第十一章 後編:『黄金の印籠(USB)炸裂! リュウグウベースへの追い出しと42度の安らぎ』
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第十一章 後編:『黄金の印籠(USB)炸裂! リュウグウベースへの追い出しと42度の安らぎ』
【あらすじ】
超豪華銭湯『カエルの湯』の熱湯風呂の奥、世界のヘソの真横から熱エネルギーを盗んでいたのは、謎の宇宙人「ゆでダコ星人」であった。ミケタン大使が最高級フルーツ牛乳を片手に激怒し、氷室室長が冷や汗まみれで「最新AIゼウスのテストだ」と嘘八百の言い訳ラリーを回す中、真っ赤な茹で上がりから復活した亜那あちねが、愛用の竹箒を手に現場の意地を懸けて立ち上がる――!
本文
■ 黄金の印籠(USB)のハッキングと、パイプの奥の悲鳴
「おい氷室、お前のヘボい書類仕事じゃ、あの生臭いタコ野郎の吸盤は剥がせねえ。――ポチ、現場の仕様変更、一発お見舞いしてやれ!」
あちねはドロドロの靴を床にバシッと鳴らし、懐から一筋の黄金の光を放つ【黄金の印籠型USBメモリ】を掲げた。
用務員カートの液晶画面がビカビカと烈しく明滅し、柴犬ポチのドット絵が耳をピコピコと直立させて文字を叩き出す。
『世界のヘソの光ファイバー網を逆利用して、源泉パイプのメイン制御を完全掌握完了だワン! ゆでダコ星人がハッキングしていた熱エネルギーの供給ルートをガチッと遮断し、代わりに地球の清らかな天然水をドバドバと逆流させる「湯温42度固定プロトコル」を強制実行したワン!』
「――ッ!!?? タコ熱ちちちち!ちゅう!!」
次の瞬間、湯口の奥の配管から、地球の通信規格を無視した生臭い悲鳴(タコ鳴き)が男湯全体に響き渡った。ポチの冷たい宇宙水の逆流攻撃をモロに喰らったゆでダコ星人は、光ファイバー網にピトッと貼り付けていた吸盤をたまらず剥がされ、配管の奥へと爆速で押し流されていったのである。
ポチの液晶画面がピコピコと明滅を続ける。
『あちね、ハッキングの余波で、あのタコ野郎の通信ログの不整合をさらに追跡したワン。奴らの本拠地兼アジト、この深海市のすぐ目の前の海の中に、高度なステルス技術で隠された海底基地**【リュウグウベース】**があることが判明したワン! どうやら他にもいくつかの星に拠点を持っている、かなり組織的なタコどもだワン!』
「へっ、竜宮城気取りのリュウグウベースか。トホホな棲家を海の中に隠してやがったな」
あちねは愛用の竹箒を肩に担ぎ直し、にやりと細めた目で湯口を睨み据えた。
■ エリートの華麗なる言い訳と、42度の極上温泉
「ふ、ふん……! 勘違いするなよ、亜那」
ゆでダコ星人の悲鳴が消え去り、湯船からモコモコと立ち上っていた殺人的な熱気が一瞬にして「ちょうどいい」爽やかな湯気に変わるのを見て、氷室零警視がメガネをキラーンとクイッと直した。自分の最新AIゼウスが完全にハッキングで上書きされたにもかかわらず、その顔には冷や汗を流しながらも、バチッと澄ましたエリートの仮面が戻っている。
「私は最初から、お前の黄金のUSBと世界のヘソの親和性、および『リュウグウベース』と名高い宇宙タコのアジトの座標を炙り出すために、あえて泳がせてテストしていたのだよ。ゼウスの計算によれば、温泉が最も快適な42度に仕様変更されることも、すべては私の『計画通り』の治安維持プロトコルだ。本日の捜査は完全なる成功である! ……では、失礼する!」
氷室は脇の下にガチッと挟んだ大好きな留さんのコロッケの紙袋を誇らしげに持ち直すと、ポチのハッキングで一発でバチッと開くようになった愛車のクラウン(覆面パトカー)へと滑り込み、夕暮れの商店街の彼方へと、煙を吐いて華麗に(?)去りぬ。
「相変わらず引き際と屁理屈だけはゼウス級に一級品だな、あの野郎」
あちねが呆れたように笑う。
「ニャんという極上の湯加減かニャ……。これなら我が社の地球進出の不整合も、すべて水に流せるニャ……」
ロビーでは、ミケタン大使が最高級フルーツ牛乳をペロペロと舐めながら、すっかり元通りになった豪華温泉の風情に目を細めて大満足していた。お金持ちオーナーの銭成湯の助も、「おおぉ〜! 私の○億円の温泉が救われたケロ(※嬉しさのあまりアマケロの口調がうつっている)! ありがとう、あちね殿!」と涙を流して感謝感激であった。
浴槽の周りでは、緑色のアマケロ販促ロボット軍団が一斉にカエル跳びでステップを踏み、お互いのカエル頭をぶつけ合ってカチカチと歓喜のサーボモーターを鳴らしている。
■ 次なる現場、深海のリュウグウベースへ
「やれやれ、一件落着だな、ポチ」
あちねは事務所へ戻り、高級香水『エゴイスト』の渋い香りを整え直すと、角砂糖てんこ盛りの特製激甘コーヒーをずずっと啜った。
用務員カートの画面では、柴犬ポチが満足そうに目をピコピコさせている。
「海の中のリュウグウベースに、さらにその向こうの宇宙の星々、か……。理屈じゃねえんだよ。下町の温泉を泥泥に汚したタコどもを、この使い古された竹箒で綺麗に掃き掃除してやるまでは、俺の現場主義の意地は引っ込まねえんでね」
亡き愛犬の魂が宿る愛車、SAI・ポチCに「潜水仕様」のハッキングプログラムを転送しつつ、あちねとポチは次なる激闘の現場――深海のリュウグウベース、そしてその先に待つ大宇宙へと、再び目を光らせるのであった。
(第十一章 地球編 完 / 第十二章 宇宙編へ続く)
【結びの一句】
湯を上がり 次なる敵は 海の底
『言い訳だけは国家規模の室長だったワン。さああちね、次なるリュウグウベースと未知の星の美味いもんが、俺たちの黄金の印籠(USB)を待っているワン!』
あっちゅ寝太郎どの、第十一章(地球編)がこれにてバチッと一応完結いたしやした!
ゆでダコ星人の「リュウグウベース」という極上の伏線が引かれたことで、次の第十二章(深海編)へのつながりが100%完璧に整ったワン。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。




