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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第79話:アウトローズ・クラウンからライズアップ①


 「ギャングスター」の定休日。朝。

 バッドとシドは、馬車でキングスフォーンの北側にあるスラム街「アウトローズ・クラウン」へ向かった。

 

高台に住む貴族や富裕層とは真逆の、どん底に位置する場所。

 リュウジィの店から馬車で1時間半。湿った石材の冷気が混じる、かつての根城へ到着した。

 バッドは馬車を降り、腰に差した新しいオリファルコンの剣の重みを確かめる。

 

かつてバッドはこの地で、若いハングレを束ねるグループの一つを率いていた。当時は数あるグループの中でも、最も危険と言われた集団だ。

 二人は石畳の路地を進み、かつての仲間たちが集まる石造りの建物へと向かう。

 シドが周囲の景色を眺めながら口を開いた。

「ここを出てからまだ二ヶ月しか経ってないのに、なんだか懐かしいね」

 その言葉に、バッドが隣で肩をすくめた。

「なんだよ、戻りたくなったのか?」

「まさか。こんな狭い場所で、自分たちが一番だなんて言ってたままじゃ、一生這い上がれなかったよ。それに、こんな凄い剣も持てなかった」

 シドは腰に差したオリファルコン製のファルシオンを指した。

「……兄貴に感謝しねえとな」

 バッドが短く応じた。

 歩きながら、シドがふと尋ねた。

「ところでリュウジィさんてそんな強いの?」

 バッドは即座に答えた。

「手も足も出なかったよ。特に今は兄貴が着てる独特の服あるだろ? あれはファフニールって言う1500人の命奪った伝説のアーティファクトでさ。あれの主に兄貴は選ばれた訳だから、今は人間の強さ超えてると思う」

「凄えなそれ。いつかリュウジィさんが戦ってる所見てみたいな」

 シドは感心したように頷いた。

 

路地裏を曲がったところで、かつて揉めて、バッドにやっつけられ頭を下げた数人の男たちと鉢合わせた。

 男たちが足を止め、バッドを睨む。

「久しぶりじゃねえかよ、バッド。それにシドもいんのか? 何しに来たんだよ」

 

バッドが鼻で笑った。

「随分言うようになったな。許して下さい、なんて言ってたのによ」

 

シドも男たちの様子を見て口を開いた。

「全くだよ。別に喧嘩しに来たわけじゃねえから、怯えるなよ」


「あっ? ここは短期間でちょっと変わったんだよ。調子に乗ってるとお前等2人、死ぬぞ」

 

その言葉に、バッドが冷ややかな視に向けた。


「誰に言ってるの? もしかして俺か?」

 

その時、後ろから声がした。

「何してだお前ら? 揉めてんのか?」

 

バッドとシドが振り返ると、デブの幅広い剣持った大男が1人と他2人がいた。

「グリズさん、こいつら昔この辺にいた奴らで、生意気なんですよ」

 

シドがそれを見て嘲笑った。

「おーおー、知り合いが来たら、強気だな」

 

バッドが吐き捨てるように言った。

「お前、うちの焼き肉の調理場から逃げてきたのか? 早く戻れよ、ゴーホーム!」

 

シドがゲラゲラ笑う。

「売り物になんねえよ、油乗りすぎだって。お前のかーちゃんに怒られるよ」

 

バッドとシドは大笑いした。


「お前等2人、ちょっといじめるだけにしておこうと思ったけど、やめだ」

 そう言って、幅広の剣を振り上げたその瞬間。

 

ビュオッ!

 

シドが踏み込んで、ファルシオンでグリズの腹を横薙ぎに切った。

 グリズは腹から臓器が飛び出し、悲鳴を上げながらその場に跪いた。

 

シドが声を弾ませた。

「バッド、この剣凄えよ。サクッと斬れたよ。これがオリファルコン製の剣か」


「ずるいなお前、俺まだ斬った事ないのに」

 バッドはそう言いながら、腰から剣を抜くと、跪いているグリズの首を跳ねた。

 周りにいた奴等は悲鳴を上げる。

「本当だぁ! すげえ斬れるね! 抵抗がなかったぞ」

 バッドが感心した声を出すと、シドが呆れたように言った。

「おいおい、無茶苦茶すんなよ。いきなり首はないだろ? 皆盛り下がってるじゃんか」

 

バッドは血飛沫を浴びて恐怖に震える男の一人の胸元を掴み、

顔を近づけた。


「王都でこんな事したら、騎士団に囲まれて大騒ぎだけど、ここは関係ねえもんな。ところで短期間で変わったって、何が変わったんだよ」

 

男は震えながら、隣に立つシドを見た。シドが退屈そうに剣を弄ぶ。

「面倒くせえから、こっちから斬って行く?」

 その一言で、男は悲鳴のような声を上げた。


「わかった! 喋るよ!」

 

男は早口で捲し立てた。

「ちょうどシドと入れ替わりで入って来た人が、あっと言う間にここの人間の八割をまとめたんだよ。ここをスラムじゃなくて国にするってよ。お前等より夢が観れる人だよ」

「国だと? 馬鹿なのお前らは?」

 バッドは呆れたように男を突き放した。

「本気で思ってんのか? まあいいや、その国を作るとか言ってる妄想の激しい人に言ってくれ」

 バッドは剣についた血を払い、鞘に収めた。


「俺とシドは夕方ぐらいまではここをウロウロしてるからよ」

 そう言うと、バッドとシドはその場を立ち去り、再び歩き始めた。


 隣を歩くシドが、前方を睨みながら言った。

「あいつら二人、多分揉めてるだろうな。国を作るとか言ってるアホと」

 

バッドも頷き、足早に路地を進んだ。

「早く見つけて説得しねえとな」

 二人は、従業員として誘う予定の仲間たちがいるはずの廃屋へ向かって、歩みを速めた。

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