第四章 後編 全3話 完『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルのドブ板正義〜』
まえがき
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第四章:甘みの飽和点。竹箒アクション、最高潮!(後編)
■ 次元の砂嵐を突っ走れ!
「氷室! 舌を噛まねえように気をつけな! ロロロのロォォォ!」
あちねは氷室零の襟首を掴み、逆噴射するルンバが作り出した「銀色の砂嵐」の中を爆走した。右足の洗車バケツがガシャンガシャンと廊下に響き、竹箒が次元の壁を叩く。
「よせ、不潔だ! 私を降ろせあちね! 論理的に……あぁ、イタリア製のスーツが砂だらけに!」
エリートの悲鳴などどこ吹く風。あちねは首筋に「シャネルのエゴイスト」と「練乳の甘い脂汗」を滲ませ、暴走するルンバの真上へと跳躍した。
■ 特製「またたび練乳弾」
「ポチ! ニャッキングを逆利用しろ! 猫の急所にアクセスするんだ!」
「……了解、ニャ。ハッキング・プロトコル……『お腹撫で撫で』……開始ニャ!」
ポチが猫語で放った特殊信号により、クロタン軍団が一瞬の隙を見せる。その隙に、あちねは懐から取り出した「超高濃度練乳」と、女性支店長から受け取っていた「特製ミケタンまたたび粉」を、ルンバの吸引口へダイレクトにぶち込んだ。
「食らいやがれ! 銀河一甘い、現場の隠し味だ!」
ドゴォォォォン!
ルンバの内部で、糖分とまたたび成分が飽和点に達した。あまりの「多幸感」に耐えきれなくなったルンバは、真っ白な甘い煙を吹き出し、その動きをピタリと止めた。
■ 清潔な日常の帰還
煙が晴れると、そこには。
真っ白な練乳まみれになりながら、ルンバの上で眠りこけるクロタン軍団。そして、その横で同じく白目を剥いて「甘い……もう食べられないケロ……」と呟くクロタン課長の姿があった。
「……フン。実に、非論理的で非衛生な解決策だな」
氷室は、砂と練乳に汚れたスーツを忌々しげに払いながら、それでもどこか憑き物が落ちたような顔でクラウンへと戻っていった。
「やれやれ、あちね殿。私の計算機もようやく犬に戻りましたよ。……ですが、あなたのその『ロロロ』という不自然な江戸弁だけは、バグとして残っているようですね」
「うるせえやポチ。ほら、見てみな」
あちねが竹箒で最後の一掃きをすると、アパートの廊下は、朝日を浴びて鏡のように輝いていた。
不動産屋からの報酬(練乳一箱)を抱え、あちねは鼻を真っ赤にしながら、またもやバケツを履いたまま、深海市の路地へと消えていった。
(第四章・全3話 完)
結びの一句
竹箒 掃けば銀河の チリ一つ
『あちね殿、綺麗な結びですが、次の依頼までその箒、洗ってから仕舞ってくださいね』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。




