『AIバディ・ポチの事件簿 〜第四章 中編 エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルのドブ板正義〜』
まえがき
これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。
第四章:阿鼻叫喚のクリーンアップ。(中編)
■ エリートの悲鳴、路地に響く
「よせ! 来るな! この不論理な円盤め!」
深海市のエリート警視・氷室零の悲鳴が、潮騒荘の廊下に虚しく響き渡る。
クロタン課長が放った『う~ルンバ』は、あちねの香水に惹かれつつも、氷室の磨き上げられたイタリア製革靴を「磨きが足りない不純物」と誤認。猛スピードで彼の足元に突進していた。
「氷室! 逃げるんじゃねえ、論理的に説得しやがれ!」
あちねはバケツをガタガタ鳴らしながら、竹箒を振り回してルンバを追いかける。
だが、ルンバは掃いたそばから「次元のカス(銀色の砂)」を逆噴射。アパートの廊下は、まるで銀河のようなキラキラしたゴミで埋め尽くされていく。
■ ニャッキングの深度化
「あちね殿……私の計算ノードが……毛玉の……ゴロゴロ音で上書き……ニャン」
ポチのドット絵は、もはや犬の面影はなく、丸まったクロネコが画面を転がっている。
「ポチ! しっかりしろ! キャロルのハッキング能力はどうした!」
「……無理です……ニャ。肉球の……プニプニした感触が……データセンターを……直撃して……幸せ……ニャ」
クロタン族の「尊さ」によるハッキングは、AIであるポチの防壁すらも甘く溶かしていた。アマケロ軍団も、もはや監視カメラとしての機能を捨て、あちねがゴミと格闘する姿を「おじさん vs 宇宙掃除機」という面白動画として世界にライブ配信し始めている。
■ 支店長の焦りと、課長の自慢
「あちねさん! ルンバの『手動レバー』を叩かないと止まらないケロ!」
女性支店長が叫ぶ。
「手動だと!? どこにあるんだそんなもん!」
「ルンバの裏側、猫のマークのあたりだケロ!」
そこへ、悠然と現れるクロタン課長。
「いい動きだケロ。このルンバは、使う者の『掃除への情熱』をエネルギーに変えるケロ。あちね殿、もっと熱く箒を振るうケロ!」
「熱くって言われてもよぉ! このクロネコたちが箒にじゃれついて、一歩も進めねえんだよ!」
あちねの竹箒には、五匹のクロネコがぶら下がり、楽しそうに揺れている。
清潔への執着か、猫への愛か。
あちねの首筋からは、ミルクとエゴイスト、そして焦燥の汗が混ざり合った、なんとも複雑な「現場の香り」が立ち昇っていた。
「……ええい、ままよ! 氷室、その靴、俺が預かった!」
あちねは泣きべそをかきながら、氷室の首根っこを掴んで、ゴミの逆噴射が渦巻く「次元の穴」へと飛び込んだ!
(後編へ続く)
結びの一句
猫団子 箒も一緒に 揺れる午後
『あちね殿、俳句を詠んでいる場合ではありません。氷室殿を巻き込んだ自覚はおありですか』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。




