↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/216

第124話:商会という選択


グラニータの店を訪ねてから二週間が経った。


リュウジィはジョジョエンから歩いて五分の場所にある、空き店舗の前に立っていた。


石造りの外壁に、足場が組まれていた。二階の窓枠が外されていて、そこから埃が舞い落ちてくる。中から鑿の音と、木材を運ぶ声が聞こえる。職人が何人かいるのがわかった。


「思ったより早く出来そうだね」


入口からミライが出てきた。袖をまくり、髪を後ろで束ねている。手には図面らしき紙を持っていた。首に細かい木屑がついていた。


「リュウジィ、来てたの」


「様子を見に来たんだよ。順調そうだね」


「順調すぎて怖いくらい。グラニータの知り合いに大工さんがいて、腕がいい人で、引退してこっちでのんびりしてるんだけど、グラニータに直接頼まれて来てくれたみたい」


ミライが笑った。


「グラニータは?」


「中にいるよ。呼んでくる」


ミライが戻っていった。リュウジィは外から店の中を覗いた。棚の枠がいくつか並んでいた。まだ骨格だけだったが、広さは十分あった。女性が落ち着いて武具を選べる空間になりそうだった。


しばらくしてグラニータが出てきた。手に木の板を持っている。髪に鋸屑がついていた。


「あ、来てたんですか」


「邪魔してる?」


「いえ、ちょうどよかった。これ見てもらえますか」


グラニータが板を差し出した。店の内装の配置図だった。入口近くに武器を並べる棚、奥に鎧の展示スペース、それから仕切りで区切られた採寸用の個室。細かいところまで考えられていた。


「いいね、これ」


「武器の棚はここに並べると、入ってきた客の目線に自然に入るんですよ。鎧は奥に置いて、じっくり見てもらう。採寸の個室は一番奥で、他の客から見えないようにします」


グラニータは板を指しながら説明した。


「デザインはミライさんと二人で決めます。そっちはお任せしてもらえますか」


「うん、任せるよ」


グラニータは少し拍子抜けした顔をした。何か言われると思っていたのかもしれない。板を抱え直すと、「では戻ります」と言って中へ消えた。


ミライがリュウジィの隣に来た。


「最近少しずつ笑うようになったの。最初は私たちのこと、疑ってたと思う」


「そうか」


「うん。少しずつ打ち解けてきてる感じがする」


ミライが図面を見ながら言った。こういう顔をする女だったんだな、とリュウジィは思った。


「じゃあ俺は戻るよ」


「うん、気をつけてね」


リュウジィは来た道を戻った。

夕方、ジョジョエンに戻ると、ハクさんが店の前の掃き掃除をしていた。


「ハクさん、新しい店、順調そうでしたよ」


ハクが掃除の手を止めた。


「左様で」


それから少し黙って、また掃き掃除を始めた。通りを行き交う人の声が聞こえた。夕方になると客足が増える。開店まであと一時間ほどだった。


「リュウジィ様」


「なんですか」


「三店舗目になりますよね」


「そうなりますね」


ハクさんは箒を壁に立てかけた。


「ジョジョエン、ジャンヌダルク、そして今度の武具屋。三つの店を個人店と言うのはどうかと?」


「えっ!どういう事ですか?」


「そろそろ商会を名乗っては如何ですか?」


「商会、ですか」


「対外的な信用が違います。仕入れ、商談、貴族との折衝、いずれも個人の店主より、商会の名のほうが通りやすい。規模が大きくなるほど、その差は開きます」


ハクさんは静かに言った。


「ハクさん、そういうこともよく知ってるんですね」


「一応は二店舗の支配人を任されてますからね」


それ以上、ハクは何も言わなかった。


「商会名、何にしましょうかね」


「それはリュウジィ様が決めることでしょう」


「言い出したのはハクさんなのに」


「提案するのが私の仕事です。決めるのはリュウジィ様の仕事です」


リュウジィは笑った。


「わかりました。考えておきます」


ハクは小さく頭を下げると、また箒を持って掃除に戻った。

リュウジィは店の前に立ち、夕暮れに染まる通りを見た。


ジョジョエン、ジャンヌダルク、そして今作っている新しい店。一年前、借金まみれで、空港で改造拳銃で撃たれて、この世界に転生してきた時には想像もしていなかった景色だった。


「商会か」


呟いた言葉が、夕暮れの通りに小さく溶けた。


お読みいただきありがとうございました。

もし気に入っていただけましたら、作品のブックマークや、下の星(☆☆☆☆☆)で応援をお願いします!次の更新の大きなエネルギーになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。