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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第六章 後編 全3話 完 『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルのドブ板正義〜』

まえがき

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。

第六章 後編 全3話 完:『地下の誓いと、ネズミの恩返し』

1. 地下の誓いと、涙の少佐部下

「てやんでえ! 子供の夢を泥棒する不届き者は、この竹箒で残らず掃き出してやらぁ!」

あちねは廃墟の地下道を、洗車バケツをガタガタと鳴らしながら猛然と突き進んだ。

暗がりの中、盗んだ宝の山に囲まれていたジェリタン軍団の残党ネズミたちが、ステルスを解いて飛び上がった。

「ちゅう!? なぜここが分かったちゅう!」

「お前らの服から『エゴイスト』のいい香りがプンプン漂ってんだよ!」

あちねは素早く竹箒をひと振りし、ネズミの手から黄金色に輝く「サンタの首飾り」を鮮やかに掠め取った。

「ああっ! 大切なお土産がちゅう!」

「お土産だと? 持ち主の女の子がどれだけ泣いてるか分かってんのか!」

あちねが凄むと、残党のリーダー格のネズミが、ボロリと大きな涙をこぼした。

「ううっ……分かってるちゅう。でも、俺たちは前回の厨房決戦で宇宙母船に置いてけぼりにされたちゅう……。お腹が空いて、ジェリタン少佐に『成果を上げれば迎えに行く』と言われて、焦ってしまったんだちゅう……!」

その涙を見た瞬間、あちねは竹箒をピタリと止めた。首筋から香水が優しく香る。

「……チクショウ、あの白い軍服の少佐め、部下想いのくせに現場のケツ拭きを忘れてやがったな。おい、ポチ! 秘密ベースの支店長に連絡して、この泥棒ネズミどもを安全に宇宙へ送り返してやるように手配しな!」

「あちね殿、彼らは犯罪者ですが……論理より人情ですね。了解しました」

「ちゅう……! 怒られると思ったのに、なんて優しいお兄ちゃんだちゅう……!」

ネズミたちはあちねの優しさに号泣し、ポチの誘導で宇宙船へと笑顔で「おかえり」願うのだった。もちろん、最後は全員無事帰還である。

2. つぶらな瞳の笑顔

その日の夕暮れ。深海市の下町に、オレンジ色の優しい夕日が差し込んでいた。

あちねは女の子の元へ向かい、無事に首飾りをその小さな手に返してやった。

「ほらよ、お嬢ちゃん。サンタさんとの約束の品だ。もう迷子にすんじゃないぞ」

女の子はつぶらな瞳をキラキラと輝かせ、首飾りをぎゅっと胸に抱きしめた。

「おじさん、ありがとう……! 本当に、本当にありがとう!」

今度は嬉し涙をボロリとこぼして、あちねの着流しの袖を小さな手で握りしめた。あちねも真っ赤な鼻をこすりながら、「へっ、現場の便利屋をなめんじゃねえや」と、男泣きの涙をポロリとこぼしたのだった。

「あちね殿、これで一件落着ですが……」

ポチのドット絵が、液晶画面の中からジト目で現実を突きつける。

「感動の涙で家賃は払えません。大家さんからの督促状が3枚溜まっています」

「うう、分かってらい! 氷室の野郎に『忘れ物届け』でも出しに行くか……」

あちねは、残党の廃墟倉庫に残されていた大量の物品(ネズミたちが置いていったもの)をキャロルに積み込み、スマートシティ統括本部へと向かった。国際会議を終えてヘトヘトの顔をした氷室が、眼鏡の奥から冷たい視線を向けてくる。

「ふん、別件で忙しい私に、またゴミの山を押し付けに来たか、あちね」

「へっ、現場で拾った正当な『拾得物』だ。きっちり手続きしな!」

3. 小粋な恩返し

数日後。あちね事務所のポストに、スマートシティ統括本部からの公式な通知書が届いていた。ポチの液晶画面が、驚きでピコピコと激しく明滅する。

「あちね殿! 大ニュースです! 氷室殿に提出した拾得物ですが……宇宙由来の特殊物質や古代のレアメタルが含まれており、地球の法律上『該当者なし(所有権放棄)』として、その大半があちね事務所の所有物として認められました!」

「なんだって!?」

「換金した結果、溜まっていた家賃、倉庫の物品維持費をすべて一括で支払っても、お釣りが来ます。当分、練乳コーヒーをダース買いしてもビクともしない財政状況です!」

「うおォォォ! 泥棒ネズミめ、小粋な恩返しを残していきやがったな!」

あちねは洗車バケツをガタガタと叩いて大喜びし、脳が痺れるほど甘い特製練乳コーヒーを豪快に喉に流し込んだ。

大人しくなったはずの街の裏で起きた、小さな涙の事件。

便利屋あちねの現場の意地は、少女の夢を守り抜き、ついでに事務所の危機も救っちまった。

下町の夜風が、エゴイストの香りを乗せて、今夜もスマートに(?)吹き抜けていく。

(第六章・全3話 完)

【結びの一句】

ネズミ去り 金(かね)の鳴るなり 春の家

あっちゅ寝太郎

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

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