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海のように深く  作者: 心雨
第5章
32/88

桜が咲いた時

翌日、高橋先生のメールは返しに来ました。

「陳様

3月25日のゼミの後亮君といくつか話をする機会がありました。ご報告が遅れて申し訳ございません、文章が少し長くなります。

まず、卒業式のことは私から亮君に尋ねています、お返事はあいまいで、おそらく出席されたくないような感じでしたので、それ以上は薦めませんでした。就職した同級生たちを交じって卒業証書を受け取るのは、彼には勇気のいることで、いろいろ考えられたのかなと思います。私の研究室の4年生の一人も就職する会社の関係で出席しなかったぐらいですので、気になさらないでください。

さらに、亮君から大学院修士の制度について質問がありました。この質問があったのは私に良い意味で驚きでした。大学院のカリキュラム表をお見せしながら、かなり丁寧に説明をしました。科目の履修が気にかかっておられるようでしたので、科目は18単位(=9科目)取ればいいので、それほど負担にはならないということを伝えました。

また、何か言いたそうだったので、しゃべってごらん、いやだったらいいけどね、と、私もすこししつこく尋ねると、友達の話を聞いて?工科系のコースに入りたかったというようなことをおっしゃいました。役に立つことが目に見えるような仕事?研究?をしたいということだろうなとわたしは解釈しています。そこで、私の研究室では、工学そのものの修士の研究ができないけれども、コンピューターのプログラムが亮君は得意だろうから、コンピューターを使って研究をテーマにすることはできますよとお伝えしています。

また、大学院に進むと、就職については大学のシステムに乗っかればいいので、楽になりますね、もしこのまま卒業してしまうと、そのあたりが大変心配ですと伝えました。亮君もその点は同意されています。そして、4月からの1年間は所属がないけれど、このゼミが続けて私と関係が切れなければ、君の相談役になり続けることができるし、学部と大学院の間で1年間ブランクがあっても就職にはほとんど影響がないですよと伝えました。

以上とは別に、次回からは4月になるので、この本読みのゼミはどうするか相談しました、そして、とりあえずはキリの良い箇所まで続けることに二人で決めました、次回は4月2日(金)です。

亮君は、卒業して新年度に入るので、私の負担のことを気にされましたが、まったく大丈夫、私自身が本の内容に興味があって、勉強になるので、続けるのは全く困らないと伝えました。実は、時々研究室でマンツーマンのゼミをしようかと考えています。亮君の外出をする理由になり、お母様の引きこもりの心配の解消に少しはなるかと思います。

最後に亮君に、そろそろ大学院の申し込み(4月20日)が近づいてきているので、次のゼミ(4月2日)の時に大学院をどうするかお返事を聞いてもいいですかと伝えてあります。

私が考えている段取りは、もし返事がYESでしたら、ご両親に了解を取ることと、推薦入試の手続きやることを亮君にお願いし、私からお母様に直接報告をすることの了解も貰おうと思っています。もしお返事はNOでしたら、そのことをお母様に私から報告しますので、また相談させてください。もう一つの可能性はYESともNOとも決断できない場合ですが、その時は少し強めにお薦めするつもりです。ただし、それでも結論が出なければ、無理をしないでもう1週間待とうかと思います。

お母様も、いろいろお聞きになりたいことなどを我慢しておられると思います、待つ立場は忍耐が必要なので、精神的つらいことも十分分かります。もうすぐ、亮君と私で今後のことに関して何かの結論を出すつもりですので、お待ちいただけますでしょうか。

いつかお母様と大学などで直接お話しできる機会があればと考えています。これについてはまだそのタイミングでないので、どうかお待ちください。」

高橋先生はそんなに細かくいろいろ予想して行動を決めているので、静香はもうそれ以上心配は無用と思い、静かに傍で見守って行きました。

天気はだんだん暖かくになり、桜のつぼみは一層に膨らみました。そろそろ春が来ようとしています。去年の今は静香が地獄に落ちていました、ふっとして1年間が過ぎました。春の風の中に、静香の希望も桜の蕾見たいに膨らみました。

桜が咲き始めた所、高橋先生の連絡のメールが入りました。

「陳様

先ほど亮君とゼミを行いましたが、そのあとで大学院進学のことをお尋ねしたところ、大学院に進みたいと明確な返事をいただきました。

お母様、お父様に了解は得ていますかと聞きましたら、得ているとのことでした。(彼はどれだけお母様にはっきりと話されたかは分かりませんが)。

また、二人で推薦入試の出願書類の手続きについて、実際の書類をWEBで見ながら確認しました、その時に不明であった点は、私から事務に確認を取り、既に亮君に連絡していますので、手続きは特に問題はないかと思います、(25000円の検定料などが必要ですので、そのあたりはよろしくお願いいたします)

もう一点、学部卒業で受け取り学位記(卒業証書)のことですが、理工科の教育支援課に本人(代理人も可?)が受け取るまでずっと保管してあるそうです、学生証と引き換えに貰えるようです。

以上、簡単ですがご報告です。」

このメールを見て、静香の目の前の世界は一気に明るくなりました。クリニックの窓から外の景色が見えて、桜はキラキラ太陽の下で全開していて、ピンクの花は一生懸命咲いていました。それは亮です、いくら苦しくても、いくら絶望でも、亮は必死に耐えて、乗り越えてきました。今はまだ外出はしていないですけど、でもいつか踏み出すでしょう。この小さい一歩は、亮の人生の一大歩に繋がります。静香は知らずに涙が流れました。


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