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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第十六章 前編 1話 銀河駆ける出前持ち

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。

第十六章 前編 1話 銀河を駆ける出前持ち


(前回はコロッケの香りで世界のヘソの大爆発を食い止めた深海市。今回はなんと宇宙船キャロル号に乗って銀河へお出前!? 相変わらずの不整合やら細かい設定のズレは大人の事情ってことで笑って見逃してくんなまし。



【一 キャロル号のキッチン】


 どこまでも続く星の海。


 キャロル宇宙船の超高速巡航モードの中、あちねは特製の岡持ち(おかもち)を抱えてあくびをしていた。


「宇宙に出前かい……。深海市の下町から、まさか銀河系まで出前に来るとは思わねぇよな。」


「文句を言わないワン、あちね。」


 ポチが携帯型デバイスの形状でフワフワと浮遊しながら答える。


「今回はミケタン星とクロタン星の両大使から正式に要請された『銀河親善ラーメンパーティー』の出張調理ワン。報酬は最高級の宇宙燃料と、桃福の親父さんへの銀河特許権ワン。」



【二 伸びない麺の秘密】


「へいお待ち!」


 厨房スペースから勢いよく顔を出したのは、鉢巻をしめた桃福の親父(満)だった。


「ポチの野郎が作った『無重力保温おかもち』のおかげで、麺は伸びねぇ、スープは冷めねぇ! 宇宙だろうが何だろうが、最高の状態で食わせてやるぜ!」


「さすが親父さん。職人の意地だねぇ。」


 あちねが感心していると、艦橋のミケタン大使とクロタン大使が慌てて駆け込んできた。


「あちね殿! 大変ケロ!」


「大変クロ! 探知機に無数の影が急接近中クロ!」



【三 集まりすぎた腹ペコども】


 ポチがモニターに宇宙図を投影する。


 画面を埋め尽くすのは、不気味な黒い艦隊――ではなく、ヨダレを垂らした宇宙船の大群だった。


「ジュリタン少佐の宇宙戦艦、ユデタン准将の突撃艇、さらには暗黒惑星の元・ならず者どもまで……全員がラーメンの匂いを察知して集結しているワン。」


「匂いだけで宇宙戦艦が押し寄せてくるかい!?」


 あちねがズッコケる。


 通信モニターがピカッと光り、ジュリタン少佐の顔が映し出された。


『あちね殿! 我らジュリタン軍団、三日前から何も食べておらん! 名物のチャーシューメンを食わせるまで、ここを通すわけにはいかんのであります!』



【四 ラーメン大作戦始動】


「おいおい、どいつもこいつも餓鬼大将みたいな顔しやがって。」


 あちねは苦笑いしながら帽子を被り直した。


「親父さん、仕込みは足りてるかい?」


「ふん、足りねぇなら無限に仕込むまでよ! 銀河じゅうの腹ペコども、まとめて腹いっぱいにしてやらぁ!」


 ポチの目が青く光る。


「全自動湯切りシステムの出力、三百パーセント。銀河ペロペロ・ラーメン大作戦、開始ワン!」


 星々の大海原を舞台に、前代未聞の大宴会が幕を開けようとしていた。


                     ――第二話へ続く



【結びの一句】


 湯気立ちて 星の海原 出前かな


【ポチの毒舌ツッコミ】


「あちね、銀河平和の鍵が政治や兵器ではなく、チャーシューの仕込み具合にかかっているとは……銀河系も焼きが回ったワン。ですが、一杯のラーメンで戦争が回避できるなら安いものワン。」



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

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