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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第153話 意外な再会



ジョジョエンの裏の個室。


新調した胸当てと脛当てを身につけ、タツヨが嬉しそうに体を動かしている。


「おい見てくれよリュウジィ、これロード・アトラスの外殻だって。名前からして強そうだな」


「へえ、思ってたより全然軽いな」


「だろ。軽いのにめちゃくちゃ硬いんだわ。ただ、この継ぎ目のところが擦れて地味に痛い」


タツヨが胸当てをコンコンと叩きながら笑う。


自分のための武具をちゃんとした店で買ったのはこれが初めてだった。


新品の金属の質感や、自分専用の装備が手に入った実感が嬉しくて仕方ないらしく、隠しきれない笑みがこぼれている。


リュウジィは適当に相槌を打ちながらその様子を見やった。


「着けてればそのうち身体に馴染むだろ」


「だといいけど」


そんなやり取りをしていると、控えめに扉がノックされた。顔を出したのはゼノンだった。


「兄貴、ヤツハカ村からキングオーグの肉が届いてます。あと、荷運びの奴から聞いたんですけど、この前また魔族が村に来たらしいですよ」


リュウジィとタツヨの動きがピタッと止まる。


「は? また来たのか」


「老師様が一人で全部追い払ったらしいですけどね。村の連中は今も大騒ぎだってさ」


ゼノンはそれだけ言うと、自分の仕事へと戻っていった。


リュウジィは頭をかきむしる。


(またか。老師なら何とかしてくれるのは分かってる。だけど、いつまでも一人で戦わせ続けるのは違う気がする。守りを頼んでおいて、老師一人に全部背負わせっぱなしってのは……そろそろ人手を増やして負担を分けてやらないと)


「一人で大丈夫だったんだろ、老師なら」


「負けるわけないけど、ちょっと人手が足りない。


『ふろむ・えー』に行って、誰か紹介してもらうわ」


リュウジィはそのまま勢いよく店を飛び出した。


『ふろむ・えー』の受付は相変わらず混み合っていた。


窓口の女性にこれまでの経緯と依頼内容を伝えると、女性は手元のぶ厚い台帳をめくりながら少し困った顔をする。


「常駐で村暮らし、しかも相手が魔族ともなると、すぐに派遣できる人は限られてしまいますね。


少々お待ちいただけますか、登録している人員を確認してまいりますので」


「すみません、お願いします」


女性が奥の資料室へ引っ込んだため、リュウジィは待合室の硬い木製の椅子に腰を下ろした。


ぼんやりと窓の外を眺めようとしたところで、視界の隅に見覚えのある男が入ってきた。


少し離れた場所にある木製の椅子。そこに、一人で深く腰掛けている男がいた。


黒髪に無精髭。ラフな着流し風の格好は、行き交う冒険者たちの中でもやけに浮いて見える。そして腰には、二本の剣が差されていた。


その顔を見た瞬間、リュウジィの動きがピタッと止まる。


(ムサシ・ミヤモト……?)


アズマリアの闘技場で戦った、あの男だった。


向こうも気づいたのか、ゆっくりと視線を上げてくる。


目が合った。

リュウジィは思わず目を丸くし、低く声を漏らす。


「……おい、嘘だろムサシ……?」


ムサシは少し驚いたように眉を上げ、それから小さく笑って立ち上がった。


そのまままっすぐこちらへ歩いてきて、当然のように隣の席に腰掛ける。


「奇遇だな。まさかこんな所で会うとはな」


「お前こそ何してんだよ、闘技場は」


「辞めた。今は流れの冒険者だ。仕事を探しにここへ来た」


軽口を交えたやり取りに、リュウジィは少し拍子抜けする。アズマリアで見た、狂気に呑まれた戦い方とはまるで違う、落ち着いた男がそこにいた。


「そうかよ……お前、あの後よく無事だったな」


ムサシは自分の右腕に目を落とし、それから苦笑いを浮かべた。


「治癒士様々だよ。正直、自分でもよく生きてると思う」


「その剣、村雨じゃないな」

ムサシは腰の二本に軽く手を触れ、肩をすくめる。


「よく気づいたな。村雨は手放した。あれを差してる限り、また同じことになる。今のは、ただの業物だ。頼りないが、こっちの方が性に合ってる」


からりとした口調だった。あの死闘の記憶と目の前の男との落差に、リュウジィは内心で戸惑いつつも、頭の中では急ピッチで計算を始めていた。


(待てよ。こいつの実力はあの闘技場ですごくよく分かってる。勝ちはしたけど、腕は間違いなく本物だ。しかもこの様子だと、あの時ほど危なっかしくもなさそうだ……)


村の安全と人手不足の現実を天秤にかけ、リュウジィは思い切って声をかけることにした。


「なあムサシ、お前、今すぐ動ける仕事探してたりする?」


「まあな。理由による」


「ヤツハカ村って知ってるか? あそこ時々魔族が襲ってくるんだ。常駐して村を守る手伝いをしてくれる人を探しててさ……お前、どうだ」


ムサシは腕を組み、少しの間考え込んだ。それから、ふっと表情を緩める。


「田舎暮らしか。悪くないな」


「本当にいいのかよ、退屈だぞ」


「今の俺には、退屈なくらいでちょうどいい」


あっさりとした即答だった。


リュウジィは拍子抜けしつつも、これ以上ない強力な人材が手に入ったことに、内心で大きく胸を撫で下ろした。


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