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海のように深く  作者: 心雨
第8章
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息子を早く正常に戻したい

8月中旬、焦っていた静香はまたメールを出しました。

「高橋先生

 しばらく先生に連絡しないと言ったけど、約束破ることですみませんでした。

 今日は亮の2回目のワクチン接種日です。今回は彼が躊躇なく家を出ました。2回目ですので、私は付き添わなく、自分で行かせました。予防接種が無事に終わり、私達3人はハワイ料理屋さんで昼ご飯を食べました。ただ、亮は一言も言いませんでした。

先生が言っていた慣らしは具体的何のことですか?亮を家から外に連れ出すことですか?私は次回無理やり亮を旅行に連れて行きたいです。先生も尽力してくれているし、これはとてもありがたいですが、だから何らかの結果を見たいです。また行動するのは早いですか?先生は遠慮せず本当のことを言ってください。

 私は世間体が気になって、早く亮を正常に戻したいです。私の両親や主人のお父さんにまだ亮が引きこもっていることを伝えていません。亮は大学に入ったよ、亮は院生になったよ、いい所ばかり伝えていました。時々外に出ると、親子が仲良く歩いているのを見て、胸が痛いです。昔の亮は可愛かったです、だからついに強引でもいいから外に連れて行きたいです。」

 翌日、高橋先生から返事が来ました。

 「陳様

 亮君は2回目接種が終わられたとのこと、よかったです。

 以下のご質問に、私なりにお答えいたします。ただ、心理の専門家でないので、ただ教員としての考えに過ぎないということをご理解ください。

 <先生が言った亮君を慣らしさせていくのは具体的何のことですか?外に連れ出すことですか?>

 亮君を慣らしさせていく、と言うことですが、大学に関することで言いますと、まずは、チャンスあれば研究室に来ていただく、と言うことが第一ステップ、そして、そのことに亮君が慣れれば、さらにチャンスがあれば研究室の他の学生と(ゼミでも世間話でも)何らかのコンミュニケーションを行う、と言うことが第二ステップと考えています、修士1年生終わりごろから就職活動をする、修士2年生の終わりごろには修論発表会で発表する、と言う2つの大きい山がありますので、そこを目標に、これから1年間ぐらいかけて環境に慣れていただこうと思います。(そのほとんどは、他人とどのように関われるかと言う部分です)そして、彼は自ら意見を言ったり、他愛のない話ができるようになるといいなと思っています。

 <私は次回無理やり亮を旅行に連れて行きたいです。先生も尽力してくれているし、これはとてもありがたいですが、だから何らかの結果を見たいです。まだ行動が早いですか?>

 ご旅行に連れて行かれることについては、ご家庭の様子が分からないので、何も言えないのですが、私の個人的感想では旅行に行くこと自体は何も問題はないでしょうし、外の世界に触れるいいチャンスだと思います。

 その上で、なのですが、ここから完全に私の意見に過ぎず、踏み込んでお伝えすることをご容赦願いたいのですが、たとえば旅行に行くことをご提案される場合、お母様はおそらく亮君のためにと思ってお誘いする感じになるかと思いますが、そうではなく、お母様がお母様自身のために旅行に行きたい、それも亮君と一緒に行きたいということが伝わるといいのかなと思いました。

 亮君は、自分がやっと辿り着いた状態を何とか維持できるように、それを守ることがとても大切なはずです。あ母様は「亮君が○○のために○○したほうがいい」と考えられて、その守っている領域に踏み込まれると、亮君は困って拒否し、さらに、そういうことをするなら今後もっと自分のドアを固く閉める、ということになるかなと思います。そうではなく、お母様ご自身がしたいことがあって、それに亮君がいてくれるともっとハッピーだから、もしよかったらと、お母様メインのお願いであると、亮君はそれに付き合うか付き合わないかは、彼が自由に判断でき、ノーと言った場合も、お母様は凹むかもしれないけれども、彼の守っているところはほとんど影響がありません。

 他のことでも、ランチを一緒に食べる、ちょっとした買い物に一緒に行く、などと言うことも、一緒に行くとお母様はとても楽しいから。もしその気があれば来ない?でも、来ないならもちろんそれで構いませんよ、と言う風に、(変な喩えですが)今度ヒマだったら、飲み会に行かない?みたいな感じで、相手に自由に決めさせることが大事と思います。

 そちらの事情が分からないまま勝手な考えを述べてしまいます事をご容赦ください。」

 静香はこのメールを読みました、でも彼女の心の中には早く亮を正常に戻すことに焦っていました。大学も卒業しましたし、家でずっと休んでいますし、自分はここまで頑張っていましたから、亮は多少な進歩を見るのもおかしくないでしょう。彼女は医者ですが、うつ病に対する知識はそんなに持たず、なぜ亮の回復はそんなに遅いのは理解できませんでした。また、彼女が自身言ったように、彼女はやはり世間体を気になっていて、息子はずっと家で引きこもりしているのも、彼女の内心は受け入れできませんでした。だから、彼女は高橋先生のアドバイスを聞かず、一人で旅行の計画をしていました。

 旅行の計画はその後のことで粉粉に打ち砕けました。2日後、静香は家に帰った後、すぐ健の顔色が良くないと気づきました。

「どんなことがありましたか?」静香は不安で聞きました。

 「今日、亮の高校の同級生が来ました。長い間亮と連絡が取れないので、心配して家まで来ました」

 「それで、亮は会いましたか?」

 「いいえ、私は亮に伝えましたが、亮は「いないと言って」で、会いませんでした。これは1年半の間亮が私に話した唯一の言葉です」

「・・・」静香は言葉を失いました、これは亮の傷口の上にまた塩を塗るということです、亮はどれぐらい心痛でしょう。同級生は就職して、会社で元気に働いているのに、亮は引きこもりしていました。亮はどうやって会うでしょう。

 この日の夜、静香は不眠になりました。夜中3時ごろ、亮の部屋に音がして、不安の静香は部屋に行って見ると、亮は真っ黒の暗闇にひっそり座っていました。静香は無言で亮の傍に行き、彼のそばに座り、二人は一緒に朝を迎えました。


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