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Tricky Duo + 1  作者: 薄桜
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10/12

2011年3月14日

ホワイトデー当日です。

ここで、やっと真優とのぞみが出てきます。

3月の三部作の最終話です。


ではどうぞ。

問題がある。そう、非常に大きな問題だ。


『二人にどうやって渡すのか?』という根本的な事だ。


机の一番下の引き出しを開けると、青い包み3つと小さな赤いビニールの袋が2つ・・・鮮やかな色がはっきりと目に映る。それを眺めながら溜息をつくのは、これをここに収めてから何度目になるのだろう?

あいつらはまだ中学生で当然学校が違う。まぁ卒業間際の今頃は学校に行く事も少なくなってるだろうが。

それに、あいつらは携帯なんて持ってないから、ダイレクトに本人に連絡をつける事ができない。

おまけに家の電話番号も知らない。

・・・学年の違う幼馴染なんて、そんなもんだよな。


いや、本当は答えは分かってるんだ。


家は知っているのだ。

直接家まで持って行けばいい。そう、思い悩む事など無い・・・はずなのだ。それ以外の選択肢が無い事をよーく分かった上でぐずっているだけだ。

昔は普通に遊びに行けたけど、何年も間が開いてしまうと躊躇いの方が大きくなった・・・そういう事だ。

踏ん切りのつかないままズルズルと過ぎ、当日に・・・ホワイトデーの日が来てしまった。渡さなければ無駄になるし、過ぎてしまうと、もうきっと渡せなくなる。家に行く行かないではなく、どうにかして渡してしまわなければならないのだ。その事実は俺がいくら悩んだ所で何も変わらない。

朝っぱらからそんな事をしているうちに、当然時間は過ぎて家を出なければならない時間を少し過ぎた。

大きく息を吐き出して、とりあえず包みと袋をカバンに入れると、潰れないように気をつけて抱え部屋から出た。


*--*--*--*--*--*--*--*


台所でテーブルの上に置いてある弁当を取りカバンに入れると、代わりに青い包みを手にする。母さんがこっちを見てないのをしっかり確認したうえで、急いで取り出し同じ場所に置くと逃げるように家を出た。


・・・よし、ミッション完了。これで1つは片付いた。


*--*--*--*--*--*--*--*


昼休みに高井戸と横田は惚けた様子で戻ってきた。商品が届いた時は「同じ物を同じ人に渡してどうする!?」と、勝手に確定ボタンを押した俺を責めたが、こちらの責になる返品は送料が倍かかるからとそのままで、少し前に渡しに行くと言って教室を出る時には、言いようの無い顔をしていたのだが・・・今は真逆で気持ち悪い。

「お前等、何か悪いものでも食ったのか?」

夢見るような不似合いな目付きをしている横田は、か細い声を出した。

「・・・葵様と話した。」

「はっ?」

「大垣先輩居なかったから、代わりに葵様が預かってくれたんだ!」

高井戸は、横田よりしっかりしているが、テンションは無駄に高そうだ。

一瞬何の事か分からなかったが、思い出した。こいつらが心酔している美人で有名な2年の先輩だ。これは下手につつくと以前のように、二人が熱く語りだして止まらなくなる惧れがある。

「よかったな。」

とだけ声をかけて、二人に同情の目を向けた。

きっと幸せ過ぎて脳ミソが溶けたんだな。


*--*--*--*--*--*--*--*


「あー、本当だ功くんだ。大きくなったのねぇ、あ、ごめんね・・・のぞみ、真優ちゃんとどっか行っちゃったのよ。」


・・・不発。


「功ちゃん? 何年ぶりかしら・・・最近また真優が迷惑かけてるみたいで悪いわね、それに、真優どっか行っちゃっていないのよ。せっかく来てくれたのに、本当にごめんね。」


念のためにこっちにも来てみたが、やっぱり無駄足だった。


授業中に色々シュミレーションして・・・覚悟して家まで行ったのに! 結局二人とも留守で、久しぶりに母親と話をしただけだった。

どこかにいないものかと、少しキョロキョロ見回しながら歩いてみたり、近所の店を覗いてみたが、どちらの姿も見当たらず。

・・・諦めて帰途に着き、玄関を開けると二人の物らしい靴が揃えて置かれていた。

「くっそ、またこのパターンかよ・・・。」

へたり込みそうになるのを壁に手をついて何とか耐え、気力を振り絞って上がると、

「おそーいっ!!」

のぞみのデカイ一声に出迎えられた。


「で、今日は何しに来た?」

今までの苦労の分を上乗せして険悪に問うと、

「何って、お返し取りに来たに決まってるじゃん。」

のぞみも俺に負けじと、当然だと胸を張る。

あのフォンデュで、結局俺がかなりの準備をしたあの内容で、当然返しをもらえると思っているこの神経が素晴らしい。

居間から俺の部屋に場所を移し、二人は今テーブルの側に座っている。ちなみにこたつはもう片付けてしまった。片付けて仕舞ってから何日か寒い日があり後悔しなかったわけがないが、もう一度出すのは面倒なのでそのまま今に至る。

そして今は、勉強机のイスに胡坐で座り二人を眺め下ろしている。

「・・・お前等、前向きだよな?」

「当たり前だよ。後ろ向きな事考えたって、いい事無いんだよ?」

のぞみは即答で俺を諭すような事を言ってのけてくれる。

まったく俺が悩んでたのは何だったんだ? 後ろ向き全開で一体何日過ぎてしまったのか・・・つーか、取りに来るなら先に言っておいて欲しかった。激しい疲労感を感じて机に片肘付くと、

「ほらほら、早く頂戴ってば、功くんお母さんにあげたぐらいなんだから、準備してるんでしょ?」

のぞみは両手を突き出して、嫌な催促の仕方をしてくる。

溜息を吐いて、カバンから青い包みと赤いビニールの袋を出し、袋に付いた印を間違えないように確認して、のぞみの手の上に乗せた。

「やった、功くんありがと!」

・・・ここまで素直に喜ばれると、悪い気はしないな。

「ほら、真優も。」

同じように真優にも渡すと、

「ありがと・・・」

と、消え入りそうな声で言われた。そういえばのぞみと違って大人しい。

「真優は全然喋ってないな、風邪でもひいてんのか?」

そう問うと、思いっきり首を横に振って、慌てて否定した。

「違うっ! 大丈夫、全然元気だからっ!」

「あぁ、そう・・・ならいいけど。」

「あーきれい、これのぞみの『N』?」

残りの金でキラキラ光るイニシャルのストラップを買った。駅ビルにある雑貨屋をいくつか見て回って選んだ物だ。

「ほらほら、真優ちゃんも開けて開けて。」

のぞみに急かされて真優も袋から中身を取り出すと、やっと表情が明るくなった。

「やっぱり『M』だ。」

結局どんなのがいいのかよく分からなかったので、店員さんに勧められるままそれになった・・・とは、言わない方がいいんだろう。

「・・・きれい、ありがと。」

再び真優に礼を言われ、気恥ずかしくなった俺は、適当に返事をして顔を背けた。


「明日はね、卒業式なんだよ。」

俺が帰ってきてから30分もしないうちに、渡したチョコのラスクを全部平らげたのぞみと、1個だけ食べた真優は別れ際にそう言って家に帰っていった。

読んでくださった方、ありがとうございます。

いかがだったでしょうか?


恥ずかしがり屋さんは、お返しを「面倒だ」と言って嫌がります。

そんなうちの旦那は、数日遅れて照れ隠しに笑いながら「これ」って渡してきます。

ここ数年、同じパターンです。

・・・さて、今年はどうだろう?


同日同時刻にUPされる美晴の方の「Blanc jour」と少々絡んでます。

7日の岡崎先生もそうですが、これの渡しに出かけた高井戸と横田。

あとは、7日の花をプレゼントするキザ野郎。

えー、一応対比として是非入れなければと・・・もう、ノリノリで。

(いちいち解説するなって?)


活動報告でも書きましたが、このシリーズは4月の話でおしまいのつもりです。

で、今現在頭にあるのは2話の構成です。

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