼノンへ向けた)。俺の兄貴は、自分だけ良い思いをしようってケチな人間じゃねえんだよ」


ゼノンとギノンが椅子から身を乗り出し、食い入るように刀身を見つめた。


「オリファルコンだと……? 嘘だろ、これ本物かよ」


その時、静寂を破って店の扉が激しく蹴破られた。


金具が引きちぎれ、扉が地面に転がる。

逆光の中に、二人の屈強な男の影が浮かび上がった。

踏み込んできた男が店内に視線を走らせ、ゼノンとギノンを見て鼻で笑った。


「見つけたぞ。ずっと隠れてるつもりだったのか? シャルナ様がお待ちだ。さっさと外に出ろよ」


男の視線が、その傍らに立つバッドとシド、そして二人が構えるオリファルコンの剣へと移る。

男は怪訝そうに目を細めた。


「……なんだ、こいつらは。ちょうど良かった(男は腰の武器を鳴らし、バッドの剣を凝視した)、手間が省けた。その剣、グリズの首を跳ねたのもお前ら二人だな?」



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