第十五章 前編 1話 地下から聞こえる 妙な音 チュー?
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第十五章 前編 1話 地下から聞こえる 妙な音 チュー?
お詫び
(ああ、星の門が大混雑して文章も混乱ぎみだったなぁ〜。宇宙の交通整理なんてガラじゃないんだが、まあ色々と大変だったねぇ。詳しい名前や細かい設定のズレは、大人の事情ってことでひとつ、ご勘弁!)
【一 福まる食堂の昼下がり】
夏の日差しが、福まる食堂の暖簾をやさしく照らしていた。
店内にはコロッケの香ばしい匂いが漂い、トメさんが揚げたてを網に並べている。
「親父さん、コロッケ一つ追加でぃ。」
あちねは新聞を広げたまま声をかけた。
「さっき食べただろ。」
桃福の親父が呆れ顔で返す。
その横でポチは腕時計型の端末から小さな耳を立て、店内を見回していた。
「平和だワン。」
そう言った次の瞬間だった。
ゴゴゴ……
床の下から、かすかな振動が伝わってきた。
湯飲みがカタリと揺れる。
「地震かい?」
トメさんが首をかしげる。
しかし揺れは一瞬で止まった。
【二 地下から響く音】
静まり返った店内。
その時だった。
ピー……ピピ……。
誰も聞いたことのない、不思議な通信音が床下から聞こえてきた。
「なんでぃ、この音。」
あちねが耳を澄ます。
すると、隅で昼寝をしていた甘エビセンサー兵が突然飛び起きた。
「ピクッ!」
触角が激しく震えている。
「来ます! 来ます!」
一方、トビウオ偵察兵は勢いよく飛び上がった。
「敵襲だぁ!」
「違うワン。」
ポチが即座に否定する。
「じゃあ夕飯?」
「それでもないワン。」
店内は一気に騒がしくなった。
【三 ポチの異常探知】
ポチの目が青く光る。
「解析開始。」
ホログラムが浮かび上がり、深海市地下の立体地図が現れた。
一本の巨大な通信回線が、地下深くへ伸びている。
「通信量……通常の三百七十八倍。」
「そんなにかい?」
あちねが目を丸くする。
「アクセス集中。」
「アクセス?」
「宇宙中から同時接続されているワン。」
その言葉に、店の奥でラーメンをすすっていたミケタン支店長が、むせ返った。
「ゲホッ……まさか……。」
彼女は真顔になった。
「世界のヘソが……くすぐったいケロ。」
一同は顔を見合わせた。
「世界のヘソ?」
誰も意味が分からない。
【四 地下へ】
その頃。
深海市のはるか地下。
誰も知らない巨大空洞では、無数の通信光が交差し、大渋滞を起こしていた。
光は銀河中から集まり、一本の柱となって渦を巻いている。
その中心が――
"世界のヘソ"。
ポチが静かに言った。
「放置すると、通信だけでは済まないワン。」
あちねは帽子を被り直した。
「よし。行くかい。」
「どちらへ?」
「決まってらぁ。
世界のヘソってやつを見物によ。」
ポチは小さくため息をついた。
「見物じゃないワン……。」
それでも、その声はどこか楽しそうだった。
――第二話へ続く
【結びの一句】
地の底に 鳴りやまぬ音 夏の底
【ポチの毒舌ツッコミ】
「あちね、具材のネギより、あんたの発想のほうがよほど規格外です。ですが……今回は、その仕様変更に救われた者が大勢いました。」
あとがき ジュリタン訂正とお詫び
今回、一等兵の名前が「ジュリタン」「ジェリタン」とふらついておりますが、これは誤字にあらず。深海市の現場では、無線の混線やら訛りやらで、軍団名の呼び方が微妙に揺れることがままあるようで。本人たちも大して気にしていない様子なので、この際、細かいことは大目に見てやってくださいまし。宇宙は広い、名前の一つや二つ、揺れたっていいじゃねぇか――というのが、あちねの弁でございます。
平に、お許しを。曲木 六円




