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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第八章 中編:『ノグチの階級(カースト)と、スポーツ万能の用務員

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。


【あらすじ】

一族は政財界に名を連ねる名家。亜那(あだ)あちねはエリートの座を蹴り飛ばし、自らドブ板の便利屋へと落とした。

相棒は、亡き愛犬の魂が宿る愛車、SAI・ポチC(ポチキャロル)。

高級香水『エゴイスト』を纏いながら、脳が痺れるほどの練乳を愛し、下町の涙を拾う男。

「理屈じゃねえんだよ。……現場の意地、見せてやる!」



本文

体育館裏の、やばい連中

放課後のノーベルノグチ小学校。アマケロルンバの案内で、あちねが竹箒を担いで薄暗い体育館裏へと回ると、そこにはすでに歪なスクールカーストの頂点が出来上がっていた。

「おい、お坊ちゃん。今月の『部活応援費』がまだ足りねえんだよ。お前んち、ブルジョワなんだろ? 早く出しなよ」

数人のガキどもが、依頼人の少年を小突き回している。驚いたことに、小学生にしては異常なほど体格が良い。それだけではない。その中心で腕を組んでふんぞり返っているのは、明らかに他校の制服を着た、体つきの出来上がった**「中学生の兄貴分」**たちだった。

「ひ、ひえぇ……あちね殿、大変です!」

あちねのポケットのスマホ画面で、ポチが慌てて顔認識データを弾き出した。

「中央にいる柔道着の中学生と、その横の空手部の小学生……データ照合完了。なんと、ジュニアの『世界大会上位入賞者』の怪物たちです! 論理的に勝率はコンマゼロ%です!」

「……おいおい、マジかよ」

あちねは真っ赤な鼻をこすり、額から汗を**「たら〜」**と流した。

「世界大会上位のあのクソガキども、こんな名門校の体育特待生の裏ボスやってやがったのか。世間は狭くてやってられねえぜ……」

スポーツ万能の用務員、殴り込み!

「おい、そこの作業着のおっさん、何見てんだよ。用務員はあっち行って落ち葉でも拾ってな!」

中学生の兄貴分が、あちねを睨みつけてせせら笑った。

あちねはフッとため息をつき、首筋から『エゴイスト』の渋い香りを漂わせながら、手拭いをキリリと締め直した。

「へっ、あいにくだがな、オイラは頼まれたら断れねえ便利屋なんだよ。(心の中で:探偵なんだけどなぁ……)大人がガキのいじめを見て見ぬ振りするなら、現場の用務員が代わりに教育してやるのが筋ってもんだろ!」

「ハッ、おもしろい。世界レベルのオレたちに勝てると思ってんのか!?」

巨体の中学生たちが、一斉に獰猛な笑みを浮かべてあちねに掴みかかってきた!

だが、相手が世界クラスの怪物なら、あちねは「元警察官・武道専門」の怪物である。バドミントンとテニス、剣道以外のスポーツなら、あちねの右に出る者はいない!

「そりゃっ、ロロロ戦法だぁ!!」

あちねは愛用の竹箒を器用に回転させ、相手の足元へ滑り込ませた。神速の「高速の寄せ」の応用技だ。

「ちゅ、ちゅう!? 足が滑るっ!」

世界上位の空手キッズが、箒の風圧とフットワークに翻弄され、面白いようにバタバタと畳まれていく。

「この野郎っ!!」

怒り狂った柔道の世界2位の中学生が、あちねの作業着の襟をガシッと掴んだ。まともに組めば大人の男でも骨を折られる圧倒的な怪力。

炸裂、伝説の真空投げ!

「あちね殿、危険です! 掴まれました!」

ポチが画面の中で悲鳴を上げる。

「へっ、世界がどうした。現場の泥水をすすってきた男の力を、ナメんじゃねえや!」

あちねはニヤリと笑うと、相手の力を完全に脱力して受け流し、自身の軸をコマのように高速回転させた。元警察官時代に極めた、力に頼らない究極の合気柔術――。

ガッ!!!

あちねが虚空を掴んで身を翻した瞬間、体育館裏の空気が歪んだ。

「くらえっ! 真空投げぇぇーー!!」

「う、うわあああああーーーっ!!?」

掴んでいたはずの中学生の巨体が、まるで重力を失ったかのようにフワリと宙に浮き、次の瞬間、凄まじい風切り音とともに地面へと叩きつけられていた。

ズドォォォン!!!

背中から叩きつけられた兄貴分は、白目を剥いて完全にノックアウト。周りの特待生たちも、あまりの次元の違う強さに、顎が外れんばかりに驚愕して腰を抜かしていた。

「あ、あちね殿……信じられません。完全に肉体の理屈を超えた物理ハックです」

ポチが液晶の中で拍手を送る。

あちねは竹箒をパッと肩に担ぎ直し、ハァーと息を吐いて真っ赤な鼻をこすった。

だが、勝負はついたものの、特待生のクラブの連中はまだ校内にウジャウジャいる。柔道部、空手部、バスケにバレーに卓球部……。

いじめの根っこを完全に引き抜くため、スポーツ万能の最強用務員あちねによる、前代未聞の「全クラブ殴り込み(特別コーチ)作戦」が、ここから本格的に幕を開ける!

(第4話・後編 完へ続く)

【結びの一句】

春風に 世界を投げる 箒かな



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

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