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第39話 三英傑




 空は雲一つなく晴れ渡っていた。

 俺は無言で広場を後にした。

 背後ではまだ、タツヨ・ジョージの勝利に沸く観衆の叫びが響いている。

 

 隣を歩くフロドは、あの一撃の余韻に当てられたのか、どこか落ち着かない様子だ。

「……フロド。三英傑ってのは、あいつを含めて三人なんだな」

「えっ? ああ、そうだよ。タツヨ・ジョージはその一人だ。あいつらは三英傑って呼ばれててさ……」

 

 投影機モニターに映し出されたボクシングを思い返す。

 

「……あとの二人は、どんな奴らだ」

「一人はムサシ・ミヤモト。二本の刀を使う剣士だよ。もう一人はカミラ・ヴァン・クロム。グレイブを使う女の人。どっちもタツヨと同じか、それ以上にヤバい奴らなんだぜ」


「その三人が最強なのか?」


「ううん、違うよ! 三ヶ月に一回出てくる『オーガ』ってのが最強なんだ。タツヨ・ジョージだって一度戦って死にかけたらしいぜ」


「オーガ、か。三英傑より上の奴が、まだ奥に控えてるってわけか」


「三英傑が束になっても勝てねえって噂だぜ」

 

王宮へ入るためにこの闘技場を選んだが、思わぬ強者が揃っているらしい。

だが、そいつらとの試合を重ねていけば、自ずと王宮への道は開けるはずだ。


三英傑、それからオーガ。

やることは変わらない。順番に勝っていくだけだ。それが、一番早く中枢へ近づく方法なのだから。

 

俺たちは階段を降り、アズマリアの下層へと向かった。

明日からの動きを詰め直さなければならない。


――そして、三日後。


俺は再び、控え室にいた。

鉄格子の向こうから降ってくる歓声は、三日前よりも一段と熱を帯びている。

控え室の奥にいる一人の男が気になった。


髪を後ろで結び、無精髭を生やし、傍らには二本の剣が立てかけてある。

男は抑揚のない表情で、一点を見つめていた。

隣でフロドが、小声で囁く。


「あれだよ、兄さん。三英傑の一人、ムサシ・ミヤモトだよ」


(なるほど、他の奴らとは纏う空気が違う。しかし、あの剣は……)


「フロド、ちゃんと賭けてきたか」

「勿論だよ、兄さん。……でも、本当にいいんだな? 今日の相手は『三英傑』のすぐ下、門番って呼ばれてる奴なんだぜ」

 

扉が開き、あの口髭の男が顔を出した。


「……時間だ、リュウジィ。行け。上の連中がお前の価値を見定めているぞ」

俺は何も答えず、光の差す通路へと足を踏み出した。

(とにかく勝って、王宮へ行くための足がかりを作る。それだけだ)


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