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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第128話:広間にて



調理場の従業員にキングオーグの肉を用意させ、アイテムボックスに収めた。口がぱかりと開いて、塊のまま吸い込まれていく。何度見ても不思議な代物だ。


店の外に出ると、カミラが肩に斜めにグレイブを担ぎながら立っていた。


「何してる?」


「ミライちゃんに頼まれたんだよ。どうせリュウジィが王宮に肉を届けるから、守ってくれってさ」


「なんで知ってるの?」


「さっきカエデさんだっけ?がリュウジィを探しに来たからさ。なんだよ、私がお供じゃ不服かい」


「いや、心強いよ。頼むよ」


断る理由もなかった。馬車に乗り込むとカミラは無言で向かいに座った。


それにしても、アズマリアの闘技場で、淡々と人を切り刻んでたカミラとこんな関係になるとは。


人の縁とは不思議な物だと思った。


王宮の入り口に着くと、いつもと空気が違った。


近衛兵が正門に並んでいる。その少し離れた場所に、昼間見た黒い突起物のある鎧をつけた魔族の兵士が、整然とした隊列で立っていた。微動だにしない。白目がこちらを向いているのかどうかもわからなかった。


カミラが低い声で言った。


「あれが暴れたりしたら、ちょっと厄介だね」


「だろうな」


近衛兵に用件を告げると、カミラの入場も許可され、係の者に調理場まで案内された。


調理場に入ると、数人の料理人が手を止めてこちらを見た。アイテムボックスから肉を取り出すと、その大きさに料理人の一人が目を丸くした。


「これが、キングオーグの」


「そうです。焼き方は強火で表面を固めてから、中は火を通しすぎない方がいい」


料理人が頷き、肉を受け取った。

「代金のお支払いに係の者が参りますので、少々お待ちください」


待つ間、カミラは腕を組んで調理場の様子を眺めていた。料理人たちが手際よく肉を捌いていく。油が跳ねる音と、肉が焼ける香りが広がってきた。

しばらくして係の者が戻ってきた。


「大変恐縮ですが、魔族のお客様方がキングオーグの肉を大変喜ばれておりまして。是非店主に直接お礼を申し上げたいとのことで」

カミラがこちらを見た。俺は係の者に頷いた。


「わかりました」


広間に通された。

テーブルの上には料理が並び、キングスフォーンの王とその他重鎮数人、そして二人の人間がいた。一人は白髪交じりの大柄な落ち着いた男。もう一人は細身の赤髪の男だった。


入り口近くに、ローザ・カイリと鉄の塊のような大剣を背中のハーネス状の鎖のホルダー引っ掛けたジラルデ・パッキャオが立っていた。


ローザが俺に気づいて、小さく手を振った。俺も軽く頷いた。

その瞬間、胸の奥で何かが反応した。


ジラルデ・パッキャオは感情のない目で俺見た。



ファフニールが、ニーズヘッグリングが、ジラルデに向かって静かに騒ぎ始めた。竜を殺した男への、二匹の竜の反応だった。


俺はそれを、静かに押さえ込んだ。


落ち着け。


白髪交じりの男が立ち上がった。穏やかな笑みを浮かべていた。この場にいる誰よりも自然体で、それがかえって只者ではないと感じさせた。


「あなたがキングオーグの肉を届けてくれた方ですか」


「はい。ジョジョエンというお店をやっております、リュウジィと申します」


「カイゼル・グリフォンです。素晴らしい肉でした。あのような肉は魔族の国でも滅多に食べられない」


「ありがとうございます」


「またいつでも届けてもらえると嬉しい」


穏やかだった。圧も威圧もなかった。ただそこに在る、という感じの男だった。


その振る舞いが逆に不自然だった。


魔族のナンバー2。

間違いなく強大な力を持っているのだろう。


ふと視線を感じた。


赤髪の男だった。テーブルに肘をついたまま、少し口角を上げた笑顔で、こちらをじっと見ていた。視線をそらす気配がない。品定めでも値踏みでもない。ただ純粋に、興味深そうに見ていた。


俺も一瞬だけ、その目を見返した。


何者だ。

係の者から代金の入った袋を受け取り、俺は広間を後にした。カミラが後ろに続く。廊下に出た瞬間、カミラが小声で言った。


「赤髪の男、ずっとあんたを見てたぞ」


「わかってる」


馬車に乗り込んで王宮を出た。夕暮れの空が赤く染まっていた。


(魔王直属の五人衆の一人、か)


あの視線が、頭の片隅に残った。



お読みいただきありがとうございました。

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