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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第139話 まさかの訪問者



王都に戻ったのは夕方だった。

二台の馬車が王都の門をくぐると、見慣れた街並みが広がった。


数日ぶりに戻ってきた感覚が妙に新鮮だった。


気紛れな旅団の三人と別れ、カミラも自分の宿へ向かった。ミライは先にリュウジィの家へ戻るとのことで、タツヨと二人でジョジョエンへ向かった。


店に入ると、ホールではゼノンとギノンが開店準備をしていた。二人がこちらに気づいて顔を上げた。


「お帰りなさい」


「ただいま。何事もなかったか」


「はい。ハクさんが両店舗しっかり見てくださいました」


俺はバッドの母に挨拶しようとホールの奥へ向かった。バッドの母は俺の顔を見て安堵した表情になった。


「リュウジィさん、お帰りなさい。ご無事で良かった」


「ご迷惑をおかけしました。店の方はどうでしたか」


「おかげさまで問題なく。それとリュウジィさん、一つ報告があって」


「何ですか」


「三日ほど前から、白い犬を連れた老人が店を訪ねてきているんです」


俺は首を傾けた。


「白い犬を連れた老人?」


「はい。毎日決まった時間に来て、リュウジィさんを待っていると言って帰るんです。今日も夕方に来ると言っていたので、そろそろ来る頃かと」


「どんな老人でしたか」


「穏やかな目をした方で。白い大きな犬を連れていて、とても静かな方でした。でも何というか、ただの老人じゃないような、不思議な雰囲気があって」


「不思議な雰囲気?」


「うまく言えないんですが、近づくと空気が変わるような感じで。ゼノンたちも最初は警戒していたんですが、話してみると穏やかな方で」


タツヨが隣で腕を組んだ。


「心当たりあるか」


「ない」


俺は首を振った。白い犬を連れた老人。誰だろうか。客の一人か、それとも王宮関係の誰かか。


「わかりました。来たら通してください」


「はい」


カウンターに腰を下ろして、羊皮紙に書かれた、自分がいなかった間の売り上げを見て、待っていると、しばらくしてゼノンが顔を出した。


「リュウジィさん、お客様がいらっしゃいました」


俺はタツヨと顔を見合わせ、ホールへ向かった。


入り口の近くに、小柄な老人が立っていた。白髪で、穏やかな目をしている。その隣に、白い大きな犬が座っていた。尻尾をゆっくりと振っている。


俺は足を止めた。

老人がこちらを見て、口元に笑みを浮かべた。


「気が向いたから来たぞ」


声を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立った。


隣でタツヨが小声で言った。


「誰だこの爺さん」


俺はタツヨの言葉が耳に入らなかった。


目の前に立っているのは、孤島で三ヶ月間俺に形意拳を叩き込んだ、形意拳最強の達人、あの郭竜深(かくりゅうしん)老師だった。数ヶ月に一度しか島を出られないはずの人間が、何故ここにいるのか。


「老師、何故ここに」


「海流が変わったのでな。ついでに来てみた」


「ついでに、ですか」


「美味い肉をご馳走すると言ったろ。その言葉を覚えておったぞ」


俺は深く頭を下げた。


「よく来てくださいました。本当に」


白い犬が立ち上がり、俺の手に鼻を押し付けてきた。ロンだった。孤島で一緒に過ごした銀狼が、犬の姿に変化してここにいる。


「ロン、お前も来たのか」


ロンが尻尾を大きく振った。

タツヨが困惑した顔でこちらを見ていた。


「なあリュウジィ、この爺さん誰なんだ。お前なんで頭下げてんの」


「孤島でお世話になった方だ。形意拳の達人で、俺に三ヶ月間稽古をつけてくれた」


タツヨが老師を見た。老師は涼しい顔で店の中を見回している。


「この爺さんが?」


「口の聞き方気を付けろ。お前が目の前にフロイド・メイウェザーがいたら、そんな態度するか?」


「はぁ?」


「形意拳の世界で、それぐらいの人なんだよ。伝説の人」


タツヨはまだ半信半疑の顔をしていたが、それ以上は言わなかった。


俺は厨房に声をかけた。


「今日は特別なお客様だ。キングオーグの一番いい部位を出してくれ」


老師がそれを聞いて小さく笑った。


さらに老師がタツヨに向かって言う。


「中々強そうだな。どれ、食事が終わったら、軽く手合わせしてみるか?」


タツヨはニヤリとしながら、言った。


「面白え。是非達人の技を見せてくれよ」


「退屈はさせんよ。楽しみにしておるぞ」


ロンが老師の隣で静かに座り直した。店の中に、温かい空気が漂い始めた。




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