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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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200話 重なる力、届く拳




二人は再び構えを取り直し、じりじりと間合いを詰めていく。


互いの呼吸が重なった、その刹那――クラウスの姿が視界から掻き消えた。


「――速いっ……!」


次の瞬間、視界の端から漆黒の爪がねじ込まれる。


リュウジィは咄嗟に両腕を交差させ、迫る爪を受け止めた。


ガキィンッ!!


ファフニールの生地が激しく軋み、凄まじい衝撃が腕を突き抜ける。


何とか裂け目は免れた。


ファフニールの防御効果で、身体が貫かれる事はない。だが、受け止めきれなかった衝撃が骨の髄まで響き、両腕が一瞬で痺れ上がった。


「――ぐっ……!」


足元が大きく揺らぐ。


体勢を立て直す間すら与えず、クラウスが一気に踏み込んできた。


「オブシディアン・ラッシュ!!」


黒い魔力が宿った、左右の爪が、目にも留まらぬ速さで連続して叩き込まれる。


ガキンッ!


一撃目を受け止める。


だが、衝撃が腕を押し下げるよりも早く、二撃目が襲いかかった。


ガキィンッ!!


「――ぐっ……!」


リュウジィはとっさに腕を構え直し、二撃目を受ける。


しかし、クラウスの爪は止まらない。


右、左。


受け止めるたびに腕が弾かれ、足が半歩ずつ後退していく。


ドゴッ! ゴッ! ドゴンッ!!


最後の一撃が、ガードの隙間を正確に突き抜けた。


漆黒の爪が、リュウジィの鳩尾へ叩き込まれる。


「――ぐはっ!!」


肺から空気が一気に押し出された。


内臓を直接握り潰されたような激痛が腹部を駆け抜け、リュウジィの身体が大きく吹き飛ぶ。


「――リュウジィ!」


タツヨが叫ぶ。


その声と同時に、タツヨは自ら前へ躍り出た。


「――こっちだ、化け物!」


地を蹴り、クラウスの正面へと鋭く割り込む。


「ファントムウィップ!!」


青い光をまとった拳が、クラウスの懐へ一気に突き込まれた。


ドッ! ドッ! ドッ!


短く鋭いジャブが、凄まじい速度で連続する。


一撃、二撃、三撃。


拳は大きく振り回されない。


最短距離を走る青い光が、クラウスの身体へ次々と突き込まれ、残像だけが幾重にも重なっていく。


タツヨは足を止めず、クラウスの爪が届く間合いを細かく変えながら、直線的なジャブの連打を叩き込み続けた。


クラウスが爪を振るい、迎撃に転じる。


だが、タツヨはわずかに身体を滑らせ、迫る爪を紙一重でかわした。


爪が空を切る。


その直後、タツヨの拳が再びクラウスの懐へ突き込まれた。


「――ッ!」


青い光をまとった連打が、クラウスの巨体をわずかに揺らす。


しかし、次の瞬間――。


クラウスが鋭く反撃に転じた。


爪が横薙ぎに振るわれる。


タツヨは咄嗟に右腕を掲げ、襲い来る爪を前腕で真正面から受け止めた。


ガキンッ!!


衝撃が腕を突き抜け、骨まで激しく痺れる。


「――くっ、重すぎる……!」


腕が押し下げられる。


それでもタツヨは足を止めなかった。


両足を踏みしめ、全身で爪の圧を受け止める。


「――ぐっ……!」


クラウスの爪が、さらに押し込まれる。


タツヨの足元の石畳が、ミシリと軋んだ。


それでもタツヨは、その場で必死に踏みとどまった。


その緊迫した間隙――。


リュウジィは壁に手をつき、荒い息を必死に整えていた。


「――はぁ……はぁ……」


腹部に走る痛みを押し殺し、顔を上げる。


(まだだ……終わってたまるか……)


目をぎゅっと閉じ、大きく息を吸い込んだ。


血管を巡る内功の熱い流れへと、意識を深く沈めていく。


身体の奥から、熱が湧き上がった。


内功の循環が、傷ついた身体の隅々へと駆け巡る。


その流れに呼応するように、ファフニールの特殊な繊維が熱を帯びた。


漆黒の生地に走る真紅と黒のタイガーストライプが、筋肉の動きに合わせて鮮烈に脈打つ。


(合わせろ……お前の力と、俺の全力を……!)


内功の循環が加速する。


ファフニールの身体強化が、それに重なる。


さらに、両手の人差し指に嵌められたニーズヘッグの指輪から、竜の力が身体の奥へと流れ込んだ。


これまで別々に流れていた力が、深く一つに重なっていく。


身体強化が重なり、発勁の力が一気に膨れ上がった。


真紅と漆黒のタイガーストライプが、より濃く、より鮮烈に脈打つ。


「――まだ、いけるっ!」


リュウジィがカッと目を見開く。


壁を強く蹴り、身体を跳ね起こした。


「――待たせたな、タツヨ!」


「遅えんだよ!」


タツヨがクラウスの爪を激しく弾き返しながら叫ぶ。


ガキィンッ!!


クラウスがタツヨへの追撃を放とうとした、その瞬間――。


リュウジィが背後から凄まじい勢いで間合いを詰めた。


「なに……ッ!」


クラウスが振り向きざまに爪を薙ごうとする。


だが、リュウジィの拳の方がわずかに速かった。


リュウジィの拳が、クラウスの脇腹へと突き込まれる。


激しい炎をまとった拳が、巨体の懐へ深く食い込んだ。


その瞬間、内功とファフニールの強化によって凝縮された力が、拳の一点へ集約される。


さらにニーズヘッグの指輪がもたらす純正の発勁が、拳の表面で止まらず、クラウスの分厚い肉体の奥へと突き抜けた。


「崩拳ッ!!」


ドォォォンッ!!


脇腹で炎が爆ぜた。


拳が肉を打ち抜いた衝撃が、クラウスの内部を激しく揺さぶる。


巨体の表面だけが揺れたのではない。


脇腹から入り込んだ破壊力が、腹部を貫き、背中側へまで突き抜ける。


クラウスの巨大な躯体が、大きく仰け反った。


「今だ、タツヨっ!」


「おうよっ!」


タツヨが即座に呼応する。


クラウスの側面へと踏み込み、隙だらけとなった身体へ渾身の拳を叩き込んだ。


「ファントムストレート!!」


パァッキイィィィッ!!


青い光をまとった拳が、クラウスの巨体を打ち抜く。


リュウジィの崩拳で崩れた体勢に、タツヨの拳が重なった。


二重の衝撃がクラウスを襲い、その巨体が大きくよろめきながら後退する。


「――ちぃっ……!」


クラウスが苛立たしげに舌打ちを漏らした。


踏みとどまろうとするが、足元が大きく揺らぐ。


それでも倒れず、クラウスは再び爪を構え直した。


「まだ逃がさねぇ!」


タツヨが地を強く蹴る。


再び間合いを詰めた。


クラウスの爪が凄まじい速度で振り上げられる。


狙いは、タツヨの顔面。


「――ぐっ……!」


タツヨはとっさに腕を掲げ、ガードする。


爪がメタリックブルーの前腕へ叩きつけられる。


ガキンッ!!


顔面への致命的な一撃は、何とか防ぎきった。


だが、凄まじい衝撃が腕全体を痺れ上がらせる。


「――くっ……!」


それでもタツヨは怯まなかった。


爪を受け止めた腕を押し返し、さらに一歩踏み込む。


「スーパーマンパンチ!!」


タツヨが空中へ跳躍した。


全身の力を乗せた拳が、クラウスの頑丈な顎へと突き上げられる。


ゴギィンッ!!


拳が顎を正確に捉えた。


クラウスの頭部が、凄まじい勢いで大きく仰け反る。


「今だ、リュウジィっ!」


「おうっ!」


リュウジィが地を強く蹴り飛ばした。


身体の奥で巡る内功を、拳の一点へと集める。


ファフニールの身体強化とニーズヘッグの竜の力が重なり、拳の周囲に激しい螺旋の炎が巻き起こった。


炎はただ燃え上がるのではない。


螺旋を描きながら拳へ収束し、突き上げる力そのものをさらに増幅させていく。


リュウジィは、その力を逃がさず、真っ直ぐに突き上げた。


「鑽拳ッ!!」


ドォンッ!!


螺旋を描く炎をまとった拳が、クラウスの脇腹をえぐるように深く突き刺さった。


拳が食い込んだ瞬間、螺旋状の衝撃が脇腹の内部へと侵入し、肉と筋肉を抉るように回転する。


外側を打ち抜くだけではない。


一点に凝縮された発勁が、クラウスの身体の奥へ深く食い込み、内部から巨体を揺さぶった。


「――ぐ、ぬぅっ……!」


クラウスの巨体がぐらりと傾いだ。


脇腹を押さえることもできず、身体が大きく揺れる。


そのまま片膝をつきかけた。


だが――。


クラウスは、倒れなかった。


「――まだだ……! 私は、こんなところで終わらん……!」


凄まじい咆哮が大広間に響き渡る。


次の瞬間、全身から漆黒の靄が再び激しく噴き上がった。


黒い靄が身体を包み込み、周囲の空気が一気に重くなる。


爪の刃が、先ほどよりもさらに鋭く、不気味に伸びた。


「――来るぞっ!」


リュウジィが叫ぶ。


その声と同時に、クラウスが床を強く蹴り抜いた。


石畳が砕け、巨体が一瞬で間合いを詰める。


疾風の如き猛スピード。


両の爪が同時に振るわれた。


「――っ!」


リュウジィとタツヨは咄嗟に左右へと跳び分かれた。


鋭利な爪が二人の間を通り抜ける。


ズシャァァッ!!


二人が直前までいた場所の石畳が、深くえぐり取られた。


砕けた石片が宙へ舞い、床に叩きつけられる。


「――このままじゃ、キリがねぇぞ!」


タツヨが息を弾ませながら叫んだ。


「いや……」


リュウジィが荒い息の合間に静かに呟く。


視線の先にいるクラウスの巨体には、数々の激しい負傷が刻まれていた。


脇腹には崩拳と鑽拳の痕跡。


顎にはタツヨの拳による衝撃の跡。


全身には、これまでの攻防で刻まれた傷が残っている。


「――確実に、削れてる……!」


リュウジィが拳を握り直した。


決して楽観できる状況ではない。


クラウスの爪は、先ほどよりも鋭くなっている。


だが、着実に追い込んでいる。


二人は再びしっかりと構えを取り直し、目の前のクラウスと鋭く向き合った。


クラウスもまた、漆黒の爪を構え直す。


大広間に、再び緊張が張り詰めた。


決着の時は、もうすぐ目の前だった。




お読みいただき、本当ありがとうございます。もし気に入っていただけましたら、作品のブックマークや、下の星(☆☆☆☆☆)で応援をお願いします!次の更新の大きなエネルギーになります!

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