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46歳おっさんの形意拳が、異世界でチートになった 〜魔法も剣も届かない究極の拳法で、第二の人生を無双する〜  作者: 九条竜二


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第100話:異世界での一年の節目


 異世界に転生してから、ついに一年という節目となる月日が経過した。

 

転生した時、十九歳だったこの体も二十歳という節目を迎えている。中身の精神年齢に関しては四十七歳になってしまったわけだが、そうした年齢の重なりさえも、今の生活の中では遠い過去の出来事のように感じられる。


王都の夜は、相変わらず騒がしく賑やかだった。

 

ジョジョエンの鉄板の上でキングオーグの肉が焼ける香ばしい音が、店舗の扉を抜けて通りまで漏れ出している。開店からわずか一時間だが、店内はすでに満席という盛況ぶりだった。


ゼノンが山盛りの皿を抱えてホールを駆け巡り、ギノンが別のテーブルで客の注文を必死にこなしている。ホール担当のバッドの母が鉄板をフル稼働させるスタッフの動きに的確な指示を飛ばしていた。額に浮かぶ汗を白い袖で拭いながら動き回る姿には、一切の迷いも無駄も感じられない。

 

少し離れた場所にあるジャンヌダルクも、同様の活況を呈している。深紅のビロードのソファに貴族や商人が腰を落ち着け、キャストたちが客席を縫うように忙しなく動いている。

 

ママのリナが笑顔で常連客の相手をし、その傍らでは、男装したミライがフロア全体を静かに見渡していた。かつて高級娼館ロクメイカンで王都のスターとして名を馳せた彼女が、今はリュウジィの店の相談役としてそこにいる。リナにとってミライは、働く前から客を喜ばせる極意を相談していた頼れる相手であり、今では何でも話せる仲だ。男装していても隠しきれない華のある佇まいは、キャストたちの憧れであり、店を支える確かな存在感となっていた。

 

リュウジィは通りの端から、ジョジョエンの明かりを眺めた。

 

一年前、ここには何もなかった。あったのは膨大な借金と、二十七年続けた形意拳の技術と、空港のトイレへ向かう途中の廊下だけだった。

 

一人なら、とっくに投げ出していたかもしれない。けれど、今は違う。忙しそうに働く彼らの姿を見ていると、自然と胸が熱くなる。みんなが力を貸してくれて、支えてくれたおかげで今の店がある。自分一人では決してここまで辿り着けなかったはずだ。そう思うと、胸の奥から熱い感謝が込み上げてくる。

 

店の扉を開けた。キングオーグの肉が焼ける香りと、店内の客の喧騒が一気に押し寄せてくる。


「オーナー、今日も満席ですよ(ホールから顔を覗かせたバッドの母が、額に滲んだ汗を白衣の袖で拭いながら嬉しそうに笑う)」


「ありがとう、いつも感謝してる。困った事あったら言って下さいね」


「オーナーこそ(深々と頭を下げて挨拶を済ませると、すぐさまホールへと慌ただしく駆け戻っていく)」

 

バッドの母はそう言って、またホールの仕事へ戻っていった。その背中を見送りながら、リュウジィは少しだけ笑みを漏らす。

 

閉店後、ミライと並んで家への道を歩いた。夜風が緩く吹いている。王都の夜の喧騒が、少しずつ背後へ遠ざかっていく。


「この世界に来てもう一年か」

 

リュウジィが呟くと、ミライは静かに夜空を見上げた。


「そうね。あなたのいた世界とは、何もかもが違う一年だったでしょう?(夜空を見上げ、ふっと長く吐息をこぼして、ゆっくりと歩調を合わせる)」


「やり直しの人生だからね」

 ミライは少しだけ目を細め、隣を歩くリュウジィを横目で見て、艶やかに微笑んだ。


「出会ってからはまだ短いけれど、この店で働くようになってからの毎日、私にとっても濃密だったわ。数多の男たちを見てきた私だけど、あなたと出会えたことは、本当に幸運だったと思っているのよ(隣を歩くリュウジィを、少しだけ立ち止まってジッと覗き込む)」


「ミライがそう言ってくれると、自信になるよ」


「当然よ。ここまで来るのに、私も色々あったから。……今のこの景色を守るためなら、何だってできるわ。……悪くないわね、こういう毎日も(小さく肩をすくめて前を向くと、楽しげな足取りで歩き出す)」

 

ミライが穏やかに微笑んだ。リュウジィも静かに笑みを返す。二人の柔らかな声が、静かな夜道に溶けていった。

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