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海のように深く  作者: 心雨
第5章
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今後どうしようか

1月下旬ごろ、高橋先生から1通のメールが届きました。

「陳様

本日のゼミで亮君の卒業論文が完成しました。立派なレポートになり、私の研究室内部のサーバーにも、過去の卒修論として掲載します。また、これによって、予定していた単位は修得と認定しますので、卒業についてほぼ大丈夫かと思います。

それを確認した後に、我々は今後どうしようか、という相談を亮君としました、週に一度会っていろいろな話をするのは全く差し支えないのですが、テーマがあった方がやりやすいので、どうしましょうと持ち掛けたところ、亮君からある数学の本を読みたいと提案がありました。

その本は、純粋数学系の数学科では必ず一度は通る抽象度の高い名著で、逆に工学系の学科では決して教えない内容です。過去に亮君はこれが教科書であった授業の内容がよく分からなかったということが気がかりだったようです。実は、亮君と出会った最初の頃、卒論テーマを決まる時に、彼がこの分野をテーマに提案したことがあったが、私は純粋数学から亮君を少し離したく、現在のテーマを私が提案したという経緯がありました。

来週からは、上記の本を二人で読み合わせゼミを始めます。私は出身が純粋数学系ではないので、存在は知っていましたが初めて読む本で楽しみにしています。少なくとも2,3月まではこのゼミが続けばと思います。

と、二人で打ち合わせて、ZOOMを終了しようとすると、亮君が緊張しているのに気が付きました。そこで、もう少し話を続けたのですが、どうも上の本をテーマにすることに気合いがかなり入っておられ、また、分からなかったらどうしようと不安に思っているご様子でした。もしかしたら、亮君の状態が悪くなった要因の一つに、このような純粋数学の授業が分からなかったことについてのこだわりがあるだろうなと推測します。

でも二人で楽しい読み合わせにしますので、ご安心ください。また、この読み合わせを通じて、少しでも心がほぐれるといいなと思います。

心の奥に触れることかもしれないので、このことはご本人には内密に願います。勉学について、これからも亮君を暖かく見守ってくださいますようお願い申し上げます。」

静香はこのメールを見るととても喜びました。一つは亮の卒業ができること、もう一つはまだ高橋先生は亮とゼミをし続けること。それなら、自分はまだすぐには高橋先生と縁を切る必要がありません。とりあえず、3月いっぱいまではまだ高橋先生と連絡ができます。1年前は亮の卒業は夢のまた夢でしたのに、ようやく今日まで来て、晴れて大学を卒業していく、亮も自分も先生も本当によく頑張りました。ただ、卒業はしましたけど、亮の病気は治癒したではありません。亮はまだ引きこもっているし、昔の元気の様子が全く見えませんので、これからも長い道のりです。幸い、高橋先生は引き続きゼミをしようとしているので、高橋先生の力を借りて、亮の心の傷を癒されるよう静香は心から祈っていました。


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