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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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149話 死人帰り(しびとがえり)




「死人帰りだ……! 来るぞ、来る……!!」


御者の悲鳴じみた声が響く中、タツヨは冒険者の二人に向かって鋭く指示を飛ばした。


「お前ら、商人と御者を守れ! 前には出るな!」


「お、おう!」


二人は頷き、震える御者と商人を背に庇うようにして剣を構えた。


タツヨは焚き火の明かりを背に、単身で前へと進み出る。

近づいてくる死人帰りたちは、一様に朽ちた肌と虚ろな目をしていた。


中には、錆び付いた剣を握りしめたまま彷徨う者もいる。


かつてこの地で命を落とした戦士たちの成れの果てだった。


先頭の一体が、両腕を伸ばしながら襲いかかってきた。噛み付こうと開いた口から、腐臭が漂う。


タツヨは冷静にボディへ拳を叩き込んだ。


ズドッ!


拳が腹部にめり込み、腐った肉ごと背中側へ突き抜ける。大きな穴が開き、内臓らしきものが零れ落ちた。


「……これで終わりだろ」


そう思った瞬間、穴の開いた死人帰りは何事もなかったかのように、再びタツヨへ手を伸ばしてきた。


「はっ……!?」


想定外の反応に、タツヨは咄嗟に飛び退いた。


「なんだこいつ……効いてねえのか!?」


死人帰りは苦痛の色一つ見せず、ただ機械的にタツヨへ迫り続ける。


腹部に大穴を開けたまま、平然と歩みを進めるその姿は、生半可な戦闘経験では対応しきれない不気味さを纏っていた。


背後で剣士の一人が叫ぶ。


「体を狙っても意味ねえ! こいつら、頭か首をやらねえと止まらねえ化け物だ!」


「頭かよ……!」


タツヨは瞬時に軌道を変えた。飛び込んできた一体の顎を、下から掬い上げるように打ち抜く。


グシャ!


鈍い音と共に、死人帰りの頭部が弾け飛んだ。頭を失った身体はその場に崩れ落ち、二度と動くことはなかった。


「……こうか」


タツヨは短く息を吐くと、迫る群れの真ん中に躍り出た。


「行くぜ! ファントム・ウィップ!」


鞭のような高速のジャブが、一体、また一体と、迫る死人帰りの顔面を正確に撃ち抜いていく。


身体がまるで、分身してるよう見えるステップワークで移動しながら、次々と死人帰りの頭部が吹き飛んでいく。


タツヨが驚く。


全く疲れない。新しい防具の軽さが、動きの速さを一切損なわせない。むしろ、アトラスのガントレットと胸当て、脛当てが連動し、力の伝わり方がこれまでよりも鋭くなっている。


いくらでも撃てる。


「これは……いい、凄えや」


死人帰りたちの動きは遅く、群れとしての物量こそ脅威だが、一体一体の反応速度はタツヨの敵ではなかった。


錆びた剣を振りかざす個体が現れても、その一振りが届くよりも早く、タツヨの拳が頭部を捉える。


十体、二十体と、死人帰りは次々と地に沈んでいった。


その時、群れの奥から一体、明らかに他と違う動きをする死人帰りが躍り出た。


他の個体より足取りが速く、朽ちた身体に似合わぬ俊敏さで間合いを詰めてくる。手にした錆び剣も、他の個体より鋭く振り抜かれた。


「お、生前は相当できた奴かよ」


タツヨは一瞬だけ意識を集中させたが、それも刹那のことだった。振り下ろされる剣を軽く半身で躱すと同時に、こめかみへ


一撃。


パァン!


拍子抜けするほどあっさりと、頭部が弾け飛んだ。


「……思ったより大したことねえな」


タツヨは肩をすくめ、再び群れへと向き直る。


「……あと半分ってとこか」


タツヨは残る群れへと視線を向けた。焚き火の炎に照らされた戦場に、腐臭と土埃が混じり合う。


背後では、二人の冒険者が固唾を呑んでその光景を見守っていた。


「……凄まじいな、あいつ」


「武器も持たずにあの数を相手に、涼しい顔してやがる」


御者と商人たちは、震えながらもタツヨの背中に一縷の望みを託していた。


残る死人帰りの群れへ、タツヨは再び踏み込んだ。


拳を振るうたびに、頭部が弾け、地に伏していく。


単調とも言える作業のような戦いだったが、気を抜けば足元から掴みかかってくる個体もいる。


タツヨは踏み込みの一つ一つを丁寧に確認しながら、着実に群れの数を減らしていった。


やがて、最後の一体が地に沈んだ頃には、東の空がわずかに白み始めていた。


タツヨは血と体液で汚れた拳を軽く振り、焚き火のもとへ戻る。


「……終わったぞ」


その言葉に、御者と商人たちが安堵の息を漏らした。冒険者の二人も、緊張を解いたように肩を落とす。


「化け物だな、あんた」


「褒め言葉として受け取っとくよ」


タツヨは短く笑い、明るくなり始めた空を見上げた。あとは車輪さえ直せば、王都までの道のりだった。



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