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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第127話:使節団




商会の名前というのは、どうにも頭の中でうまくまとまらなかった。


ジョジョエン、ジャンヌダルク、MG倶楽部。三店舗とも順調だった。ハクさんに言われるまで商会という発想自体がなかったし、正直今もピンときていない。


(何かいい名前ないかな)


俺は昼過ぎの王都をぶらぶらと歩いた。


考えながら歩くのは現世からの習慣だった。何かの本に歩きながら考えると良いと書いてあったからだ。


あの頃は借金のことばかり考えながら歩いていたけど。

気がつくと、いつもと空気が違った。


通りのあちこちに王宮の剣士が数人一組で立っている。表情が硬い。通行人を制止するわけでもなく、ただそこにいる。

それがかえって気味悪かった。


たまたま顔見知りの剣士がいたので声をかけた。


「こんにちは」


「あっ、リュウジィさん。どうも」


「今日何かあるんですか」


「えっ、ご存知ないんですか」


「何がですか」


剣士は少し声を落とした。


「魔族中原使節会議です。


今日、魔族の使者がキングスフォーンに入ります。二日間滞在する予定で」


「魔族の使者が」


「平和協定の確認と、今後の話し合いのために。一年に一度のことなんですが」


「平和協定があるのに、皆さんそんなに緊張してるんですか」


剣士は苦笑した。


「国力も軍事力も、圧倒的に向こうが上ですから。何か間違いでもあったら、それこそ戦争になります。今日来るのが魔族のナンバー2と、魔王直属の五人衆の一人らしくて」


「そうなんですか」


「もうそろそろ王都に入ってくる時間なので、リュウジィさんも気をつけてください」


礼を言って歩き出すと、通りの人間が自然と端に寄り始めていた。何かを察した動きだった。

しばらくして、遠くから音が聞こえてきた。


足音だった。


ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!


整然とした、重い足音。何百という足が同じリズムを刻んでいる。それが近づいてくる。

俺も端に寄って、立ち止まった。


最初に見えたのは馬車だった。真っ黒い、装飾のない馬車が二台。続いて、禍々しい雰囲気を醸し出した兵士の列が現れた。


黒い鎧だった。所々に鋭い突起がある。兜の隙間から見える目が、全員白目だった。人間ではない。百人はいた。足音が石畳を鳴らすたびに、周囲の空気が重くなっていくような気がした。


誰も声を出さなかった。


子供が一人、母親の服を掴んだ。母親は何も言わずに子供の

肩を抱いた。


馬車が通り過ぎた。

足音が遠ざかっていく。

俺はしばらくその場に立っていた。


あの行列には、近づきたくないと思わせる何かがあった。理屈じゃない、本能みたいなもんだ。


通りが少しずつ元の音を取り戻し始めた頃、俺は歩き出した。

タツヨの家に向かいながら、商会の名前のことを考えた。あいつは頭が固いから期待はできないけど、一人で考えてても埒が明かない。


タツヨの家の扉を叩くと、少し間があってから開いた。


「なんだリュウジィ、珍しいな昼間に」


「ちょっと相談がある」


「上がれよ」


部屋に入ると、タツヨはテーブルに戻って椅子に座った。何か食べていたらしく、皿が一枚あった。


「さっき魔族の使節団の行列見たよ」


「そうか、もう入ってきたのか」


「黒鎧の兵士が百人くらい。目が全員白目でさ」


「気持ち悪いな」タツヨは顔をしかめた。


「あの兵士は、俺達が船の上で闘ったのと、同じ類いの物だと思うよ」


「そんなの平気で100人も連れて街中歩かせて、遠回しの力の誇示だな」


「魔族のナンバー2と魔王直属の5人の中の1人が来てんだってさ」


「ナンバー2!?カイゼルが来てるのか?」


「知ってるのか?」


「カイゼル・グリフォン。アズマリアに来たことあるよ。闘技場の貴賓席で、ヒルデガルドとピエールと三人で並んで、俺が闘ってるの観てたよ」


「見た目どんな感じなんだ?」


「普通の人間と変らないぞ、でも人間界に来る時は人間の姿で来るって、聞いたけどな」


「まあ今は俺たちには関係ない話だろ」


「そうだな、お前は商人だし、俺はプー太郎だからな」


俺は椅子を引いて腰を下ろした。


「で、相談ってのは」


「商会の名前だよ」


タツヨが眉を上げた。


「商会?」


「三店舗になったから、なんかさぁ、商会を名乗った方がいいってハクさんが言うんだよね。名前が思いつかなくて」


「俺に聞くか、それを」


「一人で考えても埒が明かなくて」

タツヨはしばらく腕を組んで天井を見ていた。


「ウロボロス商会は」


「それはパーティー名だろ」


「じゃあ却下で」


タツヨが「難しいな」と呟いた。俺も同じ気持ちだった。

窓の外の通りは、さっきの緊張が嘘みたいに元の喧騒に戻っていた。


「まあ、焦っても仕方ないか」


「そうだな、いい名前ってのは急いで出てくるもんじゃない」


「じゃあ店戻るわ」


「商会名決まったら教えてくれ」


タツヨがニヤリとした。


「俺も考えとく」


「頼むよ」


店に戻るとカエデが入り口近くで待っていた。俺の顔を見るなり、すぐに口を開いた。


「オーナー、王宮から使いの者が来ました」


「王宮から?」


「魔族の使節の方々が、是非キングオーグの肉を食べたいと。王宮まで届けてほしいと」


近くにいたゼノンとギノンが同時に声を上げた。


「俺が行きます」「いや俺が」


俺は首を振った。


「いや、俺が行かないとマズいだろ」


経営者が顔を出す方が筋が通る。それに少し興味もあった。


運が良ければ魔族の顔を拝める。


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