↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/214

203話 沸き立つ血潮




「――貴様ら、ここからが地獄だと知れ……!」


クラウスの咆哮が響きわたる。


その背後では、一本の尾が鎌首をもたげたまま、二人を狙っていた。無数の棘が並ぶ鉄の尾先が、ゆっくりと揺れる。


それだけで、周囲の空気が張り詰めていくようだった。


「――来い……!」


リュウジィが構えを解かず、静かに告げる。身体の奥には、先ほどの戦いで蓄積した疲労が残っていた。


だが、目の前のクラウスから視線を逸らすことはない。隣では、タツヨが拳を握り直していた。


金属化した腕が、わずかに軋む。


「――今度こそ、ぶっ潰してやる……!」


タツヨが低く呟いた。


クラウスが地を蹴った。巨躯が一気に迫り、漆黒の爪が交差するように振るわれる。


同時に、背後の尾が唸りを上げ、低い軌道で薙ぎ払われた。


「オブシディアン・ラッシュ!」


爪が幾重にも重なる軌道を描き、畳みかけるように襲いかかる。その動きに合わせるように、尾が石畳すれすれを走った。


「――くっ……!」


リュウジィは内功盤根の円の歩法で、迫りくる爪の軌道から身体を外す。漆黒の爪が、頬のすぐ横を通り抜けた。


だが、避けた先には尾が迫っていた。低く薙がれた尾が足元を払う。


「――っ!」


リュウジィは咄嗟に跳び上がった。その足元を、棘に覆われた尾先が唸りを上げて通過していく。


着地した瞬間、今度は爪の連撃が襲いかかった。


リュウジィは両腕を交差させ、正面から受け流す。


ガガガガガガッ!!


漆黒の爪がファフニールの表面を幾度も叩いた。チャイナ服の形をした意思ある鎧が、衝撃を受けて軋む。


斬撃そのものは通らない。だが、爪が打ち込まれるたび、硬い衝撃が腕の奥へ突き抜けていく。


「――こいつ、速さが桁違いだ……!」


リュウジィは歯を食いしばった。


腕に重い痺れが走る。


その隙を狙うように、クラウスの尾が再び迫った。リュウジィが横へ飛び退く。


その横を尾が通り抜け、石畳を砕いた。


ドガァンッ!!


砕けた石の破片が飛び散る。


「――なら、俺が止めるッ!」


タツヨが一気に踏み込んだ。金属化した拳が、クラウスの顔面へ迫る。


だが、クラウスは身体を捻って拳を躱した。同時に、尾が横から振り抜かれる。


タツヨは腕を盾にして受け止めた。


ガキィンッ!!


「――ぐっ……!」


衝撃で身体が押し戻される。タツヨは足を踏ん張り、なんとかその場に留まった。


「――くそっ……!」


クラウスは間髪入れずに爪を振るう。タツヨが身を引いた直後、その爪が目の前を通過した。


そこへリュウジィが踏み込む。


「――タツヨ、右だ!」


タツヨは反応する。二人の間をすり抜けるように、クラウスの尾が薙ぎ払われた。


リュウジィが低く身を沈め、タツヨは跳び上がる。


尾が二人の間を通り過ぎた瞬間、リュウジィがクラウスへ踏み込んだ。


だが、クラウスの爪が迎え撃つ。


ガッ!!


ファフニールの腕を爪が打ち抜く。


「――ぐっ……!」


衝撃でリュウジィの身体がわずかに傾ぐ。そのまま追撃の爪が迫った。


リュウジィは身体を捻り、紙一重で避ける。だが、避けた先へ尾が回り込んできた。


「――っ!」


咄嗟に後方へ跳ぶ。


尾先が目の前を通過し、石畳を激しく叩き砕いた。


ドガァンッ!!


リュウジィは着地と同時に体勢を整える。呼吸が荒くなっていた。


クラウスの攻撃は、一瞬たりとも途切れない。爪と尾を別々に使うのではない。


片方で逃げ道を塞ぎ、もう片方で確実に仕留めにくる。


「――舐めるなよ、この程度で調子に乗るな、人間風情がッ!」


クラウスの声に、明らかな余裕が滲んでいた。


リュウジィは拳を握り直す。このままでは、こちらの体力だけが削られていく。


「――タツヨ!」


リュウジィが短く叫んだ。


タツヨが視線だけを向ける。言葉を交わす必要はなかった。


二人は同時に動いた。


リュウジィが正面から踏み込み、クラウスの注意を引く。


「――来いッ!」


クラウスが爪を振り下ろした。リュウジィはその軌道を外側へ流し、さらに一歩踏み込む。


その瞬間、クラウスの尾が背後から迫った。


リュウジィは身体を沈める。尾が頭上を通過した。


「――今だッ!」


リュウジィが地を蹴った。


ニーズヘッグの指輪に宿る竜の力が、拳へと収束していく。


ファフニールのチャイナ服の表面にも、金色の光が鮮烈に脈打つ。


赤黒い炎を纏った拳を突き出した。


「崩拳ッ!!」


ドォォォン!!


拳がクラウスの鳩尾へ叩き込まれた。内側へ突き抜けるような衝撃が、巨躯を揺らす。


「――ぐおおおおおッ!?」


クラウスの身体が大きくのけ反った。


その隙を逃さず、タツヨが側面から飛び込む。


「――もらった!」


金属化した拳に青い光が集まる。


「ファントムストレート!!」


ズガンッ!!


拳がクラウスの側頭部を打ち抜いた。クラウスの頭部が大きく弾かれ、巨躯がよろめく。


「――ぬ、があぁぁ……!」


それでも倒れない。


クラウスはふらつきながらも足を踏みしめ、二人を睨みつけた。


その瞬間、リュウジィが再び踏み込む。


クラウスが爪を振るう。リュウジィはその腕を外側へ流し、懐へ潜り込んだ。


拳を引き絞る。


「鑽拳ッ!!」


バキィィィッ!!


拳がクラウスの顎を捉えた。頭部が大きく跳ね上がる。


巨躯が大きく後方へ下がり、数メートル先でようやく足を止めた。


その隙に、タツヨが最後の一撃を叩き込むべく拳を振りかぶった。


「――決めるぞ!」


その声を聞いた瞬間、牙を覗かせるように、口の端がわずかに歪んだ。


意識のすべてが、目の前のクラウスへ向いていた。


その瞬間、背後で空気が唸った。


弧を描き、棘に覆われた鉄の尾がタツヨへ迫る。


「しまった!」


振り向く暇も、腕を上げる暇もなかった。


ガキィィィィン!!


「ぐうっ!」


無防備な背中に、鉄の尾が容赦なく叩き込まれる。


衝撃が全身を突き抜け、タツヨの体が大きく宙を舞った。


石畳に叩きつけられ、何度も跳ねながら転がっていく。


タツヨは瓦礫の近くまで吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れ込んだ。


「――タツヨ!」


リュウジィが叫ぶ。


だが、タツヨは動かない。


完全に意識を失っていた。


「――待って!」


ミライが瓦礫の陰から飛び出そうとする。


「――行くな!」


ムサシが肩を掴んで止めた。


「あそこに、俺たちが割り込む隙間はない。邪魔になるだけだ。」


カミラもグレイブを握り締めたまま、倒れたタツヨを見つめている。


三人の前では、すでに戦況が変わっていた。


リュウジィとクラウス。


残されたのは、その二人だけだった。


「――てめぇぇぇッ!!」


タツヨが倒れた光景を目にした瞬間、リュウジィの中で何かが弾けた。


ファフニールの表面を走る金色の筋が、激しく脈打つ。


ニーズヘッグの指輪が、これまでにない熱を帯びた。


竜の力が一気に流れ込み、内功の巡りが加速していく。


血が沸き立つ。


全身を駆け巡る力が、さらに強くなる。


真紅と漆黒のタイガーストライプが、炎を纏いながら鮮烈に浮かび上がった。


クラウスがゆっくりと立ち上がる。


口元には、薄い笑みが浮かんでいた。


鉄の尾が、再び鎌首をもたげる。


無数の棘が月明かりを受け、鋭く輝いた。


リュウジィは拳を握り締めた。


身体の奥で沸き立つ血潮が、さらなる力となって全身を駆け巡る。


「――上等だ……!」


その瞳に、燃え上がるような闘志が宿った。


二人の間に、張り詰めた静寂が落ちる。


次の瞬間――


リュウジィとクラウス、最後の激突が始まろうとしていた。







お読みいただき、本当ありがとうございます。もし気に入っていただけましたら、作品のブックマークや、下の星(☆☆☆☆☆)で応援をお願いします!次の更新の大きなエネルギーになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。