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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第129話:新たなる脅威



王宮の一室でルシエルはカイゼ

ルの前に立っていた。


「少し外出してもよいですか」


カイゼルは杯を置いて、穏やかな目を向けた。


「構わない。ただし人間とは協定がある。揉め事は起こすな」


「勿論です」


ルシエルは頷いた。


「ただ、一つ聞いてもよいですか。何故そこまで協定を大事にするのですか。軍事力ならこちらが圧倒的に上なのに」


カイゼルは少し考えてから答えた。


「知っての通り、我が国は四つの国に囲まれている。キングスフォーン、サウスチェケラッチョ、アズマリア、サウザンアイランド。軍事力では我が国が圧倒出来るだろ。だがこちらもそれなりの被害が出る」


「ならば、仲良くしていた方が利益がある。それだけのことだ」


ルシエルは静かに頷いた。


カイゼルが杯を持ち直した。


「で、どこへ行く」


「面白い店があると聞きました」


カイゼルは何も言わなかった。ただ杯に口をつけて、窓の外を眺めた。


ルシエルは部屋を後にした。

夜の王都へ向かいながら、今日のことを思い返した。


広間で見たあの男。竜のアーティファクトを二つ纏う人間。

(面白くなってきた)



タツヨが夜のロードワークを始めたのは、キングスフォーンに来てすぐの頃からだった。王都の外周沿いの道は人通りが少なく、魔石街灯の間隔が広い。


暗がりと明かりを繰り返しながら走るのが、タツヨは気に入っていた。


三周目に入ったところで、前方に人影が見えた。


壁に背を預けて立っている。フードも被らず、魔石街灯の光の中にただ立っていた。


近づくにつれて顔が見えてきた。


赤髪の男だった。

タツヨは足を緩めなかった。すれ違いざまに視線だけ向けると、男も同じようにこちらを見ていた。


通り過ぎた。


足音が続いた。

男がついてきていた。


タツヨは立ち止まって振り返った。


「何か用か」


男は立ち止まって、タツヨを見た。品定めでも敵意でもない。ただ純粋に、面白そうに見ていた。


「あなたの動きを見ていた」


「そうか」


「私と手合わせしてもらえませんか?タツヨ・ジョージさん」


タツヨは男を見た。細身だが、佇まいが違う。ただ立っているだけなのに、どこか隙がない。


「俺の名前を知ってるって事は復讐か何かか?」


「いえいえ、貴方の戦闘スタイルに興味があるだけです」


「興味ねぇ〜?名前は?」


赤髪の男はニッーと口角を上げながら言った。


「ルシエルと言います」


「いいぜ、付き合ってやる」


二人は向かい合った。

男がタツヨのスタンスをそのまま真似た。右足を引いて、両拳を顔の前に構える。ボクシングのフォームだった。


タツヨは眉を上げた。


「お前ボクシングを知ってるのか?」


「知らないですよ。あなたのやり方で戦います。

それが礼儀かと思いまして」


タツヨは少し笑った。


「アトラスは使わない。素手でいくぞ」


「構いません」


男が先に動いた。


踏み込みが速かった。


タツヨがジャブを放ったが、それを躱して右ストレートを打ち込んで来た。


ビューッ!


タツヨは顎を引いてスウェーで躱し、左フックを返した。


男はそれをガードしたが、タツヨのパンチの破壊力で身体ごと横に弾かれた。


「中々の破壊力ですね。これでガントレットを付けたら、ワイルドオーグなんて簡単に倒してしまいますね」



「何故それを知っている?」


男は答えずに踏み込んできた。まるでマシンガンのようにジャブの連打。


バッ!バッ!バッ!バッ!バッ!


速い!


タツヨはディフェンスだけで躱せず、ガードを固めて受けた。


連発するジャブで今度はタツヨが後ろに弾かれた。


タツヨがルシエルのジャブを受けた手を振りながら言った。


「痛てえ、痛てえ、やるなお前。行くぜ」


その瞬間、今までとは比べ物にならないスピードで踏み込み、右のパンチを放つ。


ファントム!


タツヨの見えない右ストレートをルシエルはクロスガードで受ける。


ガーンッ!!


ルシエルの身体が後ろに弾かれる。


弾かれた身体と同じスピードでタツヨが踏み込みむ。


そしてスーパーマンパンチを放つ!


がっ!しかし突き出した拳の先に、ルシエルがいない。


その瞬間弧を描くようなルシエルのパンチが横から飛んで来た。


「やべぇ!」


ガーンッ!!


今度はタツヨがクロスガードでそのパンチを受けて横に弾かれた。


ルシエルはそこから動かない。


「楽しかったです。この辺にしときましょうかね」


「まだ付き合えるぜ、お前強いな。何者だ」


男は微かに口角を上げた。


「さて?何者ですかね?明日の夜は、あなたの仲間の店に行きます」


それだけ言って、男は闇の中に消えた。


タツヨはしばらくその場に立っていた。


(仲間の店か)


あいつはリュウジィの店を知っている。


タツヨは踵を返してロードワークを再開した。明日リュウジィに話すことが、また一つ増えた。


(面倒な事にならなければいいけど)



お読みいただきありがとうございました。

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