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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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161話 未知なる強者



戦いの後始末をつけ、ローザが転移魔法を発動しようと指を動かしかけた、その時だった。


「――ハングリーィ・フィールド」


低く、地を這うような声が響いた。


次の瞬間、昼間だったはずの空が、まるで日食のように闇に呑まれていく。


太陽の光が消え、辺り一帯が不気味な薄暗さに包まれた。


その闇の中、瓦礫の上に一人の男が立っていた。サーベルタイガーを思わせる鋭い顔つき、牙血族特有の獣性を纏った男だった。


ただ立っているだけなのに、空気そのものが軋むような、重く粘つく威圧感がその場を支配する。


ガルダとは明らかに格が違う。


――リュウジィの肌がそう告げていた。息を吸うことすら躊躇われるほどの圧力が、四方から押し寄せてくる。


リュウジィでさえ、これほどの重圧を感じたのは初めてだった。


「あれ? ボス猫がいたの?」


ローザが軽い口調で言い放つと


同時に、両手を突き出した。


「フレア・ストーム!」


再び頭上に無数の火の玉が生まれ、轟音とともに男へと降り注ぐ。爆発の光が男の全身を包み込んだ。


だが――


「……効かない、わね」


爆炎が晴れると、サーベルタイガーの男はそこに、傷一つなく立っていた。


まるで何事もなかったかのように。焼け焦げた瓦礫の匂いの中、彼の纏う毛皮は一筋も焦げていない。


「ハングリー・フィールド」


男が口の端を歪めて笑う。


「この空間にいる限り、我ら牙血族の力は限界まで引き上げられる。……お前程度の魔法じゃ、掠り傷一つつかんよ」


タツヨが舌打ちし、間合いを詰めた。


「牙血族?なんだそりゃ?上等だよ!」


跳び込みざま、拳を放つ。


「スーパーマンパンチ!」


だが男は避けようともしなかった。


あえてその一撃を、正面から受け止める。


骨と骨がぶつかり合うような鈍い音が響いたにもかかわらず、男の体は微動だにしない。


「――ほう」


微かに感心したような声が漏れた次の瞬間、男の拳がタツヨを襲った。


とっさに両腕を十字に組んでガードしたが、まるで巨大な鉄塊に撥ね飛ばされたかのように衝撃を殺しきれず、タツヨの身体は勢いよく吹き飛んだ。


「タツヨ!」


リュウジィが叫んだその隙に、男の姿がローザの目の前に迫っていた。目で追うことすら難しい速度だった。


「!」


ローザが咄嗟に防御魔法を展開する。だが男の蹴りが、その光の壁を紙のように突き破り、ローザの身体を宙へと弾き飛ばした。


「――っ!」


男のすぐ背後にいたリュウジィが、内功とファフニールの力を乗せた掌を突き出す。


「劈拳!」


一撃は確かに命中したはずだった。手応えは確かにあった――だがそれだけだった。男はその手を絡め取ると、そのままリュウジィを持ち上げ、空高く跳び上がり、リュウジィの身体を地面へと叩きつけた。


「ぐ……!」


咄嗟に身体をひねり、受け身を取ることでどうにか衝撃を殺す。それでも、全身に鈍い痛みが走った。


体勢を立て直したローザが、風の刃を放つ。


「ウィンド・セイバー!」


無数の刃が男へと殺到する。


だが男は、まるで踊るような身のこなしで、その全てを紙一重で躱しきり、瞬く間にローザとの距離を詰めた。


手数でも速度でも、こちらが上回っているはずだった。それなのに――届かない。


「――よそ見してんなよ!」


割って入ったのはタツヨだった。地を蹴り、渾身の一撃を叩き込む。


「ファントム・ストレート!」


拳が男の顔面を捉えた。今度は僅かに、男の身体が後ろへよろめいた。


その隙をリュウジィが逃さなかった。側面から、鋭く踏み込む。


「崩拳!」


炸裂した拳の一撃が、男の身体を大きく吹き飛ばした。


――決まったか。


そう思った瞬間だった。


「……こんなものか」


男は、まるで何事もなかったかのように、平然と立ち上がった。


三人を見渡し、口元に嘲るような笑みを浮かべる。


全力を出し合った末の一撃すら、彼にとっては痛痒でもないという事実が、


三人の間に重くのしかかった。積み重ねてきた研鑽も連携も、この男の前ではまるで意味を成さない――そんな錯覚すら覚えるほどだった。


「その程度で、俺を仕留められると思ったのか」


タツヨの手首のガントレットが変化し、無数の鋭い棘が突き出す第二形態へと姿を変える。


そしてリュウジィの纏うファフニールの金色に流れる筋が、生き物のようにうねりながら、――漆黒から、真紅へと染まっていった。



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