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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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147話 新たななる力



十日目の朝、タツヨはデカス金物店の扉を叩いた。


「来たか」


出迎えたアランの顔には、疲労の色が濃く滲んでいた。それでも、目の奥には確かな達成感が宿っている。


「約束通り、仕上げたぜ」


アランは工房の奥から布に包まれた一式を運んできた。カウンターの上でゆっくりと布を解くと、そこに現れたのは、青みがかった金属光沢を放つ胸当てと、脚を覆う軽量の脛当てだった。


タツヨは息を呑んだ。


外殻そのものの色と質感を残しながらも、人の身体の動きに合わせて滑らかな曲線を描いている。継ぎ目は最小限に抑えられ、洗練された造形だった。


「触ってみろ」

言われるままに胸当てを持ち上げると、見た目の厚みに反して驚くほど軽い。


「軽いな……」


「見た目に騙されるな。強度は並の鋼の比じゃねえ。神話級の魔物の外殻を、なめてもらっちゃ困る」


アランは腕を組み、満足げに鼻を鳴らした。


「装着してみろ」

タツヨは慎重に防具を身に着けていく。胸当て、脛当て。全てが吸い付くように身体に馴染み、動きを一切妨げない。


軽く拳を突き出してみる。腕の振りに、何の違和感もなかった。むしろ、拳を放つたびに、微かな力の後押しを感じる。


「これは……」


「完全なアーティファクトにゃ及ばねえ。だが、素材の性質は生きてる。動けば動くほど、お前の力を素直に伝えるはずだ」


タツヨは何度か軽く拳を打ち、その感触を確かめた。ジャブ、ストレート、フック。どの動きにも防具が抵抗せず、むしろ後押ししてくれるような感覚があった。


両腕のアトラスと、胸当て、脛当てが一体となって、身体の芯から力が漲るのを感じる。


「アラン、礼を言う」


「礼はいらねえ。仕事に見合った金をもらっただけだ」


そう言いながらも、アランの口元には隠しきれない誇らしさが浮かんでいた。


「残りの支払いだ」


タツヨは懐から金貨の入った袋を取り出し、カウンターに置いた。アランは中身を確認することもせず、無造作に懐へしまい込む。


「また何かあったら来い。お前みたいな面白い客は、そう滅多にいねえ」


「ああ、また来る」


タツヨは新しい防具に身を包んだまま、工房を後にした。外に出ると、朝の光が金属の表面に反射し、青い輝きを放つ。


十日間の待機を終え、ようやく王都へ帰る時が来た。


胸に手を当てると、ロード・アトラスの脈動のような、微かな鼓動を感じた気がした。


「さて、帰るか」


工房を出たタツヨは、その足で乗り合い馬車の発着所へ向かった。ところが、いつもは閑散としているはずの馬車乗り場に、この日に限って長い行列ができていた。


「なんだ、これ……」


近くにいた男に尋ねると、鉱山の祭りが近く、他の街から商談にやってきた商人たちが一斉に帰路につく時期だという。


行列の様子を見る限り、今並んでも二台、三台先まで待たされるのは間違いなかった。


「参ったな……」


十日ぶりに王都へ戻れると思っていた矢先の足止めに、タツヨは頭をかきながら発着所の周辺をうろついた。


そうして歩いていると、荷台に穀物や野菜を山積みにした大型の輸送馬車が目に留まった。御者らしき男が荷の積み込みを終えたところだった。


タツヨは声をかけた。


「なあ、あんた、どこ行くんだ?」


「ん? キングス・フォーンだが」

タツヨは即座に懐から金を取り出した。


「キング・スフォーン?なら乗せてくれないか。金は払う」


御者は顎髭を撫でながらタツヨを一瞥した。


「乗せるのは構わねえが、お前さんの分の食料まではねえぞ。荷主から預かった分しかねえからな」


「それなら、俺の分は俺で用意してくる。少し待っててくれ」


タツヨはすぐに近くの市場へ駆け込み、日持ちのする干し肉やパンをまとめて買い込んだ。現世で肌身離さず持っていたお守りより一回り大きいだけのアイテムボックスに、それらを次々と詰め込んでいく。 


物を入れる瞬間、入れ口がその物とぴったり同じ大きさに開いた。


戻ってきたタツヨに、御者が尋ねた。


「食料は用意できたのか」


タツヨは腰の袋を軽く持ち上げて見せた。


「ここに入ってる」


「なんだそれは?」


「アイテムボックスだ」


御者は目を見開き、まじまじとタツヨを見つめた。


「乗んな」


荷台には、既に護衛として雇われたらしい二人組の冒険者が腰を下ろしていた。どちらも腰に剣を下げた、身軽な出で立ちの剣士だった。


「よろしくな、兄ちゃん」


「こっちこそ世話になる」


軽い挨拶を交わすと、御者の合図と共に大型馬車がゆっくりと動き出した。


乗り合い馬車が通る街道とは違い、大型馬車は荷の重さの都合上、別の道を進むという。


来た時とは違う景色が、車窓の向こうにゆっくりと流れ始めた。



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