表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/59

第22話 王宮の影と、動き出す牙



(モノローグ)

 ハクさんが支配人に、おやっさんの店も再始動。

 俺の『ギャングスター』も、ようやくこの街の夜に、なんとか居場所を確保できそうな気がしてきたところだった。

 

今度こそは、地道に、確実に。

 そう思っていた矢先、馴染みの客であるカシムさんが、不穏な知らせを持って店に現れた。

 

店は既に賑わい始めていたが、フロアの喧騒けんそうから少し離れたボックス席に、カシムさんはいつになく真剣な面持ちで深く腰掛けていた。


「……リュウジィ君。近々、王宮から呼び出しがあるぞ」


「カシムさん? 何で私が呼ばれるんですか?」

 

俺はサイドテーブルに、いつもの酒を置いた。

 カシムさんは魔術士まじゅつしランクB。この人は変わり者で、魔術を戦闘で使いたくないと、魔術と考古学の研究をしている王宮直属の学者先生だ。普段は歴史や遺跡の話ばかりしているが、王宮の裏事情にも通じている。その彼が、今はひどく険しい表情をしていた。


「……嫌な噂を聞いてね。君の店が目立ちすぎた。王は君が国に忠誠を誓える人間か、あるいは芽のうちに摘んでおこうとしているらしい。……ここには君が期待しているような公平なルールなんてないんだ。力を持った者がすべてを吸い上げる……それが王宮のやり方だ。呼び出しを断れば、それだけで目を付けられる。……悪いことは言わない、くれぐれも失礼のないようにな。」


(……うわぁ、最悪だ。結局、どこへ行っても最後はこれかよ。

 向こうで店を潰した時も、最初はこんな感じの、些細な横槍から始まったんだ。……だが、あの時の俺と今の俺は違う。

 失敗したままで終わるつもりはない。今度こそ、最後まで自分の居場所を守り通してみせる。……さて、どう動くべきか)


「……教えていただき、ありがとうございます、カシムさん」

 

俺は最高の酒を一杯サービスしたが、カシムさんはそれを一気に煽ると、逃げるように店を後にした。



――同じ頃、王宮の深部。

「おい、リブル」

 玉座に座る王が、目の前の男に声をかけた。

「はっ」

 

跪いたのは、調査兵団長リブル・レナード。スキル剣士ランクA、通称「人斬りリブル」。


「ちょっと頼まれ事をしてくれんか。王都の北にある『ギャングスター』という店の主人を、ここに連れてきてほしいのじゃ。……アグニ村の騎士団をたった一人で、しかも奇妙な術で無力化したというその腕前、わしも直に見てみたいものだ」

 王がさらりと口にしたその言葉に、リブルの背筋に冷たいものが走った。


(……っ! じじい、知ってたのか!? アグニ村の件は、俺が部下から極秘で小耳に挟んだばかりのネタだぞ。……ちっ、相変わらず抜かりがねえ。この慎重さと耳の早さが、この国を長年守ってきたコツってわけか。食えねえジジイだぜ)


「……御意。相当に若いと聞いていますが、陛下のお耳に届いているのであれば話は早いですな。その『小僧』、我が国に忠誠を誓える男か見定めて参ります」

 リブルが承知したその瞬間。


パチンッ!

 

背後で乾いた指鳴らしの音が響いた。

「ただいま、王様!」

 紫のロングヘアーをなびかせ、魔術師まどうし特有のマントを羽織った女が影から現れた。魔術士 ランクS。この国最強の魔術士、ローザ・カイリだ。


「その話、面白そうだから私も行っていいかな? ちゃんと仕事してきたよ? 王様の暗殺部隊とその家族も、まとめてバーベキューみたいに焼いてきたんだから。ジュウウウッて。


ご褒美! 私もキングオーグ食べたい!」

 

子供のようにねだるその目は、先ほどまで「家族ごと焼いてきた」と言った言葉を裏付けるような、底知れない狂気を孕んでいた。


「わかった。明日、二人で行け」

「はっ」

「はーい!」


(モノローグ)

 こうして、俺のささやかな平穏に暗雲が立ち込めてきた。

 

王宮から放たれた二つの巨大な『厄介事』。

 本当の意味での「招かれざる客」が俺の店にやってくるのは、明日のことだ。

 ……マジで、勘弁してほしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ