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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第8章 何処へ行っても目立つ様だよ⁈
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112話 大罪司教ベルフェル

 陽が地平線へと沈み、空が闇へと変わり始めると同じくして、各所の外防壁の見張り台から警鐘が鳴り響く。


「敵は、各方位の入り口付近の()()に多数出現!主に、スケルトン、スカルハウンド、ゴーストといったアンデッドが主体のようです!」


「やはり街中に潜んでたわね。予定通り、第6~9部隊は守衛達と連携を取り門を死守しなさい。第3~5部隊は貯水池、商業ギルド、住民避難区域を。第1・2部隊はフレイ美徳教団の周辺に潜伏、動きがあるまで待機よ」


 グスタフの指示を、伝令班が各部隊へと知らせに走る。当のグスタフは、オモカツタの中心にある噴水公園に陣を敷く。自らも動く事を好むグスタフには、この場所が一番状況に応じ易い。


「冒険者ギルドの面々はど~なの?」


「ギルドの討伐隊も、居住区に8部隊が展開しています」


「そう。準備は万端ね。ウフフ、後から坊やの活躍を観に行ってみようかしら?」



「ゔっ⁈」


 突然、背中にゾワゾワっと悪寒が走り、アラヤは身震いをした。体温調節の技能がある筈なんだけどなぁ。


『アラヤ君、皆んなの配置が終わりました』


『分かった。こっちも担当区域の戦闘可能エリアを把握したよ。アヤコさん中継の感覚共有で皆んなに広めて?』


 脳内マップに、魔導感知と熱感知を兼用すると、マップ上にも人型のマーカーが表示される。しかも、一度鑑定した者には名前も表示されている。めちゃくちゃ便利じゃないか。ただ、技能(スキル)の多重使用で微弱な頭痛があるが、この程度なら問題無い。


 アヤコとサナエは、担当区域の中心にある住宅の屋根にいる。アヤコが司令塔となり、大通りの東口に待機しているアラヤと、西口に待機しているカオリとクララに、念話で戦況を伝える手筈なのだ。


『にいや、コッチに複数の低温反応が近付いて来ているけど、建物を突き抜けてない?』


『それは建物内じゃなくて上空だよ!』


『あ、そういう事か』


 カオリはまだ、アラヤの技能に慣れていないらしい。でも勘の良い彼女なら、直ぐにでも使いこなせるだろう。


「クララ、屋根まで跳べる?」


「カオリ様の体重を、グラビティで軽くすれば大丈夫かと」


「そうね。じゃあ、お願いしようかしら」


 カオリは、早速グラビティを使いクララの背に跨がる。

 クララは、勢いをつけて壁に向かって跳び、壁から壁へと蹴り上がる。


「居た。アレね」


 屋根上まで来たカオリ達は、闇夜に紛れて飛来する羅刹鳥の熱反応に向かって、魔法を唱える。


「これで凍てつきなさい、氷河期(アイスエイジ)


 避ける事ができない広範囲の氷結効果は、気付かずに飛び込んで来た羅刹鳥達を、一瞬で凍らせて地面に落下させた。


『魔物の氷塊は、後で討伐数として報酬の計算に使われますので、溶かさずに道脇に退かして下さい。後から体の一部分(パーツ)を回収します』


 ゴトゴトッと、道脇に念動力で退かすけど、かさばるから邪魔になりそうだ。焼却や溶解なら簡単なのにと考えていたら、アラヤから念話が届いた。


『カオリさんと俺は、亜空間収納に入れとけば大丈夫だよ』


『ワォ!やっぱり便利な技能だね!』


 うん、カオリの特殊技能(ユニークスキル)の技能コピーがね。今、この街で1番の技能持ちはカオリに違いないだろう。

 だって、アラヤ以外の3人の技能も今は持ってるからね。ステータスが低いのと、突然に来る(今はある程度予期できる)仮死状態(デスタイム)という弱点はあるけれど。


『どうやら、一斉にお出ましみたいですね。私達は冒険者登録していないので、多少の減額扱いになるでしょうが、それなら皆さん、私達は数で荒稼ぎしましょう』


『じゃあ、範囲を広げちゃう?』


『そ、それはダメだよ⁉︎』


『だって、見つけても早く終わっちゃうんだもの』


 両ペアとも、出会って数秒、カチンと一瞬で氷塊にしてしまうので、物足りないと感じているようだ。いつの間にか、我が家族はチートファミリーになっているようだ。


『アラヤ君、苦戦している部隊への応援ぐらいなら、許可しても大丈夫だと思います』


『だけど目立っちゃうかもよ?』


『その際には、氷河期の魔鉱石で対応しましょう。良い道具を持っているから強いという体裁でいいと思います』


 それでも目立つ気がするけど…。まぁ、状況が悪くなるよりは良いか。


『分かった。余程の窮地に陥った部隊への応援は許可するよ。だけど、絶対に無理はしないでね?』


『了解です』


 それからもスケルトンやスカルハウンドがやってきたが、苦戦になどならない。

 辺りから激しい戦闘音が聞こえるだけに、カオリペアがそわそわしだす。

 今回組まれた討伐隊のクエストは、夜明けまで担当区域を守るのが最低限の契約だ。

 住民も全ての人が避難区域に避難しているわけでは無い。当然、それらの人々を守ることも含まれる。

 アラヤ達の区域内には8人の住民が残っている。歳と病により動く事ができない者と看護している身内や、盗難を疑い避難を拒否した者等だ。


『どうやら、2ブロック先の討伐隊が苦戦しているわね』


 暗視眼と望遠眼、超聴覚も使えば、大体の戦況が分かってしまう。カオリが、期待の眼差しでこちらを見ている事も、アラヤには見えていた。


『分かった。行って良いよ。だけど、くれぐれもやり過ぎないようにね?』


『了~解!行こう、クララ!』


 待ってましたと言わんばかりに、カオリはクララの背に乗ったまま走って行った。沢山の技能を持ったことで、気が昂っているのかもね。精神耐性も効いているだろうから、無茶な事はしないだろうけど。


『アラヤ君、毛色の違う魔物がやって来ました』


 アヤコが発見したのは、裏通りからのそのそと歩く人影だ。ただ、アヤコには目視で人では無いと直ぐに分かった。頭の半分が無い男や、肩から腹部まで裂けている女性等、見るからに生きている筈が無い。


「ゾンビの様だね」


 隣を見ると、アラヤも屋根に登って確認していた。ゾンビを鑑定して、脳内マップの表示に反映させる。

 脳内マップの範囲を街全体まで拡大すると、マーカーが小さな粒の様になる。


「街中にアンデッドが出現しているようだけど、ゾンビは北西にある墓地から来ているようだね。しかも、全てのゾンビが同じ場所に向かって進んでいる」


「フレイ美徳教団でしょうか?」


「みたいだね。担当区域内を通るなら、一応討伐しなきゃね」


 ゾンビ達が向かう先に降り立ち、氷河期を唱えようとするが、見た目が人間過ぎて躊躇ってしまう。見た目が明らかに人間と違う魔物なら、簡単にトドメをさせるのに。


「氷結ではなく、火葬してあげるべきか…」


 氷塊にして、遺体をこれ以上晒されるのは可哀想だと思い、魔法を変える事にした。手をかざし、魔法を唱えようとした時、アヤコの念話が聞こえた。


『アラヤ君、後ろ!』


 アラヤは瞬時に横へ飛び退いた。魔導感知には何の反応も無かったが、アヤコの位置からは何か見えたのだと、アラヤは判断しての対応だった。


「おや、驚かせたかね?」


 そこには、頬に傷のある黒の司祭服を着た年配の男が立って居た。気配を消すことは分かるけど、魔導感知と熱感知を擦り抜けたのはどういう事だ⁈


「…貴方は?」


「お初にお目にかかる。私はこの街のフレイア大罪教司教のベルフェルと申す者。貴方は、ポッカ村の生存者をこの街に連れて来たという商人の方かな?」


「ええ、そうですね」


 司教⁈滅茶苦茶、危険人物じゃないか⁈カオリの生存や、アラヤが魔王だという事もバレたらマズイ。


「おっと、挨拶は後にして、先ずは哀れな魂を開放してあげましょうか」


 そう言って、ベルフェルはゾンビ達の前に進んだ。そして懐から一冊の聖書らしき本を取り出して開く。


「現世に、未練、後悔を残し歩みを止めた、紅月神フレイアの愛しき子等よ、地上に迷い、縛られたその哀しき御霊は、再び主の導きによって解き放たれん!女神の抱擁(デア・アブラッチオ)!」


 詠唱が終わると同時に、ゾンビ達の足元には光の輪が現れる。その光の輪が、ゆっくりと浮上しだす。すると、ゾンビ達の足が、輪の高さより下は消えている。

 肉体や骨までも消える?これは、細胞レベルまでの分解?溶解?それとも、天界に転移しているとか?

 とにかく、アンデッドを強制的に消滅することができる魔法らしい。

 流石は司教といったところか。


「さて、自己紹介を…。おや、逃げられちゃいましたか。まぁ、今は良いでしょう」


 アラヤは、彼が魔法を行使している最中に、隠密を用いてその場から離れたのだ。

 こんな危なさそうな司教なんかと、絶対に関わりたく無いからね。

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