↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/66

第十五章 前編2話 『武士のトトト後ずさり』

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。

第十五章 前編2話


『武士のトトト後ずさり』



(前話あらすじ――福まる食堂の地下から聞こえ始めた謎の通信音。その正体を探るため、あちねたちは地下深くへ向かった。細かな設定の違いや名前の揺れは、この際どうか笑ってご容赦を。事件はいつだって勢いが大切なのである。)



■一 地下空洞への入口


 福まる食堂の床下に隠された古い鉄扉が、ギギギ……と重い音を立てて開いた。


 湿った空気がゆっくり吹き上がる。


「相変わらず、いい雰囲気じゃねぇか。」


 帽子を押さえながら、あちねが階段を下りる。


 肩には竹箒。


 足元は泥だらけ。


 それなのに高級香水『エゴイスト』だけは、やたらと上品な香りを漂わせている。


「靴と香りが一致していませんワン。」


「放っときな。」


 ポチがライトを照らす。


 地下は想像以上に広かった。


 無数の光ファイバーが天井を走り、中央には巨大な球体が青白く脈打っている。


「あれが……世界のヘソ。」


 カエルッチが静かにつぶやいた。


 球体には宇宙中から集まる通信が流れ込み、川のような光が何本も吸い込まれている。


「通信量……三百七十八倍を維持中。」


 ポチの声も少しだけ硬かった。



■二 寝不足の記録係


 球体の足元で誰かが紙をめくっていた。


「ぶつぶつ……ログが終わらない……」


 本野読過郎だった。


 紙の山に埋もれ、目の下には立派なクマ。


「あれ、本野さんじゃねぇか。」


「亜那さん……」


 本野は力なく笑う。


「電子記録なのに、全部印刷して確認しています……」


「なんで紙なんだい。」


「紙の方が安心なんです……」


 その瞬間。


 ゴォォォ……


 世界のヘソが赤く一瞬だけ脈打った。


 空気が震える。


 ポチがすぐに解析を始める。


「負荷上昇。」


「嫌な予感しかしねぇな。」



■三 絶対防衛ライン


「止まるであります!」


 高い声が響いた。


 光の柱の向こうから、小柄な兵士が飛び出してくる。


 真っ白な軍服。


 立派な制帽。


 小さな体。


 胸を精一杯張ったその姿は、どう見ても新米である。


「私は宇宙平和連盟所属!


 ジェリタン軍ジュリタン一等兵!


 ここから先は絶対防衛ラインであります!」


 光線銃を構える。


 だが銃口は少し震えていた。


「あんた一人かい。」


「ひ、一人でも十分であります!」


「へぇ。」


 あちねが一歩だけ前へ出た。



■四 武士のトトト後ずさり


 ジュリタン一等兵の額に汗が浮かぶ。


「来るな……」


 さらに一歩。


「来るなであります……」


 もう一歩。


「う……」


 その瞬間だった。


 ジュリタン一等兵は両手を太ももに添えた。


 腰を深く落とす。


 背筋は真っすぐ。


 武士そのものの美しい姿勢。


 そして――


 トトトトトトトトッ!!


 上半身をまったく動かさず、高速で後ずさりを始めた。


 まるで畳の上を滑る達人である。


「あっ!」


 あちねの目が輝く。


「すげぇ!」


 さらにトトトトト……


 壁際まで下がる。


 止まる。


 また礼。


 トトトトト……


「何だありゃ!」


 本野まで思わず拍手した。


「芸術ですね……」


「芸術じゃありません!」


 ジュリタン一等兵は顔を真っ赤にした。


「由緒正しいジェリタン軍伝統防御術!


『武士のトトト後ずさり』であります!」



■五 伝染するトトト


「あっはっは!」


 あちねが笑う。


「面白ぇ!


 俺もやってみよう。」


 中腰になる。


「こうか?」


 トト……


 ヨロッ。


「腰が痛ぇ。」


「違います!」


 ジュリタン一等兵が指導する。


「もっと礼を深く!」


「こうか?」


「違います!」


「こう?」


「違います!」


 いつの間にか特訓が始まっていた。


 甘エビセンサー兵も参加。


「トトト!」


 トビウオ偵察兵も飛び跳ねながら参加。


「トトト!」


 本野まで資料を抱えたまま、


「トトト……」


 ポチまで静かに腕時計モードで横移動。


「トトト……分析完了ワン。」


 地下空洞いっぱいに、


 トトトトト……


 トトトト……


 トトト……


 奇妙な後ずさり大会が広がっていく。


 ただ一人。


 カエルッチだけは真顔だった。


「遊んでる場合じゃないケロ。」



■六 赤く染まる世界のヘソ


 その声と同時だった。


 ゴゴゴゴ……


 巨大な球体が赤く光り始める。


 通信速度が一気に跳ね上がる。


 ポチの目が赤く点滅した。


「警告。


 世界のヘソ。


 オーバーヒートまで残り時間、不明。」


 笑っていた全員の表情が変わる。


 ジュリタン一等兵も姿勢を正した。


「……いよいよ本番であります。」


 あちねは竹箒を肩へ担ぎ直す。


「よし。


 遊びはここまでだ。」


 赤く染まる世界のヘソを見上げながら、一同は静かに息をのんだ。



             ――第十五章 中編3話へ続く



【結びの一句】


 武士道も

 トトトと退けば

 花が咲く


【ポチの毒舌ツッコミ】


「あちね、敵の必殺技を五分で習得しようとする癖は相変わらずですワン。でも、その順応力だけは銀河でもトップクラスかもしれません。」


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

PS 何処かで使った ギャグもあるようですが、平にご容赦を。

曲木 六円 なはは、は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。