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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第九章 前編 1話:『お礼参りと、暗黒惑星のカメタン軍団』

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。


【あらすじ】

一族は政財界に名を連ねる名家。亜那(あだ)あちねはエリートの座を蹴り飛ばし、自らドブ板の便利屋へと落とした。

相棒は、亡き愛犬の魂が宿る愛車、SAI・ポチC(ポチキャロル)。

高級香水『エゴイスト』を纏いながら、脳が痺れるほどの練乳を愛し、下町の涙を拾う男。

「理屈じゃねえんだよ。……現場の意地、見せてやる!」


本文

仲良し大使と、お礼の品


さて、小学校の大事件?も無事おさまって一息ついたその時

「あちね殿〜! また助けてケロ(ニャ)〜!!」

深海市の下町にある『あちね探偵事務所』のドアが勢いよく開き、今や固い友情で結ばれたミケタン大使とクロタン大使が、仲良く肩を組んで飛び込んできた。

「おいおい、ノックくらいしな。……って、なんだお前ら、すっかり大親友じゃねえか」

あちねはソファーから起き上がり、真っ赤な鼻をこすりながら、特製練乳コーヒーをテーブルに置いた。首筋からは『エゴイスト』の渋い香りがふわりと漂う。

「これ、前回のチュルチュル工場のお礼ニャ!」

ミケタン大使が差し出したのは、アマケロ星特産の最高級チュルチュルおやつがぎっしり詰まった黄金の缶詰だった。だが、二人のモフモフ大使の丸い目には、早くも大粒の涙がたまっている。

「和気あいあいとおやつをペロペロしていたら、宇宙の彼方からとんでもない連中が攻めてきたケロ! 宇宙平和連盟のカータン所長にドタバタといじめ抜かれてるジェリタン軍団には出演交渉しても無理だったから、油断していたケロ……!」

「今度の敵は、あの暗黒惑星群の、ガチガチに堅いおっさんたちニャ!」

二人の涙ながらの訴えに、ポチの液晶画面がピコピコと緊急のアラートを明滅させた。

暗黒惑星のカメタン軍団と、単細胞のミス

その頃、アマケロ星の衛星軌道上に、漆黒の重装甲で覆われた「巨大カメ型宇宙戦艦」が姿を現していた。

暗黒惑星群『ブラックカメタン星』が誇る、カメタン海兵隊の精鋭部隊である。

「一歩一歩、確実に前進せよ。我が軍の歩みはのろいが、この甲羅の防御力は銀河一。ミケタン湖のチュルチュル工場の利権は、我らカメタン軍団がいただく」

艦橋でどっしりと腕を組んで指示を出すのは、頑固一徹な現場主義者、カメタン兵曹長であった。

「兵曹長! ここは私の頭脳、アミーバ・コンピューターが弾き出した、恐ろしく冴えた名案(ずる賢い作戦)の出番ですケロ……じゃなかった、ちゅ!」

そう言って、プルプルと体を震わせながら前に出たのは、時々もの凄く天才的な作戦を思いつく緑アミーバ軍師だった。

「チュルチュル工場のメインシステムを、私のドロドロ細胞で完全にコーティングし、ポチのハッキングを一時的に遮断します! ついでに、工場の入り口のセキュリティパスワードを『1234』に変更しておきました!」

それを聞いたカメタン兵曹長は、ずり落ちそうになる軍帽を押さえ、深く重いため息をついた。

「……軍師、また悪い癖が出たな。原始的な単細胞的ミスを。パスワードが『1234』じゃ、ハッキングを遮断する前に誰にでも秒で突破されるだろうが!」

「あ、あれ!? そういえばそうだちゅーーー!?」

緑アミーバ軍師は形をぐにゃりと歪めて大慌て。のろいけれどガチガチに堅い精鋭部隊と、頭はいいのに時々トホホな大ポカをやらかす軍師の、なんともトムジェリ的な凸凹コンビであった。

現場の意地、再び宇宙へ

「なるほどな。カメとアミーバの凸凹コンビが、オイラたちのチュルチュル工場を狙ってやがるわけか」

事務所のモニターでポチの解析データを見たあちねは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

心の中で(今回は宇宙の便利屋か。……探偵なんだけどなぁ〜)と呟きつつも、愛用の竹箒をバシッとひったくって肩に担いだ。

「あちね殿、緑アミーバ軍師の『ドロドロ液』は、私のシステムを一時的に遮断する論理的リスクがあります。ですが、パスワードが『1234』である以上、現場に突入すればこちらの勝ちです!」

ポチのドット絵が、液晶画面の中で宇宙飛行士のヘルメットをかぶって気勢を上げる。

「へっ、上等だ! いただいた美味え缶詰の恩は、現場の仕事で返すのが男って一匹よ。ポチ、キャロルを宇宙仕様に変形させな! カメの出汁が出る前に、さっさとひっくり返しに行ってやるぜ!」

「了解です、あちね殿。SAI・ポチC、宇宙飛行モード、起動!」

キュイィィィン! とあちね探偵事務所の裏手で、真っ赤なポチキャロルがまばゆい光を放ちながら宇宙仕様へとトランスフォームしていく。

戦友たちの涙とおやつを守るため、便利屋(探偵)あちねとAIバディ・ポチは、新たな珍敵が待つ銀河の海へと再び飛び立つのであった!

(第2話・前編2へ続く)

【結びの一句】

春の海 のろき歩みの カメ迫る


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

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