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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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159話 駆逐の使者



王宮へと向かう馬車の中、窓の外を白く輝く大通りが流れていく。


石畳の両側にそびえる尖塔、金箔を施した装飾柱、噴水広場を彩る彫像――王都の中でも一際格式高いこの一帯を、馬車は迷いなく進んでいった。


正門に馬車が着くと、槍を構えた近衛兵の一人がこちらに気づき、僅かに表情を緩めた。何度か顔を合わせたことのある兵士だった。


「これは……リュウジィ殿。今日はどのようなご用件で」


「急ぎの用件があります。王への取り次ぎをお願いできますか」


リュウジィの声色から、ただ事ではないと察したのだろう。


近衛兵は表情を引き締め、頷いた。


「少々お待ちを」

しばしの間、正門の脇で待たされる。朝の光の中、噴水の水音だけが静かに響いていた。


やがて近衛兵が戻り、二人は王宮の中へと通された。


高い天井から吊るされたシャンデリア、磨き上げられた大理石の床、壁に並ぶ歴代国王の肖像画。


回廊を進むほどに、空気そのものが張り詰めていくような重みを感じる。


すれ違う文官たちが、リュウジィとタツヨの姿に一瞬目を留め、すぐに視線を逸らして足早に去っていく。


長い回廊の先、両開きの重厚な扉が見えてきた。


金の装飾が施されたその扉の前には、槍を持った兵士が二人、微動だにせず立っている。


案内の文官が小さく頷くと、兵士たちが無言で扉を開いた。


玉座の間は、外の回廊よりもさらに重厚な空気に包まれていた。


天井から差し込む光が、玉座までまっすぐ伸びる深紅の絨毯を照らしている。


左右の柱には歴代の紋章が刻まれ、無数の視線がこちらに集まっているかのような錯覚を覚える。


謁見の間の扉が開かれると、玉座には国王が座し、その傍らに紫の髪をなびかせた一人の女が佇んでいた。


この国最強の魔術士、ローザ・カイリだった。


「あら、リュウジィじゃない」


ローザの金色の瞳が、リュウジィの隣に立つタツヨにも一瞬向けられる。  


値踏みするような視線だったが、すぐに興味なさげに逸れた。


「久しぶりね。今日はどうしたの?」


「ローザ様。突然申し訳ございません」


リュウジィは膝をつき、頭を下げた。タツヨもそれに倣う。国王が静かに口を開いた。


「おお!久しぶりだな、リュウジィ。報告とは何だ」


「王都北のスラム、アウトローズ・クラウンが魔族にやられました。住人はほとんど殺されたものと思われます」


謁見の間の空気が一変した。国王の眉間に深い皺が刻まれる。


「……何だと。魔族が? 我が国とは不可侵の協定を結んでいるはずだ。それを違えて攻め入ってきたと申すのか」


「詳細は分かりませんが、生き残った者が『皆殺しにされた』と言い残していたそうです」


国王は顎に手を当て、しばし黙考する。玉座の間に沈黙が満ちた。何を根拠に、どこまで踏み込むべきか。国王の思案の重さが、その表情から伝わってくる。


やがて国王は、深く息を吐いた。


「不可侵の協定は、両国にとって利のあるものだったはずだ。それを反故にしてまで、なぜ動いた……」


独り言のようなその呟きに、誰も答える者はいなかった。玉座の間に、しばしの静寂が流れる。


傍らのローザが、待ちきれないとばかりに一歩前へ出た。


「陛下、私一人行けば十分でしょ? わざわざ軍を動かすまでもないわ」


事も無げに言い放つその声には、驕りではなく、純粋な実力への裏打ちがあった。国王は暫く沈黙した後、静かに、しかし重く命じた。


「よかろう。ローザ、行け。──一人も残さず、駆逐せよ」


「はいはい、承知しました」


ローザは軽く一礼すると、リュウジィとタツヨに視線を戻した。


「わざわざ出向いて、知らせてくれた事には礼を言う、しかしこれは国の問題だ。お前たちには関係ない」


国王がそう言い切ると、リュウジィは静かに頭を下げた。


「承知しました。それでは、我々はこれで」


タツヨと共に踵を返し、謁見の間を後にしようとするその背に、ローザの声がかかった。


「ちょっと、待ってよ」


振り返ると、ローザがにこやかに、しかしどこか楽しげな笑みを浮かべていた。


「せっかくだから、二人とも着いてきてよ。噂のアズマリアの元剣闘士でしょ? 実物を見てみたかったのよね」


二人は顔を見合わせた。


「でも、俺達関係ないって言われたしな。そうだよなタツヨ」


「そうだな。冷たくあしらわれたしな」


二人は腕を組みながら、戯けるように、ウンウン頷いた。


「そんなに、いじけないでさ……下手な舞台演劇見るより、楽しいかもよ。一方的な蹂躙だけど」


ローザは金色の目をギラつかせながら言った。


「そりゃ凄えな」


リュウジィの声が弾んだ。この国最強と噂されるローザの実力を、間近で見られるとは思ってもみなかった。


「行くか」


ワクワクを隠しきれない様子で、リュウジィは大きく頷いた。


こうして、リュウジィとタツヨは、ローザと共にアウトローズ・クラウンへと向かうことになった。



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