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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第126話:私がカミラだよ



MG倶楽部がオープンして二週間が経った。


噂が噂を呼んだのか、女性剣士や女性冒険者が毎日のように店を訪れるようになっていた。


グラニータは朝から晩まで採寸と相談に追われ、ミライは接客と在庫管理を同時にこなしていた。


繁盛しているのはいいことだが、問題が一つあった。


この世界は、ラノベのような、ほんわかした、安全な場所ではない。


ジョジョエンもジャンヌダルクも、腕に覚えのある従業員がいるから、ちょっかいをかけてくる輩はまずいない。


だがMG倶楽部はまだ開店して間もない。毎日というわけではないが、この世界では、どこそこで強盗があった、誰かが死んだという話題には事欠かなかった。


女性客が多い店となれば、なおさらだ。


腕の立つ人間が必要だった。


その日の昼過ぎ、リュウジィはタツヨを連れてMG倶楽部へ向かった。


店に入るとミライが顔を出した。

「ちょうどよかった。今警備の募集を見た人が奥の部屋に来てて。これから面接しよう思ってたんだけど、少しだけ待たせそうだから、リュウジィちょっと話しててよ」


タツヨは俺は関係者じゃないと、その場に留まろうとしたが、俺は言いからと、目配せした。


俺とタツヨは奥の部屋へ向かった。


扉を開けた瞬間、二人とも同時に足を止めた。


髪型が変わっていた。髪の色も黒からブラウンに変わっていた。だがその顔と、壁に立てかけられた、持ち主の背丈より長いグレイブは、見間違えようがなかった。


「……カミラ・ヴァン・クロム」


タツヨが低い声で言った。


アズマリアの闘技場三英傑の一人。リュウジィが決勝で二撃で沈めた相手だった。


カミラはリュウジィとタツヨを見て、軽く片眉を上げた。


「あ、やっぱりリュウジィが経営者で合ってたか。ふろむ・えーで募集見てさ、名前見て来てみたんだよね」


思っていたより随分と軽い口調だった。


しかし俺は笑えなかった。


「仕返しに来たなら、回りくどい事すんなよ。外でやろうよ」


カミラはグレイブに手もかけず、椅子に深く腰かけて言った。


「あのさぁ、あんた等二人とやるのに正面から来ると思う?それにアズマリアで負けたのは、私が弱かっただけ。何で仕返しにわざわざ来るのよ」


タツヨが小声でリュウジィに耳打ちした。


「……なんかイメージと違くね?」


リュウジィも同じことを思っていた。あの無表情で淡々と相手を仕留めていた女が、今は椅子に浅く腰かけて足を組んでいる。


「アズマリアはどうしたんだよ」


リュウジィが聞いた。


「ムサシもオーガもいなくなって、しばらくは、私が一番だったけど飽きてさ。強い奴がいないと張り合いがないじゃん。それでフリーの冒険者になって各地ぶらついてたら、ここに流れ着いた」


カミラはそれだけ言って、グレイブを顎でしゃくった。


「で、雇ってくれんの?女の店の警備なんてやったことないけど、腕は確かだよ。あんたが一番よく知ってるでしょ」


リュウジィはタツヨと顔を見合わせた。


タツヨが苦笑しながら言った。


「まあ、腕は確かだな」


「何か待遇についての、要望とかある?」


俺は事務的に言った。


カミラが目を細めた。


「特にないよ。住む所紹介して欲しい。お金には困ってないから」


(そっか、こいつ三英傑の1人だもんな。現世で言ったら億り人だ)


「金に困ってないのに、何で仕事すんだよ。冒険者のほうが向いてるんじゃないのか?」


「冒険者も悪くないんだけど、たまに雑魚のクセに生意気な奴とかいるじゃない?私ついやっちゃうからさ……」


タツヨがその言葉に反応して前のめりになって話す。


「わかるよそれ!冒険者のAランクって、大した事ないのに大物たれてる奴多いよな!ついボコボコにしたくなるよな」


(お前等の強さが異常なんだよ)

リュウジィは苦笑した。


ミライが顔を出した。


「盛り上がってるけど、知り合いなの?」


「アズマリアでちょっとね」


「なら採用決定でしょ?一応このお店の責任者のミライです。宜しくお願いしますね」


カミラは立ち上がって、ミライに頭を下げ、リュウジィを見て、もう一度ミライを見ながら言った。


「リュウジィの奥方様ですか?カミラ・ヴァン・クロムです。カミラと呼んでください」


ミライは少しだけ頬を赤くしながら。


「奥方と言うか、何と言うか宜しくお願いします」


そう言って、逃げるように店のほうへ戻った。


それを見てカミラとタツヨはニヤニヤしながら、リュウジィを見た。


(なんだよお前等のその顔は)

リュウジィは二人をキッと見返した。


しかしあの追尾するグレイブを扱う三英傑のカミラが、MG倶楽部の警備になる。悪くない話だった。


「カミラよろしく頼むな」


「りょーかい」


カミラはグレイブを軽々と肩に担いだ。


その瞬間だけ、アズマリアの闘技場で見たあの圧倒的な気配が、一瞬だけ戻った気がした。




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