第十六章 後編 4話 銀河ペロペロ・ラーメン大団円(後編完)
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第十六章 後編 4話 銀河ペロペロ・ラーメン大団円(後編完)
【一 星空の大宴会】
静寂が戻った漆黒の宇宙空間。
キャロル号の周囲には、ジュリタン星の巨大戦艦、リュウグウベースの潜航艇、さらには深海県警の宇宙パトカーまでもが、行儀よく円を描いて停泊していた。
「ふぅ……美味かった。」
氷室零はクラウンのボンネットに腰掛け、空になったどんぶりを愛おしそうになでていた。隣では野口靜が「大変豊かな風味でした」と、レンゲを静かに置く。
各船のデッキやハッチからは、汁まで飲み干した宇宙人たちが、幸せそうなため息をついて満足げに腹を叩いていた。
「がはは! どうだい、江戸前ラーメンの底力はよ!」
桃福の親父が大きな寸胴鍋を抱え、誇らしげに胸を張る。
【二 武士のトトト感謝状】
通信モニターがピカッと光り、ジュリタン少佐とユデタン女王、そして両大使が並んで映し出された。
『あちね殿、桃福の親父殿! 我ら全銀河の腹ペコ軍団を代表し、心より感謝を申し上げるであります!』
あちねはふと、少佐の後ろに控える大所帯の艦隊を見やった。
「にしても少佐、今回はやけに大所帯じゃねぇか。前は確か、なかなか身動きが取れねぇとかぼやいてなかったかい。」
少佐は白い軍服の胸を張り、少しだけ照れくさそうに鼻の下を擦った。
『……火星出張所の、あの意地の悪い所長がようやく異動になったであります。おかげで我が軍団も、久々に胸を張って出撃できるようになったのであります!』
「へっ、そりゃよかったな。」
あちねはニヤリと笑うと、それ以上は深く聞かなかった。宇宙の人事のことは、宇宙の人事だ。
ジュリタン一等兵と茹デタン准将がズイッと前へ進み出た。
二人は深く腰を落とし、両手を太ももに添えた。完璧な中腰のまま、最高級の畏敬の念を込めた揖(会釈)をする。重厚なシリアスさと緊張感が漂う。
そして次の瞬間――
『トトトトトトトトトッ!』
足元だけを細かく小刻みに動かし、感謝の意を込めながらバックで遠ざかっていく。
「最後までそのステップなんかーい!」
あちねがズッコケる中、ミケタン大使とクロタン大使が金色のスクロールを差し出した。
「桃福の親父殿に『銀河最高峰・永久名誉シェフ』の称号と特許権を授与するケロ!」
「これで宇宙中どこでもラーメンが出前できるクロ!」
【三 深海市への帰還】
時空を越え、キャロル号は深海市へと帰還した。
すっかり夜が明けた福まる食堂。店内には、無事に地球へ戻ったあちねたちの姿があった。
「やれやれ、宇宙まで出前なんて、とんだ大仕事だったねぇ。」
あちねがカウンターで冷えたビールをキュッと煽る。
「ですが、これでジュリタン星ともリュウグウベースとも完全なる大和解ワン。深海市の安全保障レベルは大幅に向上したワン。」
ポチが腕時計型端末の耳をパタパタと動かす。
店の奥では、トメさんが「宇宙の人たちにもコロッケ揚げてあげたかったわねぇ」と笑い、桃福の親父が嬉しそうに宇宙特許の賞状を壁に飾っていた。
【四 今日も平和……?】
「おい、あちね。」
暖簾をくぐって入ってきたのは、私服に戻った氷室零だった。
「氷室の旦那。またラーメン食いにきたかい?」
「フン、捜査のついでだ。……それと、野口法務官から言伝だ。『宇宙での出前に関する特別支援法案』が正式に通ったそうだぞ。」
「ケッ、お堅いこった。だがまあ……平和ってのはこういうのを言うんだろうねぇ。」
あちねが満足げに目を細めると、ポチの目がピカッと青く輝いた。
「ピピー! 深海市第十七地区にて、新たな謎の空間歪みを感知ワン!」
「げぇっ! もう次の事件かい!?」
あちねが頭を抱え、店内にはドッと温かな笑い声が響き渡った。
深海市の夜空に、今日も静かに星が輝いている。
――第十六章・完
【結びの一句】
どんぶりに 映る銀河の 平和かな
【ポチの毒舌ツッコミ】
「あちね、全宇宙の軍事衝突をラーメンで回避した功績は大きいです。ですが……出前代金の請求先が『銀河系全住民』になっていて、会計処理が地獄だワン。」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。
【ご報告】あっちゅ寝太郎、改め「曲木 六円」です!(頭隠して尻隠さず編)
いつも作品を読んでいただきありがとうございます、曲木 六円です。
以前からアナウンスしていた通り「あっちゅ寝太郎」から名義を変更したのですが……システム上のIDやランキング周りの仕様により、一部で「あっちゅ寝太郎」の尻尾がガッツリはみ出している状態になっております!(⌒▽⌒)
いわゆる「頭隠して尻隠さず」な状態ですが、これもまた一興ということで、当面はこのまま(ハイブリッド名義のような形で)活動を続けてまいります。
「曲木 六円」も「あっちゅ寝太郎」も中身は同一人物ですので、どちらの名前で見かけても、どうぞ変わらずにお付き合いいただけますと幸いです!今後ともよろしくお願いいたします。




