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Tricky Duo + 1  作者: 薄桜
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4/12

2011年1月7日

先に謝っておきます。

暴走しました。調子に乗りました。楽しかったです!

では、お話をどうぞ。

ああ、とうとう休みが終わってしまった。

神社に連れて行かれてからどうもすっきりしない。背中の痣はまだ消えてないが、あごのかさぶたはもう少しだ。じっとしているとどうしてもあの日の事を考えてしまうので、普段なら乗り気のしない宿題の存在が非常にありがたかった。

おかげで余裕をもって新学期を迎えられた。きっと人生初だ。しかし気分は冴えない。

顔を洗って、歯磨きをして…鏡の向こうの自分は、気分と同じで何とも冴えない顔をしている。

少しでもマシになればと、今日は丹念に髪を整えてみた。


「笹野珍しいな、何でニット帽なんだ?」

「そういや、この間も被ってたよな、」

校舎裏の駐輪場で横田と高井戸に会った。

「あぁ何となくな、寒いしさ。」

結局出がけに悩んで被って来た。もちろん整えた髪は見る影も無い。

ちなみにマフラーも有り難く使わせて貰っている。

…そりゃ、自分でも女々しいと思う。が、あいつらがくれた物だし、物に罪は無いし、たぶん悪いの俺だし、使わないのはもったいないし…。頭の中で色々と言い訳を並べ立てていると、高井戸が帽子を引っ張って言った。

「お前その帽子とマフラー、やたらと似合うな。」

「…そうなのか?」

手で追い払いながら、驚いた。

「何驚いてんだ?」

「あ、いや…何でもない。」

福袋の余り物に新春セール…冗談めかした真優、どこが本当でどこが冗談なのだろう?


「おー笹野、お前4日の朝、女の子二人と歩いてなかったか?」

教室に入るなり平田に声をかけられた。誰もいないと思ってたのに…やっぱりどこに人の目が光っているか分かったものじゃない。

「さ、さあ…人違いじゃないのか?」

「そうか?今の格好とほとんど変わらないヤツだったんだがな、」

「…い、いや、よくある服だよ。」

「さーさの~? 後で事情聴取な。」

後ろから横田に首を絞められた。


新学期の朝礼もHRも終わり、新年初日の学校はあっと言う間に終わった。とっとと帰ろうとしたが力ずくで阻止されてしまった。

「事情聴取するって言ったよな?」

「逃がしはしないよ? 例え逃げたとしても、我々は君をどこまでも追いかけるだろう。」

高井戸が俺に指を刺してポーズをつける。

「何の芝居だ? それにここまでする事は無いだろう?」

ネクタイで両手首を縛られて空き教室に引っ張って行かれた。終わったばかりの人の多い廊下を引き回されたわけなんだが・・・さすがに途中衆人環視は堪えた。

「ふふふっ、私もどうせなら女性にやりたかったよ!」

・・・だったらすんなよ。

「目隠しもいいよな。」

幸か不幸か、話がずれていく。このまま俺の事は忘れてくれないだろうか? そう思ったがそう上手く事は運ばない。

「さて余談はここまでだ。」

眼鏡をかけていない高井戸が中指で眼鏡を直す振りをする。こいつ細かいな…。

「さあ笹野、詳しく聞かせてもらおうか?」

横田は内ポケットから生徒手帳を出した。こいつは警察官のつもりらしい。

「ん?それ何だ?」

手帳を出す際に付いて出た何かが上着から覗いた。話を逸らしたい俺はこれを利用する。

「あ? あぁこれか、これは葵様の写真だ。」

様って何だ?

「お前、今度も買ったのか!?」

「ふっ、こんな素晴らしい写真を買わなくてどうすると言うのかね?」

まだ何かの役に成りきった横田はもったいぶって写真を取り出した。

「西の都でエキゾチック体験、秋の錦よりもあなたは綺麗ですin修学旅行!!」

やたらと気合いの入った台詞はもちろんスルーして、掲げられた写真を眺めると。花魁姿の先輩が艶やかに微笑んでいた。これはある意味すごいんじゃないのか? 隠し撮りではなく本気でノリノリのピンナップ写真。親友が売りさばいているという噂に信憑性が出てきた。つーか修学旅行でこんな事してたのか?

「どうだ素晴らしいだろう? 太夫だぞ? 妄想のネタが尽きんっ!」

・・・本当に親友なのか?

横田の言葉に、少し思い直した。

「…そりゃ良かったな。」

「私も買っておくべきだったーっ! 小遣いを惜しんでサンプルを見ずにいたが、こんなに後悔する事になるとはっ!?」

高井戸が頭を抱えてうずくまった。

「それなら頼んでみるといい、あの方はきっと売って下さるさ。」

「そうだな、もうお帰りになっただろうか?」

二人手を取り合って、どこか遠くを見上げている。

こいつら演劇部にでも入れば、いい仕事ができるんじゃないか?

しかし、何でそんな物言いなんだ?

覚めた目で騒ぐ二人を眺めていると、突然こっちに矛先が向けられた。

「笹野は乗ってこないな、興味が無いのか?」

真顔で横田が問う。あのノリにどう着いて行けというんだ?

「あ? そりゃあの先輩は美人だと思うが、俺の趣味じゃねえな。」

何だか持てはやされているが、俺はまったく興味が無かった。

「ほほう、では君の好みとは如何様なものなのかね?」

高井戸のキャラが本当に分からない・・・が、話の持って行き方を間違えたのは分かった。

「俺の好み…か、」

ふいにあの二人が頭に浮かんだ。

っ!?

「どうした、急に赤くなって?」

「…まさか特定の人物の顔が浮かんだのではなかろうな?」

横田め、こんな時だけ鋭いな。

「そ、そんなはずないだろ?」

取り繕ったつもりだったが、そうでもなかったらしい。

「あー、これから笹野功一の裁判を執り行う!」

高井戸が高らかに宣言する。だからキャラが分かんねーつーの!

「裁判って何だよ!?」

「4日に女子と歩いていたという目撃談と、背中のヒールの足跡は同日の出来事である。さて、この二つにはおそらく関係があると推測される。・・・そうだろう、横田君?」

・・・ひょっとしてホームズのつもりなのか?

「ヒールの足跡だと!?」

横田にも余計な情報が与えられた。

「笹野・・・君が言いたくない理由は分からなくも無い。何故ならば、女子に蹴られるという無様な醜態を晒したのであろうからして・・・例え原因が君にあろうとも、同情しないわけではない。だがしかし、我々には真実の究明という崇高な使命があるっ!」

「・・・ほらっささと吐いて、楽になろうか?」

あぁもう益々面倒な事になってきた。

「何が楽にだ? どう推測してんだ? 証拠も無く勝手な事を言うな・・・脱いでた時に踏まれたって言っただろ?」

「ほう、そうかね? では背中を見せてもらおうか? 横田君彼を捕まえておいてくれたまえ。」

あ、墓穴を掘ってしまった・・・それはまずい。まだ紫の足跡がくっりき残っているのを今朝確認した。


・・・両手を縛られているのは結構自由が利かないもので、足を捕らえられてひっくり返り、無理やり背中を引ん剥かれた。

「ほーら見てみたまえ、私の推理は当たっていただろう?」

「笹野、観念してこの足跡について吐きやがれ!」

「あーもう、うるせーっ! 近所の中学生に蹴られたんだよ!!」

「ふっ、吐いたな・・・では、その中学生と君の関係は?」

横田が足の上に乗っかったまま聞いてくる。

「・・・昔からの知りあい。」

「それは、俗に言う『幼馴染』という関係だな?」

「わざわざその言葉に置き換える必要がわからんが、そうだろうな。」

「・・・そうか、我々は君の事を買いかぶっていたよ。」

「笹野は違う星の人間だったんだな・・・。」

「はぁ?」

横田が俺の上から下りて立ち上がり、高井戸と一緒に無言のまま部屋から出て行ってしまった。

何を考えてるんだかさっぱりよく分からんが、せめてほどいてから行けよ・・・。

口を駆使して一人でネクタイを解くと、暴れたせいなのか手首には赤い線がくっきりと浮かんでいた。

ったくネクタイって痕つかないんじゃなかったのか?

それにしても俺、最近傷だらけになってないか?

自嘲の笑みが自然と浮かぶ。

あの二人がうちに来てから、おかしな事ばっかりだ・・・。


教室に戻ると誰もいなかった。ただ俺の荷物だけがポツンと残されていた。

あの二人は、薄情にもさっさと帰ってしまったらしい。

いや、今日はその方が好都合か。

・・・俺も帰ろう。どっと疲れた気分で早々に学校を後にした。


玄関を開けると女物の黒いローファーが一足、揃えて置かれていた。うちの家族は三人で母さんの物では無い。

居間を覗くと、制服の真優が母さんとこたつでお茶を飲んでいた。

「あら、お帰り。」

「・・・おかえりなさい。」

母さんとは楽しくやってたみたいだが、俺に気付いたとたんに強張った表情になる。

たぶん、それが面白くなかったんだと思う。言いようの無い感情が湧き上がってきた。

何をしに来たのか分からないが、俺には関係ない。

「・・・ただいま。」

それだけ言って、自分の部屋に向かった。


「功ちゃん、いい?」

着替えている途中で真優の声がした。

「ま、待て、もうちょっとだけ待て。」

なんつータイミングで声をかけてくるんだ?

制服をハンガーにかける前に、急いでジャージのズボンを履いた。

「あー、もういいぞ。」

結局、制服は机のイスにかけられたままだ。

戸が開いて真優が姿を見せる。一歩入って後ろ手で戸を閉め、もう一歩進んで立ち止まった。そしてずっと下を向いたままで黙り込んでいる。

「今日は一人なんだな。」

「・・・うん、」

そして会話は続かない。

俺の部屋が重苦しい空気に支配される。

「・・・で、何しに来たんだ?」

「あ、うん・・・」

再び続く沈黙。

二人とも立ったままで、非常に落ち着かない。

「・・・真優、」

一言文句でも言ってやろうかと口を開きかけると、真優が慌てて話し始めた。

「功ちゃん、背中・・・と顎・・・大丈夫?」

「あ、あぁ、別に・・・。」

「ごめんなさい、あの時すごく腹が立ってたから・・・つい蹴っちゃって・・・」

深々と頭を下げられた。

謝られるとは思ってなかった。

「・・・あ、べ、別にいいよ、どうせ俺が怒らせたんだろ?」

「うん。」

・・・正直だ。真優は素直に頷いて続けた。

「だって・・・ずっと機嫌悪いし、大きな声出してのぞみ泣きそうになるし・・・楽しく遊びたかっただけなのにさ・・・。」

やっぱり俺が悪かったんだな、理由が聞けたおかげですっきりした。

「俺も悪かった。周りばっか気にしてイライラしてたし・・・。」

あんなに気にしても結局からかわれた。骨折り損という言葉を身をもって実感した。

「うん、おあいこだよね。」

やっと笑顔になった。

「そうだな。」

別にやましい事なんか無いんだから、こそこそする必要は無いよな。

「あ、マフラーありがとな。ちゃんと礼言って無くて悪かったな。」

ふと思い出して先日の礼を言った。あの時は迷惑量の前払いとか言ってたからそんな気になれなかったんだが、貰ったんだから礼は言っておくべきだろう。

「ううん、使ってくれててうれしかった。」

やましい所は無いが・・・この笑顔は凶器だ。

「あー、帰るなら送ってってやるぞ。」

わざわざ詫びに来てくれたんだ、このくらいは・・・な、

そんな軽い気持ちで言ったつもりだったのだが、

「うん、ありがと。」

嬉しそうな真優の顔を見ると、何となく罪悪感を感じた。


ほら、暴走してたでしょう?(笑)

男三人の会話、楽しくて調子に乗りました。

読んでいただき、本当にありがとうございました!!


前回の神社名で気付かれた方がいるかどうか分かりませんが、

葵様は、もちろん別の話に出てくる、安田葵です。

そして親友ことあの方とは、もちろん大垣美晴。

同じ街で、同じ高校が舞台です。(設定の使いまわしって事ですね!)

ただし、家は線路を挟んで北側と南側で離れております。

笹野くんの家は北側にあり、毎日線路を越えて登校しています。

あ、そんな詳細な設定要りませんよね(^^;

修学旅行の話はそのうち~


この話の次は、たぶん2月14日です。

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