第十六章 中編 3話 銀河パトカーと出前規制
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第十六章 中編 3話 銀河パトカーと出前規制
(平和協定の裏に勝手に「ラーメン優先権」を小さく書き込んだユデタン女王と、腹ペコで『トトト』後ずさりする武士たち。いよいよ特製出前ロケットを発射!というところで、宇宙まで追いかけてきたあの男とあの女が乱入!? 中編、いってみよう!
【一 出前ロケット発射!】
「全自動配給カプセル、発射ワン!」
ポチの掛け声とともに、キャロル号のハッチから無数の光る容器が飛び出した。
宇宙空間に広がったカプセルは、ジュリタン少佐の戦艦や、リュウグウベースの潜航艇へと次々に吸い込まれていく。
中から現れたのは、湯気を立てる熱々の特製チャーシューメンだ。
『う、うまぁぁい! チャーシューが口の中でとろけるであります!』
『スープが五臓六腑に染み渡るケロ……!』
画面越しに、腹ペコだった宇宙人たちが感涙にむせんでいる。
【二 宇宙パトカーの乱入】
そこへ――ドゴォーン!!
時空の歪みをぶち破り、赤い回転灯を激しく明滅させた黒塗りのパトカー(宇宙仕様クラウン)が躍り出てきた。
「そこまでだ、あちね!」
宇宙服のヘルメット越しに、深海県警の氷室零がビシッと指をさす。
「銀河系交通法第百二条、および無許可の軌道上移動販売の疑いで貴様らの出前行為を停止する! 現場はこれより深海県警宇宙課が差し押さえる!」
「げぇっ! 氷室の旦那、こんな宇宙の果てまでパトカー追っかけてきたのかい!?」
あちねがズッコケる。
【三 野口靜の銀河法解釈】
「待ちなさい、氷室警部。」
宇宙クラウンの助手席から、野口靜が通信ホログラム越しにすっと現れた。彼女は宇宙空間でも変わらず、凛としたスーツ姿で眼鏡を光らせている。
「野口法務官!? なぜ宇宙パトカーに同乗している!?」
氷室が振り返ると、野口靜は静かにタブレットを操作した。
「銀河人道支援条約第十五条。『極度の空腹状態にある宇宙軍団に対する緊急給食活動は、あらゆる商業規制および交通規制に優先する』……とあります。」
「なっ……! だが、宇宙での取締権限は我が県警に――」
「法は人を縛るためではなく、守るためにあります。」
野口靜は氷室の反論を即座に遮り、あちねとポチに向き直った。
「亜那あちね殿、ならびにポチ殿。法的に何ら問題ありません。出前を継続してください。」
「ぐぬぬ……またしても法務官の横槍が……!」
【四 銀河ペロペロ大和解】
「助かったぜ、静の姉さん!」
あちねがニッと笑うと、桃福の親父が大きな丼を氷室の目の前に差し出した。
「へい、氷室の旦那! 追いかけてきて腹減ったろ。特製チャーシューメンだ、食いねぇ!」
「な、なに……!? 捜査中の警察官が、容疑者(?)の差し入れなど……ぐぬぬ……。」
丼から立ち上る香ばしい醤油とニンニクの香りに、氷室の鼻がピクッと動く。
「……一口だけだ。」
氷室がズズッとスープをすすると、その目がカッと見開かれた。
「う、美味い……! なんだこの深いコクは……!」
ポチの目が青く光る。
「氷室警部、戦意喪失を確認ワン。全宇宙艦隊、ラーメンにより完全和解完了ワン。」
宇宙の闇を背景に、全員が笑顔でどんぶりを抱える平和な時間が流れていった。
――第四話(後編完)へ続く
【結びの一句】
湯気かおる 宇宙の果ての パトカーかな
【ポチの毒舌ツッコミ】
「あちね、銀河の果てまでクラウンで追ってくる氷室警部も相当狂気ですが、宇宙法を味方につけて即座に論破する野口法務官はもはや銀河最強ワン。そしてラーメン一口で落ちる警部……この街の警察は実にチョロいワン。」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。




