2011年1月4日
あけましておめでとうございます。
今年最初の更新はこのお話です。
携帯のメモ帳昨日にこつこつ書いて、何とか間に合いました。
それでは、功一くんの不幸話(本人はそう思っている)をどうぞ~。
「功くん、あけましておめでとー。」
「功ちゃん、今年もよろしく。」
のぞみと真優がいきなり俺の部屋の戸を開けた。
こたつで一昨日買ったばかりのゲームに向かっていたのだが・・・余所見をしたせいで仲間が一人倒れていた。
「・・・色々言いたい事があるが、この戦闘が終わるまで待て。」
格闘タイプの女の子を甦らせ、コンボ、秘奥技でトドメを刺した。フィールド上だったのでさっさとセーブし、入り口に立ちっぱなしの二人に向き直った。
「何しに来た?」
どうせ母さんが勝手に上げたんだろう。29日までは毎日うちに来ていた。根気よくエロゲーに勤しみ、やっと終わったと思っていたのに・・・三ヶ日が終わったとたんに姿を見せた。
「神社行こうよ。」
「多智高神社に合格祈願。」
字面だけでもご利益のありそうな名前の神社は、もちろん学問の神として珍重されている。受験シーズンになるとこの辺の学生はたいてい一度は足を運ぶ。むろん俺も去年は行った。が今年は行く必要が無い。
「いやそれ、俺関係ないし。それに初詣ならもう行ったぞ。」
ちなみにそこはうちから一番近い神社であり、大晦日から元旦に変わる瞬間をそこで迎えた。ついでに言うと男ばかりの三人でだ。その後ファミレスに流れ込んで時間を潰し、高台から御来光まで見てきた。
新年の行事のやる事はやった。後はお年玉がもっと貰えれば言う事が無い。
「初詣なら私達も行って来たよー?」
「じゃあいいじゃねーか、何しに行くんだ?」
「だから、合格祈願だってば。」
「何回行ったっていいじゃん!」
そんな事に時間を潰すより勉強した方がよっぽど有意義じゃないのか? つーか、この前は余裕って言ってなかったか?
「だから、俺関係ねーじゃん。」
「いいの、いいの。」
「ついでだってば。」
俺には拒否権というものは無いのか?
「そうだ、これ。」
ほらと、突然何かを被せられた。
「何だよ、これ」
驚いて脱いで見ると、黒地にノルディック柄のニット帽だった。
「あげる。」
のぞみが笑って言った。
実は少しドキッとしたが、そんな事は内緒だ!
「何で?」
「福袋のいらないやつ。」
ああそう・・・何だかがっかりしたのも内緒だ。
「で、私からはこれ。」
そう言って首にモスグリーンにいくつか細い白いラインの入ったマフラーを巻かれた。顔のそばで手が動く・・・これはかなりドキドキする。
「こ、これも福袋か?」
「ううん、新春セールで買ってきた。」
何で?
「貰う理由が無いんだが?」
「これから連れ回す迷惑料の前払い。」
やっぱり拒否権は無いのかよ・・・
「って言ったらガッカリする?」
クスクスと笑う真優は楽しそうで・・・何か無性に腹が立つ。
「上着これでいいんだよね?」
真優がハンガーから黒のダウンジャケットを外して、俺の肩に掛けた。
「さ、行こう。」
のぞみが俺の腕を引っ張る。
「分かったよ!行きゃいいんだろ、行きゃぁ!!」
こうして俺は、ジャージ姿のまま有無を言わさず家から連れ出された。
三ヶ日を過ぎたら神社に行くやつなんか激減する。だからそうそう知り合いに会う事も無い・・・よな、たぶん。どうせ神社まで徒歩で10分くらいだし、そう自分を言い聞かせていた。
喋りっぱなしの二人の話を聞き流しながら、一番後ろを付いて歩く。
のぞみはベージュのコートに赤いチェックのミニスカート、腿まである黒いソックスに茶色いブーツ。
真優は短めの白いコートに膝丈のグレーのチェックのズボン、柄の入った黒のタイツに黒のブーツ。
ジャージの俺と違って、こいつらはしっかり出かける格好だよな。
そのせいなのか、こいつらと外を歩くのが久しぶりだからなのか、どうにも所在無い気分を感じ、無性に人目を気にしてイライラしていた。
年の変わる瞬間は鳥居からはみ出ていた行列も今は皆無で、神社の人も社務所にいるものか、本当に今は誰もいない。
「貸切だね~」
のぞみが嬉しそうに鳥居をくぐった。
木という木に結び付けられた白い紙切れと、置かれた箱に積み上げられた古い破魔矢や御守りが正月らしさを演出しているが、それ以外は普段の誰もいない神社にしか見えなかった。
「功くん、おみくじ引いた?」
のぞみは面白くもない話題を振ってきやがった。
「・・・ん-、大吉。」
でも書いてある事はたいして良く無かった。おかげで横田と高井戸は大笑し、コケにしてくれた・・・自分達だって大した結果じゃなかったくせにだ。
「お揃い~!」
のぞみが跳ねる。
「私も、もちろん大吉。」
真優は平然と言ってのけた。
「もちろんって、当然なのかよ?」
「うん毎年大吉だから。」
・・・嫌みなヤツだな。
今年は大吉だったが・・・まぁ微妙な結果だけど。去年は小吉、これまでだって大吉なんてめったに出てきた事がない。勝ち誇ったような真優を見ていると無性に運定量説を支持したい気分になった。
「それより、合格祈願すんだろ? とっととお詣りして帰るぞ!」
面白くも無い話題をとっとと切り上げて、二人を急きたてた。
長い事いたら誰かに見られるかもしれない。それが気になって仕方がなかった。
それは俺にとって嬉しい事ではない。ましてやそれがクラスのヤツだった時には、その後教室で身の置き場が無くなる。
「そんなに急ぐ事ないじゃん。まだお昼にもなってないよ。」
真優がムッとして反論してきた。
「あーっ、お昼食べに行こうか?」
そしてその言葉を受けて、のぞみが余計な提案をした。
なんでそうなるんだ!?
「俺は帰る!!」
つい大きな声が出てしまった。
外に出てからずっと周りを気にし続けている俺には、もう余裕がなかった。
そのイライラがそのまま声に乗った。
「・・・ごめん。迷惑だった?」
のぞみはすっかりしょげて、今にも泣き出しそうになっている。
その姿に俺は気が動転し、かける言葉が見つからない。
「ぁ、いや・・・」
結局、言葉とも言えない濁したものしか出てこず・・・せめて謝ればいいのだろうがそれも何だか躊躇されて、結局動けなかった。
「功ちゃんの、バーカっ!!」
真優が大声を出した。
そして突然、背中に衝撃と痛みを感じて前のめりに突っ込んだ。
膝をついたもののそれでは止まらず、ポケットに突っ込んでた両手は自分を守る事ができず、顎を地面にぶつけてようやく止まった。
「あ・・・。のぞみ・・・帰ろう!」
「え、だってまだ・・・」
「いいから!」
体を起こして顎を撫でると砂がパラパラと落ちた。細かな擦り傷がチリチリと痛み、後頭部がジンジンと響く。
俺は何が起こったのかよく分からないまま、ただ前を行く真優と、真優に引っ張られて行くのぞみの後ろ姿を見送るしかなかった。
あの二人と一緒にいるのが・・・たぶん場違いな感じがして、ずっと落ち着かなかった。
あいつらがどうしてあんな事を言い出したのか俺には分からないし、どうして神社に連れ出されたのかもよく分からない、それにどうして毎回付きまとって来るのか・・・それはさっぱり分からない。本音としては別に嫌なわけではないのだが、どうしていいのかが分からない。結果として二人のペースに流されている。
・・・つまり、今日は一体何だったんだ?
「おっ笹野。どした元気無いな? その顎どした?」
帰りに立ち寄った本屋で、目的も無くブラブラしていたら高井戸に会った。
「・・・別に。」
そのまま帰る気分ではなかったので何となく寄っただけなのだが、どうしてこんな時にこいつに会うのか・・・新年を一緒に迎えた仲ではあるが、だからこそ理由は話せない。
「背中に足跡付いてるぞ。」
・・・げっ、マジか!?
「これヒールだよな?」
真優のやつ少し踵の高いブーツ履いてたよな・・・。
体温が上がり嫌な汗が出てきた。
「・・・あー、何でだろうな、脱いでる時誰かに踏まれたのかな、ははははは・・・」
「声裏返ってるぞ? ・・・あ、もしかしてお前そういう趣味か!?」
「ちげーよっ!!」
「まぁ、悩みがあるなら聞いてやるぞ、アドバイスの保障は無いがな。」
そう言って、舌を出してウインクした。
「お前はペコちゃんか? 別にお前に聞いてもらいたい悩みなんかねーよ。」
この自分でもよく分からない状況をどう説明したらいいのか。
それに何とか話してみたところで、どうせ変にからかわれるだけなので、絶対に話したくなんかない。
「まぁ、笑顔でいればきっといい事があるさ。」
高井戸が柄にも無く良い事を言った・・・ような気がする。
思わず同調の返事を返そうとしたが、続く言葉でその気が失せた。
「俺は帰ってからこいつを堪能する。」
満面の笑顔で、買ったばかりの袋からグラビアのDVD付録の付いた雑誌をちらりと覗かせた。
「・・・勝手にしてくれ。」
右手を上げて、高井戸に背を向けた。
外にいても面倒な事に出くわすらしい、さっさと家に帰った方がよさそうだ。
「おい、笹野待てって、」
「待たない!」
「そう言わずに、お前も一緒に見ないか? ・・・他にも良い物があるぞ?」
肩を掴まれて、甘い言葉が囁かれる。
「・・・し、仕方ないな、お前がそんなに言うなら・・・。」
そして結局俺は、高井戸の家に上がり込んだのだった。
読んで頂き、ありがとうございます。
・・・いかがだったでしょうか?
コメディで行く気だったんですが、ラブコメ路線になってきました。
ギャルゲーの選択肢間違った感じとでも申しましょうか・・・(笑)
あ、ギャルゲーはやった事ないんですけどね。
着地点を決めていないので、どこに行くか分かりません!
次話は、1月7日の新学期初日が目標です。
カレンダー通りにお話を進めて行きたいなと思っております。




