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Tricky Duo + 1  作者: 薄桜
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9/12

2011年3月7日

・・・先に断っておきます。

悪ふざけ全開です!


ではどうぞ。

「なあ、お前の分は三つだよな、どういう配分なんだ?」

高井戸は、印刷した注文内容確認のメールを俺の前に置いて、冷ややかな視線を向けている。わざわざご丁寧な事に、注文数にはピンクのマーカーで線が引かれていた。

「・・・三つだな、それがどうした?」

内面の苛立ちをかくして、わざと事も無げに言い挑発する。

「俺も高井戸も、先輩と母親だけだ。」

横田は表情をどこかに落としたのか、気だるそうに言葉を吐き出す。

「そうか、いいんじゃないか?」

恩に報いるのも、親に尽くすのも悪い事では無い。

「笹野・・・お前は? 一つは母親だろう?」

高井戸は、身動きの取れない俺を覗き込む。またしても放課後に無理やり・・・以前と同じ空き教室に連れて来られた。今回は用意周到にもロープが準備されていて、上着を剥がされ、シャツの前を開けられて椅子に縛り付けられている。

・・・何事も形からだと笑いながら、二人に押さえつけられ、縛り上げられた。

・・・当然の事ながら俺の機嫌は悪い。

「そうだな。」

一緒にチョコフォンデュはやったが正確には貰った覚えは無い。しかし、こいつらが準備するというのだから、俺も買っとくべきかな・・・といった程度の事だ。

「そして・・・もうひとつは、幼馴染。」

底の知れない深い色を湛えた目で俺を見つめる高井戸は、重々しく口を開く。

だが、それに答える義務はない。

「背中を踏ませたとかいう女子中学生だな。」

「踏ませてない、蹴られたんだ! 俺そんな趣味ねーよっ!」

「・・・肯定だな。」

くっ・・・やられた。つい全否定したくて叫んでしまった。横田がいやらしい笑みを浮かべ、半端な状態で俺の首にかかるネクタイを引っ張る。

「では、残る一つは誰だ? 自分のだとかいう、小娘の言い訳は通用しないぞ?」

小娘って何だよ? 秘密結社の尋問の様相を呈してきたこの場に・・・悪ノリ全開の二人に屈してしまわないように、後ろ手にされた手の甲に爪を立てた。

状況に流されるな、負けるな、しっかりしろ俺!

頭の中でそう何度も何度も繰り返し、自分を奮い起こした。

この状況からは一刻も早く開放されたいが、だからといって言いなりになり、好き勝手にされるのも嫌だ。毎度毎度尋問だと言って、こんな扱いを強いる奴らに腹立ち、そして自分が情けない。

どうにかして、この場を切り抜ける方法を考えなければ・・・


「お前等いい加減にしろっ!!」

唐突に大声を出すと、二人は一瞬怯んで俺を凝視した。

「・・・何だ急に。」

「俺にこんな事をしたって、何にもならないと思わないのか!?」

「いや、我々は残る一人の事を聞き出せれば、それでいいんだが・・・。」

俺が逆切れしたと勘違いしたのか、横田があっさりと揺らぐ。よし、このまま俺のペースに巻き込めれば・・・

「・・・で? 聞き出してどうする? それでお前らは何か得をするのか?」

「いや、別にないが・・・答えによっては逆にへこみそうだけどさ。」

よしよし、横田は何かの役から素に戻り始めた。

「お前こそ・・・何故そこまで隠そうとする? 隠したい理由は何だ? 何かやましい事でもあるのか? 我々はただ知りたい・・・そう、それだけなのだ。」

くっ、さすが高井戸はしぶといな。何になっているつもりかは分からないが、低めの声を堂々と張り上げ、最後はやんわりと言葉を締めた。

高井戸を落とすためには、どうやって責めればいいのか・・・次の言葉を捜して逡巡していると急にドアが開いた。


「何やってんだ?」

部屋を覗いて、明らかに呆れを含む声を発したのは岡崎先生だった。

「先生こそどうしたんですか?」

俺を隠そうとして横に移動しながら高井戸が質問を返したが、どう考えても既に手遅れだ。慌ててネクタイから手を離した横田もしっかり見られたはずだ。

「お前らにどうしたとか、言われたくも無いな。お前等1年だよな?」

その目は当然俺に向けられ、半端なく痛い。嘲りの瞳に、嘲笑の口元、容赦のない蔑みのオーラが全身を包んでいて、背筋が凍るような悪寒が走った。

「騒いでる奴等がいるからどうにかしてくれって、言ってきた子がいてな、おかげで俺が様子を見に来るハメになったんだ。マシな理由を期待したいんだが・・・無理だよな?」

「違うっ、変な趣味じゃ無い!! 俺は・・・」

拉致られたんだ! ・・・と続けたかったが、横田に口を塞がれた。

「先生、縄抜け、縄抜けです。手品の練習してたんですよ!」

珍しく高井戸が慌てふためいで適当な事を言うと、

「ほぉ、じゃあできるようになったら是非見せてくれ。・・・それより、ここを使いたいってのがいるから、とっとと空けてやってくれ。」

明らかに信じていない口調だが、俺達は救われた。見に来たのがこの先生でよかった。さすがに日頃から面倒な事が嫌いだと豪語しているだけはある。俺の姿に何の意見も叱咤も無く、用事は済んだとばかりに背を向けたのだ。


その後、高井戸と横田は、まだやり足りないと愚痴りながらも俺を解放してくれた。

揃って教室を出ると、少し離れた所に女の子が数人いてこちらの様子を窺っている。あれが先生の言っていたこの部屋を使いたいっていう子達なのだろう。

・・・ただ彼女達は、皆一様に怪しいものを見る目付きをしており、何だか俺はとても居た堪れない気分になり、一刻も早くその場を逃げ出した。


*--*--*--*--*--*--*--*


ラスク1つ630円。3つで1890円、それにプラスして振り込み手数料420円がなぜか俺持ちだと言い張りやがって、2310円徴収された。

荷物をまとめて皆で駐輪場に向かったが、疑いが晴れるまで俺を仲間と認めるわけにはいかないと、いつもの芝居がかった調子でほざき、二人は自転車をすっ飛ばしてすぐに見えなくなった。

一人残された俺は、前カゴにカバンを放り込んで自分の手首をさすった。そこには見事にロープの模様が刻み込まれ、赤く色を変えている。

・・・確かにネクタイの方がマシなんだな。こんな事自分の体で実験したくなど無かった。おまけに自分で付けた爪の痕が赤く腫れて痛々しい。結局その場の雰囲気に飲まれ、馬鹿な真似をしたものだと後悔しながら傷を舐めると、ヒリヒリと少し痛んだ。

大きく息を吐いて、改めて考える。

・・・何故俺はあいつらと友達付きあいを続けているんだろう? 最近のひどい扱いを考えると、そろそろ見限ってもいいんじゃないか?

一人でイライラと考えていると話し声が聞こえ、慌ててシャツを引っ張り手首を隠した。もし誰かに見つかりでもしたら・・・

いや、もしあの教室の外にいた女の子達、そして、考えたくも無いが岡崎先生から、俺に変な趣味があるとかいう類のどうしようもない噂が広まってしまったら?

・・・そうなれば恥ずかしい所では済まない!

きっと生きているのが辛くなる・・・やはり、あいつらとの関係を見直すべき時なのかもしれない。


*--*--*--*--*--*--*--*


俺は、嫌な事を頭から追い出すために、本来考えなければならない事で頭をいっぱいに満たした。残額2690円・・・それを一体どうするかだ。

このまま懐に収めてしまうのも手だが・・・

自転車を漕ぎながら、半額以上を横領する事のシュミレーションをしてみたが、どのルートでもバッドエンドにしか辿り着きそうにない。

母さんにさえ気付かれなければ問題は無いのだが、時々家に来る二人から直接ばれてしまう可能性は非常に高い。家に帰ったら何故か二人がいて、親と仲良く世間話をしているってのは反則だと思う。渡した物の金額が安過ぎやしないかと、絶対に後から言われるのがオチだ。

諦めて追加で何か・・・と思った所で、一体何を渡せばいいものか・・・

プレゼントならば・・・花か?

・・・って無理無理、花ってどこのキザ野郎だ?

他は。アクセサリーにブランド物?

ってそんな金ねーよ!

・・・いかん、俺かなりテレビやCMに毒されてるな。


結局何も思いつかないので、駅で自転車を停め、花壇の縁に座って市場調査をする事にした。・・・偉そうに言ってみたが、ただ歩いている人を眺めているだけだ。

やはり女の子はアクセサリーが好きそうだ。耳にピアスが光る人が多いし、首にも色々下がっている。でもそれは俺には無理だ。金の問題もあるし、例え安いやつだとしてもセンスと・・・レジに持って行けないという問題がある。・・・どうせ俺はチキンだよ。それにあいつらはピアスの穴なんか開いてない。

他は・・・改めて観察すると、メールしながら歩く人の携帯に、光るストラップが揺れていた。

あぁ、まぁあれくらいなら・・・いけるかもしれない。

膳は急げ・・・だ。こういう事は、気の変わらないうちに、勢いのあるうちに済ましてしまう方がいい。

俺は勢いをつけて立ち上がると、駅に併設するショッピングセンターへ向かって足を踏み出した。

ロープで縛るとどうなるんでしょうね?

すみません、ノリで適当に書いてるので。

あ、別にSM用の手入れのされたロープを使ってるイメージではないです。

(この変の知識は、甘詰留太先生の「ナナとカオル」に因ります)

ホームセンターに売ってるようなやつなので、きっとチクチクすると思います。

ちなみに、高井戸と横田のどちらが準備したのかも、特に決めておりません。

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