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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第136話 闇を裂く竜の炎



真紅に染まったファフニールを纏い、俺は男と向き合った。


内功を高めるたびに、ファフニールの赤が深くなっていく。


ニーズヘッグリングも呼応するように熱を帯び始めた。


男が足を止めた。黄色い目が俺を値踏みするように見ている。


「さっきより随分と変わったな」


俺は答えなかった。


跟歩で一気に間合いを詰めた。

赤と金色の残像が、流れるように走る。


炎を纏った拳で、男の腹部を撃ち抜く。


「崩拳!」


グワァッッシャ!


そのまま男は五メートルほど後退した。


さらに追撃をかけようと踏み込んだその瞬間。


「貴様あぁ!今のは効いたぞ」


苦悶の表情を浮かべながら、男が叫んだ。


ネクロ・オーブが超スピードで俺に向かって飛んでくる。

横から飛び出してきたタツヨが、それを撃ち落とす。


ガキィィィッン!


「このパンチングボールは、俺に任せとけ」


俺は男の懐に入った。そして炎を纏った外回転の掌を胸に叩きつけた。


「横拳」


ズバァァァッ!


男の身体がくの字に曲がりながら後退する。


(ここで決める)


前進して、最後の一撃を決めようとした、その瞬間地面が凹凸のある形状が変わった。


「何い!?」


勢いよく前進していた俺はバランスを崩した。前のめりに倒れそうになる。視界の中で、男の全身から黒い魔力が膨れ上がる。


さっきのエクリプス・ホライゾンとは違う。もっと凝縮された、一点に集中した力だった。


「グラビティ・クラッシュ」


男の拳に漆黒の魔力が収束した。


俺は回避しようとしたが、重力が変わった。身体が地面に引きつけられる感覚。足が動かない。


「まずい!やられる」


その瞬間、タツヨが俺の前に出て盾になった。


ズドォォォォッン!!


漆黒の拳がタツヨの胸に直撃した。


タツヨの身体が弓なりに曲がり、斜面を転がりながら岩に激突した。岩にひびが入った。


「タツヨ!」


タツヨは動かなかった。俺は駆け寄った。タツヨが仰向けに倒れている。胸が上下しているから生きている。


だが顔色が悪い。口の端から血が流れ、右腕が変な方向に曲がっていた。


「てめえぇぇぇぇ!」


胸の奥で何かが、一気に爆発した。


頭の中で金切り音がなる。


キイィィィィィッン!!


立ち上がった瞬間、ファフニールが変わった。真紅の地に、黒い爪痕のような筋が刻まれていく。赤と黒が混ざり合い、タイガーストライプが全身を覆った。


男が初めて表情を変えた。黄色い目が見開かれる。


「なんだ、その力は」


俺は答えなかった。

地面を蹴った。さっきまでとは比べ物にならない速さだった。男が反射的にネクロ・オーブを放つが、俺には当たらない。


赤黒い炎を纏った身体で、内功盤根の円の動きで全て躱し、男の懐に一瞬で潜り込む。


「エク——」


男がエクリプス・ホライゾンを発動しようとした瞬間、俺の拳に纏った炎が竜の顎となりニーズヘッグリングの銀の光がまるで竜の目のようになった。


竜の炎の拳が男の顔面をとらえた。


「鑽拳」


ズガァァァッン!!


男の身体が宙を舞った。木々をなぎ倒しながら斜面を転がり、大きな岩に激突して止まった。しばらく間があった。


男がゆっくりと立ち上がった。

グシャグシャになった顔の中の黄色い目がこちらを見ている。


地面を蹴って神速のスピードで男の前に行く。そして竜の炎を纏った両掌で胸を撃った。


「虎形拳」


ゴオォォォォッ!!


男の胸が爆発したように穴があき吹き飛んで、山の斜面に貼り付けられるよう激突した。


グシャァァァ!!


次の瞬間、黒い靄が男を包んだ。そして男の姿が消えた。

結界が解けた。遮られていた朝の光が戻ってくる。木々の葉が風に揺れ始めた。


タイガーストライプが徐々に薄れ、ファフニールが漆黒に戻っていく。


俺はタツヨの元に駆け寄った。


「仕留めたか?」


「わからない」


「そうか」


タツヨが小さく笑った。すぐに顔を歪める。笑うのも痛いようだった。


「相変わらず、お前のそれは反則だな」


「俺にもよくわからないよ」


「嘘つけ」

 

アイテムボックスからナロキシンを取り出してタツヨに飲ませた。痛みは引くが、折れた骨は治らない。アミリを呼ばなければならない。


「動けるか」


「なんとかね」

俺はタツヨの左腕を肩に回した。二人で斜面を下り始めた。


漆黒のファフニールの生地が朝の光を受けて、金色の筋をわずかに光らせていた。


あの男は死んだのか。それとも逃げたのか。

胸を撃ち抜いたはずだ。だが魔族がそれだけで死ぬとは思えない。これで終わりではないはずだ。


しばらく無言で歩いた。タツヨの呼吸が少しずつ落ち着いてきた。


「無茶しやがって」


「お互い様だろ」


タツヨが笑った。今度は顔を歪めなかった。



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