第十二章 2話:『出撃、水陸両用ポチC! ユデタン大尉の甘エビセンサー網』
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第十二章 2話:『出撃、水陸両用ポチC! ユデタン大尉の甘エビセンサー網』
【あらすじ】
第七管区海上保安本部の七海本部長と、深海フェリーの浅瀬社長からの合同依頼を受け、水陸両用(汗)モードへと仕様変更して深海市の海へダイブしたAIポチ(SAI・ポチC)とアマケロロボ軍団。
海底のリュウグウベースを目指す彼らだったが、茹デタン准将の「バイバイ墨ぃ〜」による暗黒のカーテンを抜けた先には、さらなる生臭いユデタン軍団の精鋭たちが待ち受けていた……。
■ 潜水ポチCと、シュノーケルのアマケロ艦隊
ドッパーーーンと派手な水しぶきを上げて海中へ突入した、愛車SAI・ポチC。
フロントの柴犬の顔がついたフードをパカッと閉鎖し、車内への浸水を現場の意地で食い止めながら、ポチの制御システムは「水陸両用(汗)」と書かれたトホホな簡易バラストタンクをピコピコと明滅させていた。
『あちねが事務所でいじけてコーヒーを溢している間に、俺たちがバチッと手柄を立てるワン。アマケロ軍団、進路は北北西、リュウグウベースの座標をガチッと捉えたワン!』
「ゲロゲロ! 了解ケロ! 銭成の旦那に買ってもらった足ヒレが最高に馴染むケロ!」
ポチCの周囲を泳ぐのは、総工費○万円の超高級シュノーケルと足ヒレを装着した緑色のアマケロ販促ロボット軍団だ。カエル泳ぎでスイスイと進みながら、サーボモーターを「カチカチ、ゲロゲロ」と歓喜に鳴らし、まるでミニ潜水艦隊のような機動力を見せつけている。
だが、深海の暗がりに近づくにつれ、ポチのジト目が液晶画面で不穏にパチパチと明滅し始めた。
『デンジャーだワン。前方の海域に、茹デタン准将が配備した新たなる不整合な援軍を検知したワン!』
■ ユデタン大尉の罠と、生臭いレーダー網
「ちゅうちゅう! 准将の墨に惑わされずここまで来るとは、生意気なAIだちゅう!」
行く手を阻むように現れたのは、茹デタン准将の右腕であり、現場の叩き上げエリートである**【ユデタン大尉(通称:ユデタンキャプテン)】**であった。メタリックな宇宙服の肩に大尉の階級章をギラつかせ、無数の触手をクネクネとさせている。
大尉の背後からは、吸盤に魚のヒレをつけた**【トビウオ偵察兵】たちが、水中だというのに爆速のスクリュー機動で「ちゅちゅちゅっ!」とポチCの周りを旋回し始めた。
さらに厄介なのは、長いヒゲをアンテナのようにピンと張った【甘エビセンサー兵】**の一団だ。
『不味いワン! あの甘エビどものヒゲ、世界のヘソから受信している俺のハッキング電波をビンビンに傍受しているワン! こちらの進路が1秒ごとに仕様変更(予測)されて、リュウグウベースに全く近づけないワン!』
「ゲロゲロッ!? トビウオのスピードに追いつけないケロ! 足ヒレが絡まって不整合な犬かきになっちまうケロ!」
アマケロ軍団も、トビウオ偵察兵の爆速からみつき攻撃と、甘エビセンサー兵の完璧な先読みプロトコルの前に、完全に包囲されて大ピンチを迎えていた。
■ 水中のクラウンと、エリートの潜水言い訳
『これ以上近寄ったら、ポチCのバンパーをタコスープの具にしてやるちゅう!』
ユデタン大尉が勝ち誇って触手を振り上げたその時――。
ゴボゴボゴボゴボッ!!!
上方の海域から、およそ海の底には似つかわしくない、激しい排気音と水流が突っ込んできた。
暗闇をキラーンと引き裂く2条のヘッドライト。それは、巨大な水中プロパンボンベをルーフにガチッと括り付け、ワイパーを猛烈に動かしながら潜航してくる、お馴染み黒塗りの高級セダン――氷室零警視の私物【トヨタ・クラウン(覆面パトカー)】であった!
クラウンはユデタン大尉の陣形を「ドンッ!」と派手な不整合で蹴散らしながら、ポチCの真横へと急ブレーキ(水中ドリフト)をかけた。
運転席には、水中仕様の特製シュノーケルを咥え、お気に入りのキャラクターTシャツ(私服)を水圧でピチピチに張り付かせた氷室が、窓ガラス越しにメガネをキラーンと曇らせて座っていた。
氷室は車内の防水警察端末をクイッと操作し、外部スピーカーからゴボゴボという泡混じりの声を響かせた。
「フッ、ゴボッ……聞こえるかねAIポチ。国家の重要航路および深海フェリーの安全管理において、このような生臭いタコどもの不法占拠は論理的に断じて認めん……ゴボッ!」
『氷室室長! なんで私物のクラウンで海に沈んでるワン!? 完全なる公私混同のバグだワン!』
ポチのジト目が画面で烈しく点滅する。
「勘違いするな! これは最新AI『アイ・オブ・ゼウス』が導き出した、海底における【極秘水面下ガサ入れテスト】だ。決して、留さんのコロッケを買いに行く途中で海保の騒ぎに巻き込まれたわけではない……っ! ゼウスの計算によれば、私がここでダサい私服を濡らすこともすべては計算通り……ゴボボッ(シュノーケルから水が入る)」
氷室は顔を真っ赤にしてまたしても冷や汗交じりの言い訳ラリーを回すが、クラウンのボンベの残量は明らかにデンジャーな領域を示していた。
しかし、氷室のクラウンが不整合な乱入をかましたおかげで、甘エビセンサー兵のレーダー網に1秒の「エラー(隙)」が生まれた!
『ナイス不整合だワン、室長! アマケロ軍団、室長のヘボい言い訳の隙に、ユデタン大尉の包囲網をハッキング突破するワン! 次なる3話では、リュウグウベースの最深部へバチッと突入だワン!』
氷室のクラウンを盾にしながら、ポチCとアマケロ軍団は、ユデタンキャプテンの生臭い防衛線を突破すべく、深海の闇へとさらに深くギヤをシフトするのだった。
(3話へ続く)
【結びの一句】
甘エビの ヒゲに阻まれ クラウン浮く
『水中でも屁理屈だけはゼウス級の一級品だワン、室長。さあアマケロ軍団、大尉の吸盤を黄金の印籠(USB)で42度に仕様変更して、リュウグウベースの扉を1秒でハッキング開錠してやるワン!』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。




