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海のように深く  作者: 心雨
第9章
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病気になる原因

コロナは驚異な速度で広がっていました。東京都だけで1日5000人の感染者が出て、全国では1日23000人もの感染者が出ていました。こんな中、静香は心配になって、非必要な活動が一切やめて、クリニックと家の2点1直線の生活になりました。その中、静香は読書で時間を潰していました。亮の病気もあり、彼女は精神疾患と関わる本をたくさん読みました。この中に1冊は「ビジネスマンの精神病棟」でした。

 本の中に12名の主人公の人生ストーリーが書かれていて、様々な人生模様が描かれていました。精神疾患の種類はいろいろですし、人生模様もいろいろでした。静香は一番ゾッとしているのは、皆最初はとても健康な人で、結構頑張っていました。精神疾患を患われた原因は様々で、生まれ持つ性格、生育環境、学校生活、結婚生活、仕事環境、いろいろな方面と関係していました。普段普通に生きていても、少しボタンの掛け間違いで、人生が狂ってしまいます。亮もそうです、生まれ持つ優しい性格、自罰的な思考、また静香と健の過剰な期待、現実世界の学業の不振、これ4つ一緒に影響して、最終的亮はうつ病になりました。亮は精神が弱いではなく、だれでも負のスパイラルに落ちて行くとうつ病になりえます。競争社会に成功した人はいるが、大半は地頭の良さ、ポジティブな発想、たまたま合った環境、と少しの運気と努力でようやく成功の果実を手に入れます。現在の制度は成功できる人は一握りだけもそういう原因です。その本を読むと、静香はさらに亮を不憫に思って、いつまでも亮を諦めないと誓いました。

その時、静香はようやく少し悟りました。自分が抱いている亮に対する期待は亮を病気にする元凶かもしれません。亮をもう一度元気にするには、自分はこの期待を捨てるしかありません。


9月の中旬、また勉強会がありました。今回の座長は中川先生でした。また中川先生に会えるので、静香は喜んで参加することにしました。

 会場は桜木町でした。仕事が終わり、静香はすぐ電車を乗って、桜木町駅に着くとき、まだ6時半でした。勉強会は7時半ですので、静香は駅周辺を散歩しました。長い間コロナの原因で外出せず、ようやく今日は時間と心の余裕があり、静香は長い運河の傍の歩道を沿ってゆっくり歩きました。桜木町は相変わらず夜景がきれいでした。昼の暑気がだんだん消えて、涼しい風が吹いていました。夜の涼風は静香の心の中の焦燥感を一掃しました。夜空の下に輝いていた大観覧車を見上げて、昔亮と一緒にここで観覧車を乗ったことを思い出しました。あの時、亮の笑顔はどれぐらい燦爛でしたか。ふ、静香は小さく嘆きました。いつ亮は元の亮に戻れるか、彼女は暗い夜空を見て、自問自答しました。

 勉強会は皆の拍手の中に終わりました。先生たちはまたお互い挨拶をしていました。静香も椅子から立ち上がり、中川先生に挨拶に行きました。クラスターの中、中川先生は静香のクリニックの感染患者をたくさん受け入れたので、このお礼も言わなければなりません。

「中川先生、こんばんは」

「お、陳先生、元気ですか?」中川先生は前と変わらず笑っていました。

「元気です。先生はどうですか?」

「私もいつもと同じく、元気ですよ」

「うちの患者さんを受け入れていただいて、ありがとうございました」

「気にしないでください、これは私たちの仕事です」

「先生は受け入れてくれなかったら、私はどうすればいいのか、本当にありがとうございました」

「こんな特別な時期、お互い助け合いは大事です」

「そうですね」

「陳先生のクリニック、その後どうなりましたか?」

「何とか感染を食い止めて、今は感染者がまだ出ていません」

「よかったです。今でも都内で感染者がいっぱい出ていますので、陳先生も気を付けてください」

「うん、先生も感染に気を付けてください」


後日、高橋先生から報告のメールが入りました。

「陳様

亮君とのゼミは順調に進んでいます。今、「ツォルンの補題」(Zorn’s lemma)と言う最も山場の定理に入り、二人して頭を抱えています。ここを過ぎてしばらくしたら、テキストを読み続けるかどうか相談して、もし亮君がもう満足したなら、修士課程に入るための準備プログラミングなどをしてもいいかなと思っています。どうするかは、亮君の意思を尊重するつもりです。

修士1年生の終り頃、つまり、今から1年半後に就職活動が始まります。そこを一つの目標として、徐々に気持ちを上げていければと考えています。コロナの状況はもう少し改善すると助かるのですが、こればかりは仕方ないので、そのことも織り込みながら対応できればと思っています」

これを見ると、静香はさっそく返事をしました。

「高橋先生

ツォルンの補題はどんな定理ですか、ツォルンは人の名前ですね、そんなに難しいなら、偉大な数学家ですね。

本当に数学が難しくて、全然分かりません、中国では医者がそんなに数学に精通しなくてもいいので、私の高等数学はあまり良くなかったです。

数学家は理性で考え、冷徹に物事を見るイメージですが、先生は違うですね。逆に医者は理性で考える反面、感性も必要です、患者さんの気持ちを汲み上げる必要があるからです。だから、私はやや感性が多いかもしれません。

最近亮は線性代数の本を読んだり、英語の教科書を読んだりしています、また昨日大学から奨学金の予約のメールが来て、彼はそれも調べています。亮は本気で修士の勉強をするみたいです。それも奨学金で、残念ですが、私の年収が高くて、彼は奨学金を申請する資格はないでしょう。

いろいろありますけど、これからも粛々生活して行くつもりです」



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