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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第133話 二体の魔物



夜明け前に馬車を降りた。

馬車が入れるのはここまでだと御者が言った。


ヤツハカ村まであと一時間ほど歩く。


朝靄の中、六人で街道を歩いた。


オルセンが先頭に立ち、慣れた足取りで獣道を進んでいく。アミリが周囲にサーチを展開しながらついてきた。


「今のところ反応はないです」


「わかった。引き続き頼む」


木々の間から朝の光が差し込み始めた頃、遠くに村の輪郭が見えてきた。


最初に気づいたのは匂いだった。


焦げた匂いと、それ以外の何か。オルセンの足が少し速くなった。


村の入り口に差し掛かった瞬間、俺は足を止めた。


広場の端に、並べられた遺体があった。筵をかけられていたが、数は一目でわかった。村人が数人、その周りに立って頭を垂れていた。


誰も声を出さなかった。


アミリが口元を手で押さえた。ジャスパーとオリオンも黙って立っていた。


オルセンが振り返った。目が赤かった。


「昨日またやられました。これで狩人10人、村人8人です」


俺は遺体の前に歩み寄った。筵の端から覗く手が見えた。


大人の手ではなかった。


「子供も?」


「一人。七歳の女の子です」


タツヨが低く舌打ちをした。

村長らしき老人が近づいてきた。


白髪で背が曲がっているが、目に力があった。


「お久しぶりです。リュウジィさん。遠いところをありがとうございます」


「いえ。怪我人はいますか」


「います。6人、小屋の中に」


俺はアミリを振り返った。


「頼めるか」


「はい、すぐ行きます」


アミリがジャスパーとオリオンを連れて小屋の方へ向かった。

村長が続けた。


「魔物は山の方から来ます。キングオーグの生息地の近く、北の斜面の辺りに潜んでいるようで」


「二体とも?」


「そのようです。昼間は山から出てきて、夕方になると戻っていく。狩人たちが追いましたが、近づくこともできなくて」


タツヨが俺の隣に立った。


「行くか」


「ああ」


俺は村長に向き直った。


「村の人たちは、今日は外に出ないようにしてください。魔物は俺たちが片付けます」


村長は深く頭を下げた。


「お願いします」


しばらくしてアミリがジャスパーとオリオンを連れて小屋から戻ってきた。


「怪我人の処置は終わりました。全員ナロキシンを飲ませて、今は安静にしています」


「助かった。三人は村に残って怪我人の様子を見ていてくれ。村の警護も頼む」


ジャスパーが頷いた。


「わかりました。気をつけてください」


オルセンが案内を申し出たが、断った。ここまで歩きっぱなしで消耗している。それに、あの遺体の中に知り合いもいるはずだ。


「村で待っていてくれ」

オルセンは一瞬躊躇したが、頷いた。


俺とタツヨは北の斜面へ向かった。朝の光が山肌を照らし始めていた。木々の間に入ると、空気が変わった。


獣の匂いとも違う、どこか澱んだ空気だった。


しばらく進むと、タツヨが立ち止まった。


「なあリュウジィ」


「何だ」


「あの子供の手、見たか」


「見た」


タツヨは前を向いたまま言った。


「俺無茶苦茶むかついてる」


「俺もだよ」


二人は斜面を登り続けた。


木々が密になるにつれて、足元の草が変わった。踏みしめるたびに、いつもとは違う感触がある。枯れているわけではない。何かに蝕まれているような、そんな草だった。


タツヨが鼻をひくつかせた。


「獣の匂いじゃないな」


「ああ」


俺もずっと気になっていた。キングオーグを狩りに来た時に嗅いだ山の匂いとは明らかに違う。もっと重くて、淀んだ匂いだった。


斜面の傾斜がきつくなってきた頃、木々の間に何かが動いた。

俺とタツヨは同時に足を止めた。


風ではない。


「いるな」


タツヨが低く言った。


「ああ」

俺はファフニールが僅かに反応するのを感じた。戦闘の予感を察知している。内功を静かに高め始めながら、前を見据えた。


木の陰から、何かが滲み出るように現れた。


大蛇だった。全長は十メートルを超えるだろうか。鱗が黒く光り、地面を這う動きは音もなく滑らかだった。


黄色い目がこちらを捉えた瞬間、背中から煙が立ち上り始めた。


煙が翼の形になっていく。


「あれか」


タツヨが呟いた。


その時、左側の茂みが激しく揺れた。


地響きのような音が斜面を伝わってきた。


木々をなぎ倒しながら現れたのは、四本足の巨躯の獣だった。


全身が岩のような灰色の皮膚に覆われており、体高は三メートルを超えている。


額に一本の太い角が生えていた。地面を踏みしめるたびに、足元が小さく揺れた。


二体が同時に現れた。


大蛇の魔物は翼を広げたままこちらを見ている。岩の獣は低く唸りながら、じりじりと距離を詰めてきた。


タツヨが静かにブレスレットに触れた。


「どっちをやる」


俺は二体を交互に見た。


「俺が四本足の方を引き受ける。空からくる奴はタツヨが頼む」


「了解」


タツヨが小さく笑った。


「久しぶりに本気出すか」


俺は中段の構えをとった。内功を高め、ファフニールが静かに応える。


岩の獣が地面を蹴った。


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