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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルのドブ板正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第二章 後編 全3話 完『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルのドブ板正義〜』

まえがき

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。

第二章:ミッション・イン・ミケ・ポッチブル(後編)

「……よし、完成だ。これぞ、あちね流『銀河一甘いアマケロ・ジェラート』よ!」

あちねの手元には、元は爽やかな黄緑色だったはずが、致死量の練乳と角砂糖を練り込まれて、ドロリと白光りする謎の物体が完成していた。

横で一口味見をした支店長は、「ケロォォ……天国が見えるケロ……。品質のバラつきなんて、この甘さの前じゃ誤差だケロ……」と白目を剥いて卒倒している。

「あちね殿、糖分が飽和状態を超えて、成分が物理的に発光し始めました。もはやジェラートというより、甘みの核燃料です。ですが、効果は抜群のようですよ」

ポチの冷静な分析通り、給水塔の頂上で唸っていたミケが、その強烈な甘い香りに釣られ、鼻をヒクつかせながら身を乗り出した。

「非科学的な。……警備ロボット、掃射開始」

氷室が冷徹に命じた。だがその時、異変が起きた。

「ニャァァァァン!!」

あちねから漂う「ミルクの匂い(最大出力)」と「激甘ジェラート」の香りに理性を失った街中の野良猫たちが、一斉に集結。隊列を組むように、氷室の警備ロボットたちを取り囲んだ。

「な、なんだこの毛玉の軍勢は……! 不潔だ、論理的じゃない!」

その時、猫の群れの先頭に立ったミケが、片手(前足)をぐっと突き上げた。

「ニャアアアッ! ミケタン・グーパンチ! 必殺・ネコタンシャー!」

ポチが咄嗟に叫んだ掛け声とともに、猫たちが一斉に毛を逆立て、フーッと威嚇の息を吐きかける。ネコタンシャーの名の通り、無数の猫毛と鳴き声の大合唱がロボットの光学センサーを覆い尽くした。

「ぎ、技名まで叫ばれると……なぜか怯む……! 論理的ではないのに、なぜだ……!」

氷室の警備ロボットたちは、毛だらけになった回路よりも先に、名前負けした精神的ダメージでフラフラと後退し、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

「ゲコッ! 逃げ足だけは論理的だケロ!」

その隙に、あちねはバケツをヘルメット代わりに深く被り、給水塔の垂直階段を爆走した。

「てやんでえ! 甘いもんと、必殺技の名前は、世界を救うんだよ!」

階段が途切れた場所では、空中に浮かぶ住民のシーツやTシャツを足場に、アクロバティックに跳躍。猫アレルギーで鼻を真っ赤にし、「ハックシュン!」というクシャミの反動で加速しながら、ついに頂上へ。

あちねがジェラートを差し出した瞬間、ミケがそれを勢いよく一口舐めた。

直後――。

「ニャ、ニャギィィィィィィィ(甘すぎ)!!」

あまりの衝撃的な甘さに、ミケの全身の毛が逆立ち、体内の「超重力サプリ」がポーンと口から飛び出した。

重力場が消滅し、落下するミケを空中でキャッチしたあちねは、偶然通りかかった大きなシーツをパラシュート代わりにして、ふわふわと地上へ生還した。

「……終わったぜ、氷室」

猫アレルギーで顔をパンパンに腫らしたあちねが、バケツを片足に履いたまま、ドヤ顔で言い放つ。

「論理じゃあ、猫の必殺技も予測できねえだろ?」

氷室は屈辱に震え、ピカピカに磨き上げられた覆面パトカー(クラウン)へ戻ろうとした。

「……フン、不快だ。あちね、貴様の糖尿病リスクは後ほど論理的に……」

その時である。

電柱の上の監視カメラ「アマケロ」たちが、一斉にレンズを氷室の愛車に向けた。

「ゲコッ……あちねの不甲斐なさを笑ったバツだケロ。……アマケロ・ボンバー!!」

べちゃっ!!!

「なっ……!?」

空から、鳥の糞……を模したミケタン星特製「白いペイント弾」が、氷室の愛車のボンネットに見事な直撃を食らわせた。

鏡のように磨かれた黒いボディに広がる、無残な白い跡。

「ゲコゲコゲコ! アマケロ砲、命中だケロ!」

「おわっ、アマケロ、やりすぎだぞ!(いいぞもっとやれ)」

あちねが吹き出す中、氷室は「……洗車だ。今すぐ世界一の洗車場へ向かえ!!」と叫びながら、猛スピードで去っていった。

数日後。

便利屋「あちね探偵事務所」。

「ミケ、みっちゃんのところで看板猫に戻ったってよ」

あちねは、報酬としてもらった「最高の練乳」をコーヒーにドバドバと注ぐ。

「やれやれ。あちね殿、次はもう少しスマートに解決してください。洗車バケツを履いたまま空を飛ぶ探偵なんて、前代未聞ですよ」

「うるせえや。ポチ、お前も一杯飲むか?」

「結構です。私の回路が甘みでショートしますから」

深海市の平和は、今日も甘くて痒い、あちねの執念によって守られたのであった。

(第二章・全3話 完)

結びの一句

出来損ない 愛でて味わう 春の宵

『あちね殿、その包容力、せめて事務所の家賃にも発揮してください』

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

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