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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第十三章 前編2話『深海市・利権強奪パニック』 :『見当違いの仕込み杖と、下町の危機』


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

第十三章『深海市・利権強奪パニック』

第十三章 前編 2話:『見当違いの仕込み杖と、下町の危機』


【あらすじ】

事務所に乗り込んできたアギトの幹部・座頭鯨2。極度の近眼というトホホな弱点が露呈するも、その身に纏う殺気と裏社会の重圧は本物。あちねとポチの前に、座頭鯨2が「伝家の宝刀」を抜いて対峙する。


【本文】

「ふん……。先代の遺した遺産など頼りにはせん。この私の、現場の勘だけでお前を仕留めてみせる」

あちねの事務所を「お洒落な練乳工場」に変えた張本人、座頭鯨2は、鋭い気配を放ちながら不敵に笑った。

クシャミの勢いで完全に眼鏡を曇らせたままだが、その立ち姿には一点の隙もない。彼は懐から「伝家の宝刀」を抜くべく、自信満々に右手を伸ばした――。

「喰らえ! アギトに伝わる漆黒の――」

バシッ!!

座頭鯨2が勢いよく引き抜いたのは、あちねが事務所の壁に立てかけておいた、泥泥の「竹箒(たけぼうき)」だった。近眼ゆえに、完全に掴むものを間違えている。

「隊長!そ、それは伝家の宝刀ではございません!ただの、泥まみれの清掃用具にございます!」

甘エビセンサー隊長が、エビ反りになりながら大慌てで両手を振る。

「黙れ、甘エビ! 弘法筆を選ばず、座頭鯨は箒を選ばずだ!」

座頭鯨2はヒステリックに叫びながら、手にした竹箒を**ビュォォォッ!!**と一閃した。

シュール極まりない構図である。しかし、あちねの目は笑っていなかった。

竹箒の先端から放たれた風圧は、先ほどの真剣のそれと何ら変わらない。座頭鯨2は目が見えない分、空気の振動、あちねが発する激甘コーヒーの匂い、そして微かな足音だけで完璧に空間を捕捉していた。音と気配だけで間合いを見切る「現場の勘」――こいつは、見た目のトホホさに反して、意外なほどの強敵だった。

「……なるほどね。そいつは本物の『現場の凄み』ってやつだ」

あちねは泥泥の靴を一歩引き、身構える。

その時、背後で窓から戻ろうとしていた飛魚偵察兵が、窓枠に引っかかって「トビウオッ!?」と派手な音を立てて転んだ。

座頭鯨2の超聴覚がその音に過剰反応する。

「そこかァ!」

反射的に繰り出された竹箒の痛烈な突きが、飛魚を飛び越え、さらに後ろにいたクジアンラッキー曹長の腹へ**ドスゥッ!!**と見事にクリーンヒットした。

「ぶふぉっ!? ……な、なぜ、また俺なんだ……」

クジアンラッキー曹長は白目を剥き、そのまま床へ崩れ落ちた。

「おいおい、味方殺しの天才かよ」

あちねが呆れた声を上げた、その瞬間。

「ジジ……ジジジジッ!」

ポチの目が、先ほどよりも激しく警告の赤色に点滅した。スピーカーから切迫した電子音が響く。

「あちね、小競り合いをしている場合ではありません。敵の別働隊の本格的な動きをキャッチしました。座頭鯨2の真の目的は、この事務所の襲撃ではなく――下町の心臓部、福まる食堂の地下にある『世界のヘソ』の物理的占拠です!」

「何だと……!」あちねの顔から、完全に余裕が消えた。

「フハハハ! 気づくのが遅い!」

座頭鯨2は竹箒をビシッと掲げ、見当違いの天井を指さしながら高笑いした。

「我がアギトの精鋭どもが、今頃あの薄汚れた食堂の地下を闇に落としているはずだ! 下町の、いや、この国家の通信利権は、すべて私が強奪する!」

「……そういうことかい。ポチ、行くぞ!」

あちねは泥泥の長靴を蹴るようにして走り出した。

「了解です。下町の42度の安らぎを、タコやエビの仲間に渡すわけにはいきません」

あちねとポチは、狂暴なキレ味を持つ近眼の幹部を背に、爆発的な速度で事務所を飛び出し、下町の命運をかけた「福まる食堂」へと急行するのだった。


【あっちゅ寝太郎、談】。

「宝刀と、間違え掴む、竹箒」

(どんな武器でも一級品に変えるのがプロですが、さすがに竹箒はトホホが過ぎやすぜ、隊長!)


【ポチの毒舌ツッコミ】

「クジアンラッキー曹長の不運指数が、我がデータバンクの予測値を突破しました。ある意味、彼もまた確率の壁を越えた天才と言えます。それはそうとあちね、急ぎましょう」

(第2話 完 / 第3話へ続く)

あとがき ジュリタン訂正報告版 【あっちゅ寝太郎、談】

今回、一等兵の名前が「ジュリタン」「ジェリタン」とふらついておりますが、これは誤字にあらず。深海市の現場では、無線の混線やら訛りやらで、軍団名の呼び方が微妙に揺れることがままあるようで。本人たちも大して気にしていない様子なので、この際、細かいことは大目に見てやってくださいまし。宇宙は広い、名前の一つや二つ、揺れたっていいじゃねぇか――というのが、あちねの弁でございます。

他も不整合が目立ちますが、平にご容赦を。(T_T)

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