第47話 予期せぬ覚醒
アーティファクト(Artifact)とは、古代文明や神々が作り出した強力な魔導具や宝具である。
地鳴りのような歓声が、厚い石壁を震わせて伝わってくる。
数万人の観客が放つ熱狂が、遠い雷鳴のようにリュウジィの腹の底を揺さぶっていた。
「……時間か」
短く呟き、立ち上がる。
ファフニールの感触を肌で確かめ、重い扉を開けて通路へ踏み出した。
一歩進むごとに、外の光と喧騒が強まっていく。通路の先に広がるのは、まばゆいばかりの巨大な円形闘技場だ。
足元の砂は、長年の戦いで踏み固められ、石畳のように硬い。
その硬質な地面の上で、タツヨ・ジョージは軽快にステップを踏んでいた。
両手にはめられたアトラスの双拳のガントレット――それもまた、この世に数少ないアーティファクトの一つ。鈍いメタリックブルーの輝きを放ちながら空を切るシャドーは、速すぎて完全には捉えきれない。
リュウジィがその間合いの直前で足を止める。
客席の一角では、フロドとプリカがこちらを見つめていた。
タツヨはステップを止めないまま、目を細めて笑った。
「そう急ぐなよ。急いでやったって、良いことなんてねえだろ?」
鼻で短く息を吐きながら、タツヨがさらに言葉を続ける。
「ゆっくり行こうぜ。たっぷり楽しませてくれよ、小僧」
リュウジィは、タツヨを見つめたまま、静かに息を吐いた。
「……悪いけど、あんまり長引かせるつもりはないんだ」
二人の間に、審判を務める屈強な男が割って入った。
男が左右の顔ぶれを確認し、右腕を高く突き上げる。
闘技場を埋め尽くす怒号のような歓声が、一瞬だけ、肺の中の空気を吸い込むような静寂へと変わった。
「――始めッ!」
審判の腕が振り下ろされる。
それと同時に、リュウジィは半身に構えた。
手の高さは、みぞおちのあたり。
両手を中心線に寄せ、掌は大きなボールを掴んでいるかのように、柔らかく開いている。
パッ、と乾いた音が闘技場に響く。
予備動作のない、鋭いジャブ。
リュウジィはとっさ首をひねって衝撃を逃がすが、ガントレットの先端当たる。
バチッ!
(速い。完全にかわすのは無理か)
内功による身体強化と、ファフニールの守り。その二つがあるからこそ、リュウジィは致命的なダメージは受けない。
だけどこのまま撃たれすぎるとヤバい
タツヨは止まらない。
メタリックブルーの拳が、ジャブの連弾となってリュウジィを襲う。
パッ、パパッ、と断続的な衝撃がリュウジィを叩く。
完全に避けることは最初から捨てている。
首の傾きと腕の捌きで直撃を逸らし、わずかにズラす。
しかし完全には防げない。打撃を受けるたびに頬が裂け、火花が散るような衝撃が走るが、リュウジィの構えに乱れはない。
「……ほう。この速度で叩いても、軸がブレねえか」
その瞬間。
リュウジィは一気に距離を詰めたが
すでにその場所にタツヨはいない。
「どうした?形意拳は打突系の最高峰じゃないのか」
タツヨが軽快なステップを踏みながら言う。
「何故形意拳を知ってるんだ?」
「わかるだろ?俺も転生者だよリュウジィ。同じ転生者同士仲良くしたい所だが、そうも行かないな」
(やはりボクサー、ならスピードで敵わないな。だったら)
タツヨが相変わらず閃光のようなジャブを打って来る
1発、2発、3発
4発目のジャブの手を掴だ!
タツヨがその手を引き戻すタイミングと自分の踏み込みで距離を詰めた。
(よし!いけ!)
しかしその瞬間
バーンッ!
狙い済ました、タツヨの右フックを食らった。
身体ごと吹き飛ばされた。
反射的にすぐ立ち上がったが
(ファフニールと内功の身体強化がなかったら頭ごと吹き飛ばされてた。でもやべえ効いてる。)
「俺が左だけだと思ってたのか?」
ダメージで震える身体を鼓舞するよに呼吸を整え、内功のパワーを上げる。
(こいつが俺を舐めてる内に何とかしないと。なら)
践歩でジグザグに動きながら、距離を詰める。
ジャブが飛んで来る
被弾しても構わずラッセル車のように突っ込まむ。
タツヨの右が飛んで来る
その右に劈拳
バチィィィィッ!
お互いの身体が弾かれる
ズザザザザザザザッ!
「そうこなくっちゃな。行くぜ!リュウジィ」
タツヨが距離を詰めてくる
そのタイミングに合わせて、
鑽拳
螺旋回転(旋転)しながら、下から上へ突き上げる。
交わされた
そして左でボディを叩かれた。
ドウッ!うぐっ
「終わりだ、リュウジィ」
「うおぉぉぉ!」
タツヨの飛んで来る右に構わず
身体を半回転して後手を頬に添えてガードし、頭の横から肩にかけてを、一直線にしてその頭と肩でぶち当てる――捨て身の体当たり
靠
ドッカーン!
タツヨの身体を吹き飛ばした。
(決まったか)
タツヨがおもむろに立ち上がる
普通ならここで距離を詰めて一気に決めに行くが、ボディのダメージがまだ抜けてないから動けない。
「流石に効いたぜ、なら俺も本気を出すよ。はぁぁぁぁぁぁぁっ」
その瞬間タツヨのガントレットから無数のトゲが出て来て形が変わった。
それと同時に俺の頭の中で心臓의音が大音量で鼓動する。
ドクン、ドクン、ドクン
(なんだよ。これ?)
(お前成長が遅いよ。やっと第二段階になれるな)
「ファフニール?お前なのか?」
その瞬間俺の身体のまわりを金色の光が絡み付くように渦巻く
身体中がピリピリ痛い
そして漆黒のファフニールが深紅のチャイナ服に変化した。




