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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第16話 狂犬の正装、兄貴の流儀




採用から三日。


俺はまず、バッドを床屋に放り込み、伸び放題でボサボサだった金髪をすっきりとミディアムショートに整えさせた。清潔感が出るだけで、顔つきの鋭さが際立つ。見違えるほど整った姿を見て、俺は小さく頷いた。


さらに服屋へ特注で作った制服。この世界にはないデザインの衣装だ。汗を吸いやすく伸縮性に優れた白のVネックTシャツ風インナーに、剣の抜き差しを一切邪魔しないよう仕立てた短丈の黒ジャケット。体に完璧にフィットするよう何度も採寸を繰り返させた。

 

同時に、約束通り、鋭い切れ味を誇るミスリル《銀輝石》の剣も用意してやった。


武器屋の親父がポンメル(剣の柄頭)に装飾を彫れると言うので、バッドのイメージである狼をあしらってもらった。細部までこだわり抜いた剣だ。


「……似合うじゃん。それがお前の、この店での『制服』ね」

 

整えてみれば、こいつはなかなかのいい男だ。中身は相変わらずだが、見た目は上々と言っていい。


(そのうちホストクラブでも始めれば稼げそうだな)


そんな考えがふとよぎったが、それはまだ先の話だ。今は目の前の準備に集中する。


「かっけぇぇぇ! 服も剣も最高だよ兄貴! 身体が軽すぎて、今ならキングオーグの首も一撃で飛ばせそうです!」


バッドはいつの間にか俺を「兄貴」と呼ぶようになっていた。雨風をしのげる宿舎を用意し、家族が困らないだけの生活費を渡し、必要な装備を全て揃えてやった。


そうやって働きやすい環境を徹底的に整えてやると、バッドは店に馴染み、俺のことを頼もしい兄貴分として慕うようになった。


俺は、一階の焼肉フロアをバッドの母親に任せることに決めた。


「……リュウジィさん、私のような者に、こんな大役を……」


「あなたはマーケットでずっと売り子をやってきたんでしょ。接客の基本ができてるなら、一階は任せられる。バッドの母親だし、変な奴を雇うよりよっぽど安心ですよ」


母親には、開店準備の宣伝として『キングオーグの贅沢弁当』を売らせた。値段を下げて毎日五十食だけの限定販売だ。

 

これが話題になって王都で爆発的な噂になった。希少な肉を限られた数だけ出せば、手に入らない客が、開店前の店に期待してくれる。毎日弁当を求めて、行列ができ、その美味さと安さに客は驚いた。


二階のキャバクラは、リナを「ママ」に据えた空間に仕上げる。


前世での俺の失敗は、欲張って店舗を広げすぎ、キャストの質が落ちたことだ。今回は違う。この一軒、この場所でしか体験できない空間を大切にし、質を徹底的に守り抜く。


そんな準備の最中、ふろむ・えーの残党らしきガキが、店にケチをつけに現れた。


「おい、ミスリルの剣をガキに持たせてるってのは、ここかよ。おっさん、少しは自分の立場を考えたらどうだ」


その瞬間だった。男が言い切るよりも速く、バッドが紙一重の間合いへ踏み込む。喉元に剣先を突きつけ、屈託のない満面の笑みで俺を振り返った。


「ねぇ、兄貴。……コイツ、今すぐ殺っちゃっていい?」


「……何やってんだよ。そんなのほっとけよ。開店前なんだから」


俺が呆れ気味に注意すると、バッドは「ちぇっ」と大きく舌打ちして剣を引いた。


指示があれば、ためらいなく何でもやる。この先、店をうまく営業していくには、こいつの溢れるエネルギーをいかにコントロールして店のために使うか、


それだけが課題だ。


「……よし。これでようやく一通りの形はついたな。さあ、いよいよ開店だ。ここからが本当の勝負だな」





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