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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第22話 王宮の影と、動き出す牙



ハクさんが支配人に、おやっさんの深夜食堂も開店した。


俺の経営する『ギャングスター』も、ようやくこの街の夜の空気の中に、なんとか自分たちの居場所を確保できそうな気がしてきたところだった。

 

今度こそは、あの時のようにはしない。現世のような失敗は繰り返さない。そう強く心に誓い、日々の営業に励んでいた矢先に、馴染みの客であるカシムさんが、不穏な知らせを持って店に現れた。

 

店は既に賑わい始めており、店内は活気に満ちている。だが、フロアの喧騒から少しだけ離れた場所にあるボックス席に、カシムさんはいつになく真剣な面持ちで深く腰掛けていた。


「……リュウジィ君。近々、王宮から呼び出しがあるぞ」


「カシムさん? 何で私が呼ばれるんですか?」

 

俺はサイドテーブルに、いつもの酒を置いた。


カシムさんは魔術士、ランクB。普段は古びた羊皮紙や出土品に囲まれて暮らす変わり者だ。魔術という強大な力を武器として振るうことを良しとせず、その研鑽のすべてを古代文明や遺跡の解析という学術的な探求に捧げている。


王宮直属の考古学者という肩書きを持ち、常に穏やかな知性を湛えた表情が印象的な男だった。


普段は歴史や遺跡の話ばかりしているが、王宮の裏事情にも通じている。その彼が、今はひどく険しい表情を浮かべていた。


「……ちょっと小耳に挟んだもんだからさ。若くして成功した君も、君のお店も、ちょっと目立ちすぎた。王は君が国に忠誠を誓える人間か、今の内に見ておこうと思ってるらしい。……くれぐれも失礼のないようにな。」


(……なんだそれ。めどくさいな。商人の俺に何の用があるんだろ?税金を沢山納めろとか?まあ適当に愛想よくして、やり過ごすしかないか)


「……教えていただき、ありがとうございます、カシムさん」

 

俺は最高の酒を一杯サービスしたが、カシムさんはそれを一気に煽ると、逃げるように店を後にした。



――同じ頃、王宮の深部。


「おい、リブル」


重厚な空気の流れる玉座に座る王が、目の前に控える男に声をかけた。


「はっ」

 

跪いたのは、調査兵団長リブル・レナード。スキル剣士ランクA、通称「人斬りリブル」。


「ちょっと頼まれ事をしてくれんか。王都の北にある『ギャングスター』という店の主人を、ここに連れてきてほしいのじゃ。……アグニ村の騎士団をたった一人で、無力化したというその腕前、わしも直に見てみたいものだ」


王がさらりと口にしたその言葉に、リブルの背筋に冷たいものが走った。


(……っ! じじい、知ってたのか!? アグニ村の件は、俺が部下から極秘で小耳に挟んだばかりのネタだぞ。……ちっ、相変わらず抜かりがねえ。この慎重さと耳の早さが、この国を長年守ってきたコツってわけか。食えねえジジイだぜ)


「……御意。相当に若いと聞いていますが、陛下のお耳に届いているのであれば話は早いですな。その『小僧』、我が国に忠誠を誓える男か見定めて参ります」


リブルが承知したその瞬間。

パチンッ!

 

背後で乾いた指鳴らしの音が響いた。


「ただいま、王様!」


紫のロングヘアーをなびかせ、魔術師特有のマントを羽織った女が、影から音もなく現れた。魔術士ランクS。この国最強の魔術士、ローザ・カイリだ。


「その話、面白そうだから私も行っていいかな? ちゃんと仕事してきたよ? 王様の暗殺部隊とその家族も、まとめてバーベキューみたいに焼いてきたんだから。ジュウウウッて。」


「ご褒美! 私もキングオーグ食べたい!」

 

子供のように無邪気にねだるその目は、先ほどまで「家族ごと焼いてきた」と言った言葉を裏付けるような、底知れない狂気を孕んでいた。


「しかたないのう、わかった。明日、二人で行け」


「はっ」

「はーい!」


こうして、俺のささやかな平穏に暗雲が立ち込めてきた。

 

王宮から放たれた二つの巨大な


『厄介事』。


本当の意味での「招かれざる客」が俺の店にやってくるのは、明日のことだ。

 

……まあ、普通にしてれば何事もないだろ?




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